前編では、コンサルティングファームに務めていた松井さんがどのような経緯で参画されたのかを伺いました。二枚目の名刺の取り組みを取り上げた後編です。

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目次

行政の描く日本と「二枚目の名刺」の親和性。

Q:主催イベント「夏フェス2015」では経産省の方も後援されたとのことですが、このあたりの繋がりはどのようにして生まれたのでしょうか。

松井 孝憲(以下、松井):
2011年頃、ちょうど「ソーシャルビジネス/コミュニティビジネス」が経産省の中でテーマに上がっていたんです。そういった文脈の中で「二枚目の名刺」が関わっているようなソーシャルビジネスを一緒に実現していきましょうという話が団体内部でも上がっていました。その後、行政では「画期的なビジネス・イノベーションを生み出すことが可能な人材」としての「フロンティア人材」の創出がテーマにあがっていました。そういった文脈の中で、組織の枠を越えて、2枚目の名刺を持って新しい実践経験を積むことは「フロンティア人材」の育成促進に繋がるのではないか、という可能性が出始めていました。

Q:御社がやろうとしていることは、ある意味、これからの世の中の流れとリンクしているということなのかもしれませんね。

松井:
そうですね。最近で言うと、昨年の夏には、「夕方を楽しく活かす働き方」として、「ゆう活」というスタイルが行政から掲げられています。そういったところでもまた親和性が出てきていると考えています。また、マクロな視点から考えると、人口が減少トレンドにある中、どうやってGDPを上げていくかという点が課題になることが予想されます。人口を増やすか、一人当たりの生産量を上げるか。そういった時、本業の1枚目の名刺だけではなく、2枚目の名刺で価値を発揮するというのは1つの提起になり得るのではないかと考えています。そのような切り口も、価値があるのではないでしょうか。

40代〜50代がプロジェクトの蝶番。
ミドル層の巻き込みへ。

Q:「二枚目の名刺」では今、「世代」というキーワードも掲げていらっしゃるとお聞きしました。

安東 直美(以下、安東):
はい。これまでサポートプロジェクトの参加者は、25〜35歳くらいの方々が中心でした。ところが最近になって、40代〜50代の方々のご参加が増えてきました。年齢層を広げようと意識して発信していたわけではないのですが、少しずつ活動自体が知られてきたのか、問い合わせをいただいてサポートプロジェクトにご参画いただくケースが徐々に増えてきました。

そういった年代の方々に実際にお話を伺ってみると、ビジネスパーソンとしてずっと1枚目の名刺をされていて、じゃあこの後の人生をどうしようかと考えた時、他のこともやってみたい、あるいは培ってきたものを世の中に還元していきたい、というお気持ちをお持ちの方が一定数いらっしゃることがわかりました。私たちが「二枚目の名刺」の活動を通して、そういった機会を提供したいと思っている背景と、お互いに共感性が高いのです。

サポートプロジェクト自体も、チームの中に40代〜50代の方が加わることで変化がありました。社会的な信頼性や豊富なご経験がある方々なので、一緒に参加される若い方々が刺激を受けたり学びを得ているようです。実際に、サポートプロジェクト自体の推進スピードも上がります。世代が上にも広がったことで良い流れが生まれました。

Q:40代〜50代の方々の参画が新しい循環に繋がったのですね。

松井:
そうなんです。先ほど少し安東も触れましたが、40代〜50代の方の中には、1枚目の名刺として勤務されている企業の中で、中枢の役職についていらっしゃる方も多いです。そういった層が、自社内で働きかけを行ってくださることで企業と「二枚目の名刺」の連携も広がっていくのではないか、ということも考えています。ミドル層は、若手層とプロジェクト先NPO団体の動力源になってくださるだけでなく、「二枚目の名刺」と企業の連携のきっかけになっていただくこともあり、結果として双方をうまく噛み合わせてくださる存在になり得ると考えています。

安東:
そして、今後の話にも繋がるのですが、今、「二枚目の名刺」としてオウンドメディアを立ち上げようとしています。実はそこで大手広告会社の局長クラスの方にご相談に乗っていただけることになりました。そういった方に加わっていただくことで、アイディアや知見をお借りするのはもちろん、活動に対する世の中の信頼感というのでしょうか、若者が何かをやっているなあというところから一歩先に行けるということを体感値として感じています。

セクターを超えて二枚目の名刺の価値を科学する「二枚目の名刺ラボ」。

Q:今年1月には「二枚目の名刺ラボ」というプロジェクトも始まったとお聞きしました。新しいプロジェクトが続々と走りますね。

松井:
そうですね。顔ぶれとして特徴的なのは、各業界で人事やCSR、もしくは人材に関わる事業に従事する企業の方々(インテリジェンス、パソナ、電通、日本財団、日本ヒューレッドパッカード、リクルートキャリア、One Panasonic(パナソニック)、SCSK)そして、法政大学や行政機関の方々といった多様なセクターの面々が参画されていることです。皆さんと一緒にこれまでのサポートプロジェクトや各社が実践している事例を共有しつつ、そこからまた新しい実践事例をつくっていこうという試みです。企業、行政、ソーシャルセクター、大学研究者と協働することで「2枚目の名刺を持つ」スタイルを一気に展開しようという目的があります。

Q:具体的に「二枚目の名刺ラボ」ではどのような活動を行うのでしょうか。

松井:
例えば、企業の人材育成の一環としてサポートプロジェクトをやりたいという問い合わせがあった際、具体的な過去の実践事例を知りたいと仰るケースがあります。そういった時、単なる事例の紹介だけでなく、「二枚目の名刺ラボ」での研究成果をもって踏み込んだ効果までお伝えできるというのが1つのイメージでしょうか。

例えば、これは法政大学 石山教授と連携して進めているテーマなのですが、サポートプロジェクトを体験したご本人が主観的に「良かった」という感覚値を得られたとして、じゃあそれが研修効果として客観的に「どんな良い変化をもたらした」と言えるのか、という点を科学的・実証的に明らかにしようという共同研究も行っています。過去にサポートプロジェクトに参加いただいた社員の方にヒアリングし、実際に「二枚目の名刺」の活動を経て、ご自身の中でどのような変化があって、それが今、1枚目の名刺の現職にどう活きているのかを明らかにしてきました。また、これを時間経過を踏まえながら追跡調査することで、より具体的に変化の要素を明らかにしようとしています。こちらは今、ちょうど中間成果物ができたところです。

Q:なるほど。「二枚目の名刺ラボ」で過去事例の要素分解を行うことで、それを元に新しい事例をつくり、それがまた新しいモデルをつくることに繋がる、と。

松井:
はい。そして、参画いただいた行政や企業や団体の皆様にも、こういった研究成果を共有し、それぞれの組織内での新しい取り組みや事業を始めるきっかけにしてもらう場になればいいなとも考えています。参画企業の顔ぶれに人材系の企業3社が入られている点なんかはおもしろいですね。それぞれが、このラボでの知見を、自社の事業や人材育成などに活かすことができないかという観点をお持ちです。そういった各社が1つの場所に集まって、新しいことに向けて議論をしていくということは他には無い場ではないかなと。僕らはそこにおもしろさを感じているし、仕掛けがいがありますね。

Q:そういった事例や取り組みをオウンドメディアで発信していくことで、エリアや世代を超えて、日本全体に少しずつ「二枚目の名刺」の空気を広めていくと言うことでしょうか。

安東:
その通りです。

松井:
そういう社会全体を変える可能性がある取り組みが、名刺というツール1枚でできる。これがやっぱりおもしろいかなと思っていて。名刺というのは日本的だと思うんですよね。日本人は自分のアイデンティティーに近いツールとして名刺を捉えていると思っていて、その名刺をもう1枚持つという行為は、自分のアイデンティティーをもう1つ持つに近い感覚が生まれるのではないかと思います。1枚目の名刺の仕事だけではない自身の存在。「NPO法人 二枚目の名刺」は、そういった世の中の意識変化を支援する存在としてありたいです。だからこそ、社会貢献という観点ではなく、新しい社会を創るというスタンスでやっていきたいと思っています。

取材・記事作成:伊藤 梓

写真・加藤 静

専門家:松井 孝憲
「二枚目の名刺」常務理事
一橋大学法学部卒、早稲田大学政治学研究科修了後、総合系コンサルティングファーム 株式会社シグマクシスに新卒一期生として入社。
人事領域、ソーシャルビジネスに関する新規事業案件等を担当。2013年、退社。
現職時から携わっていた「二枚目の名刺」に専任担当として参画。

専門家:安東 直美
「二枚目の名刺」ダイレクター
大学卒業後、米系・大手金融情報会社に入社。営業、営業人材育成、マーケティングを経て退社。
2016年より「二枚目の名刺」の専任担当として参画。

ノマドジャーナル編集部
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