先日、flexy関連イベントとして開催された、第2回「Ex-CTO meetup」。

資金調達において、CTOは何を考え、何をすべきか?をテーマにCTO経験者同士のディスカッションが行われた。

今回は、当日深掘りし切れなかった内容について、ご登壇頂いた株式会社プレイドの柴山氏に、個別に話を伺った。

まず「数字」、次いで「価値観売り」

黒田悠介氏(以下、黒田):VCを選ぶ前の段階で、VCへのプレゼンテーションがありますよね。どういったところを工夫されたのでしょうか?

柴山直樹氏(以下、柴山):1回目と2回目の調達でそれぞれポイントがありました。1回目はデモ程度のものしかなかったので、数社にテスト導入して得た数字を元にプレゼンテーションしましたね。特に僕たちの場合は、導入によってどのくらいサイトのバリューアップにつながったのかを数字にして出しました。Google Analyticsのアカウントももらって数字と格闘していました。一番分かりやすく数値が出たのが、会員登録系のある施策でした。できたばかりのECだと登録者数が大事ですから、そこを重点的に対策して1ヶ月位試行錯誤してコンバージョンが倍になったんです。しかしある時、そのECがシステム改変をして僕達のサービスのタグが抜け落ちた状態になってしまったんです。するとコンバージョンが半分になったという分かりやすい結果が出ました。

黒田:予期せぬ実験になったわけですね。VCへのプレゼンテーションではまずは数字という根拠を作るのが重要だと。

柴山:VCさんとは担当者に会って話をするわけですが、彼が持ち帰ってから話を上げるためには数字が必要なんですよね。打ち合わせの場がどれだけ盛り上がったり、共感してもらえたりしてもあまり意味が無い。お客さんの声のような定性的なものは弱い。ある程度VCとの話が進んだ段階でそういった情報を提供するのはありかもしれませんが。

黒田:出せる数字次第でバリュエーションも変わってきそうですね。バリュエーションを上げるためのコツってありますか?

柴山:いろいろやり方があると思いますが、バリュエーションを上げるためには未来の話をして理解してもらう必要がある、というのが僕らのやり方でした。ここも「価値観売り」と共通するのですが、世界観や未来像を伝えていくイメージです。数字で伝えられるのは時間軸としては直近のことに限定されてしまうので、その後にどういったステップがあって、最終的に何を目指しているのかを伝えていくのが良いですね。あと自分たちとはあまり関係ないですが、AIやフィンテックのようなバズワードと事業会社さんであればバリュエーションのセオリーみたいなのが違うようなので、上手く使っていくといいかも。とはいえ、あまり”AI”のようなものに頼ってバリュエーションをつけると自分達もVCさんも本質を見失うと思うので、僕らとしては極力そういう話はしないようにはしています。あとで自分達が困りますしね。

黒田:デモのときには誰が話をされたのでしょう。

柴山:私と代表の倉橋ですね。1回目の面会は倉橋がして、2回目に私と倉橋がデモをするという感じでした。倉橋の方ではわざと僕を2回目に出すことが多かったようです。1回目ではビジネス面での温度感を高めて、2回目で僕の経歴を伝えたり数字を出したりしてテクノロジー面での温度感を高めるという役割分担をしていました。

黒田:かなり戦略的に面会していたんですね。2015年の2回目の調達についてはどういったプレゼンテーションをしていたのでしょうか。

柴山:一回目の1.5億で数値を作ろう、というところでやっていたので、まずは分かりやすく「アイコン企業」と「クライアント数」ですね。また一回目と同じく長期の話をする「価値観売り」をここでも意識していました。

黒田:ちなみに次の調達の可能性はいかがでしょう。

柴山:次の調達はマストなのかどうか、まだ議論はまとまっていませんね。すでに収益化できているので、過去2回のリードタイムを生き抜くための資金調達とはフェーズが異なります。攻撃的に行くための資金調達としてはアリだと思っています。CFOの採用を若干やっていたりはして、面接でもそういう話をすることはあります。ただ、外部の方は難しいかもしれません。未来のことを伝えきれないうちに「どんなファイナンスしますか?」と聞いても有り体の答えしか返ってこない。

黒田:「そりゃそうだよね」みたいな感じになっちゃうわけですね。事業内容や社内状況とか、色々な要素がありますもんね。

柴山:そういうわけで、追加で資金調達するかどうかはまだ考え中ですね。今のうちに調達しておけ、みたいなアドバイスもありますが。

黒田:今はちょっとしたバブルとも言えますね。そういう事情に流されず、可能なら自己資金でやっていくのが一番だと思います。

資金面だけでなく、技術面も支援できる投資家が必要

黒田:少し話題が変わりますが、VCに技術がわかる人間が少ないのではないか、という話題があります。

柴山:確かにいたほうが良い場合もありますね。技術的な戦略も分かってくれそう。僕達は大手企業が参入することを前提に考えて1年間は解析技術でリードタイムを取るということを目標にVCにも伝えていたのですが、それが実際技術的にどれくらい難しいのか、先行者利益がどのくらいあるのか、そういったポイントを理解してもらいやすいと思います。

黒田:デモだけでは分かってもらえない部分ですね。理解してくれるが故に「人工知能って言ってるけど違うよね?」みたいな厳しい指摘をしてくるかもしれませんが。

柴山:それはありますね。実際、僕もVCさんからの依頼でヒアリングの同行をすることがあります。特に自分が大学の頃専攻してたことから人工知能・機械学習系のベンチャー企業に行って技術面とビジネス面からVCにアドバイスを求められたりすることはあります。特にテクノロジー寄りのサービスだと技術的な評価が難しいですからね。

黒田:それは面白いですね。やはりVCにおけるCTO的人材のニーズはありそうです。採用面でのサポートにもなるかもしれませんし。

柴山:それはいいですね。採用の広告塔になってもらえたら尚良いですね。ただその場合はエンジェルとして関わってもらう方がいいかもしれませんが。

黒田:なるほど。インタビューは以上です。VCへのプレゼンテーションやVCの選び方、お金の使い所などお聞かせいただきありがとうございました!

CTO/Ex-CTO向けサービス「flexy

記事作成:黒田悠介・村上 亮太

撮影/高瀬 亜希

専門家:柴山 直樹(しばやま なおき)氏 
株式会社プレイド 取締役CTO
東京大学工学部にて神経科学、チューリッヒ工科大学にてロボティクス、 東大大学院にて分散環境における機械学習の研究に従事。2009年未踏本体採択。2013年同大学院博士をドロップアウトし、同社CTOとして参画。
専門家:黒田 悠介
サーキュレーションの登録NOMAD。 日本のキャリアの多様性を高めるために自分自身を実験台にしている文系フリーランス。ハットとメガネがトレードマーク。
ハットとメガネがトレードマーク。ベンチャー社員×2→起業→キャリアカウンセラー→フリーランスというキャリア。
主な生業はインサイトハッカー(プロインタビュアー)とディスカッションパートナー(壁打ち相手)で、新規事業の立ち上げを支援しています。
個人では「文系フリーランスって食べていけるの?」というメディアを運営。
ノマドジャーナル編集部
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