俳優・映画監督・アーティストとして、そして経営者としても活躍する伊勢谷友介さん。

「人類が地球に生き残るためにはどうするべきか?」をビジョンに掲げ、2009年に創業した株式会社リバースプロジェクトは、社会課題の解決に向けてさまざまなプロダクト開発を進めています。

『nomad journal』を運営するサーキュレーションでは、このたび、外部プロフェッショナルの力を結集してリバースプロジェクトのビジネスを応援する新プロジェクト「Social Nomad Project」を立ち上げました。

ソーシャルノマドプロジェクトの概要図

この記事では伊勢谷さんとサーキュレーション代表・久保田雅俊の対談の模様を通じて、プロジェクトにかける思いをお伝えしていければと考えています。

前編の「【Social Nomad Project】伊勢谷友介さん×久保田雅俊(前編)『社会課題の解決』と『ビジネス』は両立できない?」では伊勢谷友介さんから「起業に際する想いや現在の課題」をお伺いしました。後編では、「Social Nomad Project」が目指すビジネスのあり方について語り合いました。

お金を取り続けるのではなく、課題を解決して終わらせるビジネスを

久保田:
僕自身、サーキュレーションで社会課題の解決を目指していますし、リバースプロジェクトの取り組みには強く共感しています。規格外野菜を活用する事業なんて、とても面白いですよね。

伊勢谷:
ありがとうございます。
どんな畑でも、1〜5パーセントは規格外の野菜ができてしまうらしいんです。それを腐らせずにカット野菜に加工し、首都圏の企業食堂など大きな消費のあるところに提供して、その売り上げを子どもたちのためのフードバンクに寄付していくといった取り組みを続けています。

久保田:
まさに社会課題の解決に直結していますね。

伊勢谷:
規格外野菜って、これまでは当たり前のように捨てられていたんです。それを社会の中で、子どもたちの糧に変えていく。どれくらいの量の野菜が捨てられていたのか、それがどれだけの子どもたちの栄養に変わったのかという数値も示すことができるので、インパクトも出しやすいと思っています。こうした仕事には今後も注力していきたいですね。
これの面白いところはもう一つあると思っていて。「頭打ちのビジネス」なんですよ。

久保田:
頭打ち?

伊勢谷:
捨てられる野菜が自然に流通して、捨てないことが常識になっていけば、事業としては頭打ちになるじゃないですか。僕たちがやることはなくなって、最終的には国の公的な仕組みのようなものでフォローされていれば大丈夫だと。そんなビジネスも面白いと思っているんです。

久保田:
自らで始めたビジネスを、自らで頭打ちの方向に持っていくということですか。

伊勢谷:
そうです。こんなの、あまりないですよね。お金を取り続けるのではなく、課題を解決して終わらせるという目的のビジネスです。その後は少ない人数と小さい経費で回しながら、社会課題を解決し続けるという

久保田:
いや、素晴らしい考えだと思います。
僕は伊勢谷さんとお会いしてお話する中で、公益に直接的に結びつくようなコストを会社として考えてもいいかなと改めて思いました。だから今回のプロジェクト、我々は利益度外視です(笑)。

伊勢谷:
おお(笑)。ありがとうございます!

久保田:
リバースプロジェクトが目指していることに協力することで、僕たちも公益に貢献できると思いました。「利益の1パーセントを寄付します」といった形は企業でもよくあると思いますが、これでは「プロフェッショナル人材の経験と知見を循環させる」という僕たちのビジネスモデルが生きないんですよね。
プロフェッショナル人材にも、公益に資することが好きという人が多いんです。ビジネスで成功し、十分な収入を得ているから、視点が違うのだと思います。

伊勢谷:
カッコいいな。まさに「カントリージェントルマン」ですね。

久保田:
そうやってたくさんの人の経験と知見をつなげ、利益を出すプロジェクトでありながら、公益にも貢献する。そんなシナジーを生んでいきたいです。
伊勢谷さんはブレない人だから、やりやすそうだなと思っていますよ。

伊勢谷:
うん。ブレないですね。そこは約束します。

Social Nomad Projectの伊勢谷友介さんとのキックオフ対談における久保田雅俊

「社会を良くしたい」という高次の欲求を持つ人が増えている

久保田:
僕、『キングダム』という漫画が大好きなんですよ。中国の春秋戦国時代を描いているんですが、始皇帝がとあるシーンで「人の持つ本質は光だ」と言うシーンがあって。
これは社会課題の解決に貢献するビジネスができる人の条件にも当てはまると思うんです。「光がある人」。社会をこういう風に変えていくんだ、という思いを光とともに発信できる人が、こうしたビジネスを発展させていけるんだろうな、と。

伊勢谷:
そうですね。

久保田:
もう一つ、「好循環を生み出せる人」というのも大切な要素だと思います。サーキュレーションがお世話になっているプロフェッショナル人材の中では60代、70代の方がたくさんワークしているんですが、老練で、イケていて、オーラがあるんですよ。
そんな人たちには、好循環を生み出せる人が多いんですね。自分自身やかつて所属した会社、出会った人々の明るいところに目を向けて、好循環を生み出せる。これはとても大事なことだと感じています。

伊勢谷:
子どもの頃、母親からよく「良い気持ちをちゃんと表現しなさい」と言われたことを思い出しました。「ありがとう」とか「うれしい」とか、そういう前向きな言葉を口にすることが大切なんだと。良い空気を発して好循環させるということですよね。

久保田:
一方で、日本の社会には「好循環なんてさせないよ」「そんなさわやかに前を向いて進むなんて許さないよ」という圧迫感もあります。そんな圧迫に屈することなく、前に進んでいかなきゃいけない。

伊勢谷:
僕は、何だかんだと言って人類のレベルは上がっていると思うんですよ。「マズローの欲求5段階説」ってありますよね?生理的欲求から始まって、自己実現欲求に至るやつ。僕らの子どもの頃の大人はラグジュアリーな世界を目標にしていて、金持ちになることばかり追いかけていた。低次の欲求ばかり子どもに示していたような気がするんです。
で、子どもだった我々が大人になったときに、それがカッコいいとは思わなくなった。むしろ今、自分たちが人間として何をすべきかを考え、未来のために行動するというところまで成長できた。マズローの説で言うところの、高次の欲求を持っている段階にあると思うんですよ。

久保田:
確かに、低次の欲求を超えて「人のためになりたい」という欲求を持つ人が増えているような気がします。
例えば、自分はLGBTじゃないのにLGBTの人を応援する人たち。僕は素晴らしいと思うんですよ。多様性が重要であることを理解し、差別が解消されないことへの危機感を感じて行動しているわけですよね。モノや権威への欲求を乗り越えて、ピュアな思いで社会を見ている。新しい世界にいる新しいタイプの人たちなんだと感じます。

伊勢谷:
単純に「良いモノがほしい」と考える人は減ってきていますしね。

久保田:
僕は新卒採用のシーンで学生に会いますが、本当に視点が高い人材がいるんですよ。日本のおじさんたちははそういう人を「ホスピタリティ人材」と呼んで馬鹿にする。打撃力がないとか、行動力がないとか。「最近の若い者は欲がない」なんて言う人もいるけど、「社会を良くしたい」という素晴らしい欲があるんですよ。
恵まれた環境に生まれた人たちが、「高級車や高級腕時計には興味がない」と言う。これはある意味で正しいことだと思います。「自分は良い環境に生まれたから社会の役に立ちたい」と、素直に思えるということですよね。

伊勢谷:
うん。人類は確実に成長している。

社会課題の解決に向けた志に、ビジネスの知見を

久保田:
リバースプロジェクトのプロダクトを見ていて、僕は従来のモノの価値が見直されるんじゃないかと感じました。循環性のあるモノを作っている。捨てられる運命にあった規格外野菜を再生したり、環境に持続可能性を持たせる制服を作ったり。

伊勢谷:
そうですね。プロダクト作りによって資源を循環させるということを強く意識しています。

久保田:
今の若い人たちは、「モノそのもの」よりも「モノのストーリーを重視する」とよく言われますよね。昔は高級腕時計を身につけて「あの人はお金持ちなんだ」と思われることがステータスだったけど、今は身につけているモノのストーリーを知って、「このブランドが社会のどんな要素につながっているのか」を語れることがステータス。
リバースプロジェクトのプロダクトは、まさにそのストーリーを持っています。プロダクトが世界とどんな風につながっているのか。それを分かりやすく示せているのは、すごいことだと思うんです。

伊勢谷:
いろいろな業界に「余り物」が存在します。それを社会価値や人の命に還元していけるのはとても価値のあること。そのストーリーを伝えていくことは、まさに僕たちが目指しているあり方そのものですね。
普通の会社がやるようなマーケティングじゃなく、「プロダクトのストーリーそのものが社会につながっているんだよ」ということを強く発信し続けていきたいです。

久保田:
僕はこの発想自体にとても共感していて。だからこそ、どうやってこのプロダクトを広めていくかにコミットしたいんです。伊勢谷さんは、今回のプロジェクトにどんなことを期待していますか?

伊勢谷:
久保田さんが先ほど言っていたように、「社会の役に立ちたい」と考えている若い人が増えているのは間違いないと思います。同時に、「どうすればその思いを形にできるか」が分からないという人も多いんじゃないかな。
だから僕たちは今回のプロジェクトを通じて、思いを形にするための方法を示していきたいと思っています。久保田さんやサーキュレーションのみなさん、プロフェッショナルのみなさんの力を借りて、「志をスケールさせることができるんだ」と示したい。

久保田:
サーキュレーションは「オープンイノベーション」というテーマでいろいろな取り組みをやってきましたが、その中には東京のプロフェッショナル人材が地方の企業に行って、事業課題の解決に貢献した例もたくさんあります。
社会課題の解決に向けた高い志を持っているのに、ビジネスの知見が足りない。そんな企業とともにオープンイノベーションの新しい可能性を実現していきたいんです。今回のプロジェクトは、僕たちにとっても新たな、そして大きな挑戦です。この経験はとても貴重なものになると思うので、全力で関わっていきたいですね。

伊勢谷:
ありがとうございます。志をともにしてくれて、なおかつそれをバックアップできるスキルを持っている人。そんな方々の力を借りて、リバースプロジェクトも新たなイノベーションを起こしていきたいと思います。