注目ベンチャーの経営者やオピニオンリーダーをゲストに迎え、サーキュレーション代表の久保田と対談を行うイベント、CIRCULATION LOUNGE(サーキュレーションラウンジ)。「次世代リーダーサミット 〜これからの社会変化の中で活躍できるビジネスマンとは〜」をコンセプトにお届けしています。

10月19日(木)には、記念すべき第20回目を開催しました。今回のゲストは日本の医療ヘルスケアの課題を解決し、「納得できる医療の実現」を目指す株式会社メドレー代表取締役医師の豊田剛一郎さん。「既存業界を変革し新しい時代を創る」をテーマに、それぞれの挑戦について語り合いました。

ゲスト:豊田剛一郎さん(左)

株式会社メドレー代表取締役医師。東京大学医学部卒業後、脳神経外科医として国内の病院に勤務。その後渡米し、ミシガン小児病院にて脳研究に従事する。日米での医師経験を通じて日本の医療の将来に対する危機感を強く持ち、医療を変革するために臨床現場を離れることを決意。マッキンゼー・アンド・カンパニーにて主にヘルスケア業界の戦略コンサルティングを経験後、2015年2月より株式会社メドレーの共同代表に就任。オンライン医療事典「MEDLEY」、オンライン診療アプリ「CLINICS」などの医療分野サービスの立ち上げを行う。

ファシリテーター:久保田雅俊(右)

株式会社サーキュレーション代表取締役CEO。学生起業や大手人材会社でのイントレプレナーを経て「世界中の経験・知見が循環する社会の創造」をビジョンに株式会社サーキュレーションを創業。ビジネス領域のプロ人材を活用して企業の経営課題を解決するコンサルティング事業を中心に新しい働き方の価値観を創ることを推進している。

「日本の医療が成り立たなくなる未来」を変えたい

久保田:
メドレーさんは今、メディカル関連で最も注目されているベンチャーと言えるのではないでしょうか。現在の事業についてご紹介頂けますか?

豊田:
2009年にできた医療ITベンチャーで、医療・ヘルスケア分野の課題解決をミッションとしています。私はもともと脳神経外科医としてキャリアをスタートし、日米での病院勤務、マッキンゼーで製薬業界などへのコンサルティング業務を経て、共同代表としてジョインしました。
ここ最近、インターネットでは医療情報サイトの炎上が続いていますよね。英語では日本語のサイトと桁違いに多くの人が見ている分、きちんとした医療情報サイトや監視の目が多く不適切な情報はどんどん淘汰されていますが、日本ではそれがなかなか進まない。そこで私は入社後、オンライン医療事典「MEDLEY」を作りました。さらに「CLINICS(クリニクス)」というオンライン診療アプリや、「ジョブメドレー」という日本最大級の医療・介護求人サイト、介護施設の口コミサイト「介護のほんね」を運営しています。

久保田:
体制もかなり充実してきているのではないでしょうか。

豊田:
そうですね。現在は約200名体制です。私も含め、医師が8名在籍しているほか、リブセンス出身のCTOやJPモルガン証券出身のCFOがいて、医療というレガシーな業界の会社としては非常に多様な経営者陣が揃えていると思います。

久保田:
レガシーな業界であり、かつこれからも欠かせない分野でもありますよね。

豊田:
日本の医療費は年間約40兆円で、本来は社会保障費でまかなうべきところがおよそ半分は税金などの公費に支えられている状態です。制度がこうして実質的には破綻している中で、騙し騙しでは成り立たない世界が5年後、10年後には来ると思っています。メドレーはそうした状況を変えるためのサービスを展開しています。
「CLINICS」はスマホで予約し、ビデオチャットで医師の診察を受けられるサービスで、600を超える医療機関が利用しています。国のさまざまな規制とも向き合い、法律や医療の質などの観点から見て適切な状態とは何か、常に議論しながら普及させています。「メドレーは大きな領域に挑もうとしているよね」とよく言われますが、実際にどんな会社ならそれができるかを考え、「凡事徹底」「中央突破」「未来志向」という3つの考え方を大事にしながらやってきました。

敵だと思っていた相手が大きな味方になることも

熱心に話をするサーキュレーション代表の久保田とそれを聞くメドレー共同代表の豊田さん

久保田:
今日は「既存業界を変革し新しい時代を創る」をテーマに掲げています。サーキュレーションでは1万人のプロフェッショナルワーカーと企業の経営課題をつなぐ提案を行い、新しい働き方を実現すべく歩んでいます。豊田さんの話を聞き、分野は違えど、互いに既存業界の変革と新しい時代を作ることに挑戦しているんだなと感じました。
新しい時代を創る面白さや苦労って、どんなことだと思いますか?

豊田:
僕自身は、「メドレーがうまくいかなかったら、今まさに起ころうとしている、医療にインターネットを活用していこうという波が2ケタ年単位で遅れてしまう」と本気で思っています。そうした意味では、新しい時代を創る面白さと共に大きな責任も感じています。
それには苦労もあって、例えば医療業界では自分たちのペースだけで事業を進めることができません。診療報酬が2年単位で変わっていくなど、制度上の決まりが多い市場であることがその背景にあります。これが大企業が飛び込みづらいという参入障壁になってくれていると思う一方で、もどかしさや悔しさも感じています。

久保田:
その背景には「既得権益との戦い」のような話も含まれるのですか?

豊田:
「国や医師会、既存の医療業界と戦っている」という印象で見られることは多いですね(笑)。でも実際のところ、この業界には良心的な方がとても多いのです。
例えば小学校の検診は医師会が担当し、日本の小児医療を支えてくれています。そのような草の根の活動で健康を支えながら、一方では変化を受け入れにくいという面もある。これは既存の医療の良さを守りたいゆえだと理解していますし、そもそも私たちは既存の医療の敵ではないと思っています。それを伝えるために医師会にも足繁く通い、講演などもさせてもらってます。

久保田:
僕は、「新しい時代を創ること以上に面白いことはない」と思っています。これ自体がベンチャーの魂だと思う。でも実態は苦労ばかりであることも事実で。
既得権益についての質問をしましたが、豊田さんが言うようにただ逆らうのではなく、相手を大きな味方にしていくことも大切ですよね。既得権益との戦いってタイミングが大切で、世の中の流れが来ているときには、敵だと思っていた相手がめちゃくちゃ協力的になってくれることもあります。

豊田:
今の時代は、何か行動を起こせばSNSでどんどん広がっていく。変な既得権益もインターネットでは喝破されてしまうんですよね。一企業では戦いきれなくても、発信力や影響力をうまく使えば小さな声もちゃんとエンパワーメントして伝えていける。そうやって国や大企業を巻き込み、仲間に変えていけることもある。だから、僕たちがインフルエンサーになることも大切だと思っています。

儲かっていなくても、失敗だとは思っていない

熱心に話をするメドレー共同代表の豊田さん

久保田:
少し具体的な部分も聞いてみたいと思います。オンライン診療においても、世の中の既存のルールを変えにいこうとしていますよね? 病院に行かなくても済むようになるという大きな変化を起こそうとしている。でもまだそれが許されていないという現状で。

medleyのCLINICSの説明画像

豊田:
許されていないというよりも、誤解が多いということが障壁ですね。toC向けにどんなに良い機能を作っても、医師が動いてくれない限り、このサービスは意味を成しません。だから医療の提供者に正しく理解してもらえるよう動いているわけですが、これがとても大変ですね。オンライン診療は、かかりつけの医師と患者をつなぐツールなのですが「医師から患者を奪うのではないか」と誤解されていたりする。これを一つひとつ理解してもらう必要があるんです。うちの営業チームは日々説明に赴いて業界全体に正しい理解の普及がなされることを目指していますし、広報チームも世論から変えるために頑張っています。

久保田:
実際のところ、オンライン診療が一般的に使われるのは何年後くらいになると見ていますか?

豊田:
診療報酬改定という医療の大きなイベントを考えると、「全国の数割の医療機関が使う」という状態になるのは4年後くらいを見据えています。現在、2018年の診療報酬改定で、オンライン診療をしっかり評価しようという動きが出てきています。これがどこまで評価されるかというのは、一つの変わり目です。

定期的に病院に通う必要のあるお子さんをもつお母さんが、上手に仕事や家事とやりくりするためにCLINICSを使ったり、忙しいビジネスパーソンが会議室でオンライン診療を受けたり。そんな世界になっていくはずです。

久保田:
新規事業をやってきて、今だから言える失敗としてはどんなことがありますか?

豊田:
私は2年7カ月前にジョインしましたが、これまでに事業をたたんだり撤退したりした経験はないんです。ただ、オンライン医療事典の「MEDLEY」は正直、現状儲かっていないですね(笑)。そもそもこれですぐにたくさん稼ぐ気もなくて、それを失敗と言われれば失敗なのかもしれませんが、経営者としてはそうは思っていません。
例えば「3年で10億円稼ぐ」といった短期的な話ではなく、「将来のために絶対に必要だ」という長期的なビジョンで創っているサービスだからです。

久保田:
なるほど。僕自身も、新規事業で失敗したと感じたことはないかもしれません。それはなぜかと言うと「手堅くやっているから」というものがあるんです。
手堅いと言っても、マーケットの見通しがあるだけでは失敗する。大事なのはやはり「人」だと思います。企業として掲げるフィロソフィーの中で、そこに集うメンバーがやりたいことをやれているか、早期に一定の市場を取れるか。新規事業にはそうした要素が欠かせないと思っているんですが、豊田さんの話を聞いているとまさにそれを感じますね。

変化が求め続けられる時代に必要な「尖りテクノロジー」

話に聞き入るメドレー共同代表の豊田さん

久保田:
メドレーはインターネットの力で医療業界を変えようとしていますね。テクノロジーは、これからの働き方や経営をどのように変えていくと考えていますか?

豊田:
インターネットによって、「個人が強くなれる」「小さい会社でも強くなれる」という世界がもたらされたと思っています。個が埋没しないようになるし、逆に言うと、昔だったら流されていたようなことも明るみに出るようになりました。

久保田:
そうですね。実際に世の中を変革するサービスもそうした流れの中で生まれていると感じます。

豊田:
人の力でやっていたことをテクノロジーに置き換えれば、100倍の速さでできるようになることもあります。こうした中で、働き方や経営においては「変化し続けるスピード」が強く求められる時代になっていると感じますね。

久保田:
変化し続けながら自分自身のキャリアを手に入れようとすると、「尖りテクノロジー」が必要になると思うんですよ。

豊田:
尖りテクノロジー?

久保田:
AI(人工知能)だのVR(仮想現実)だのと、最先端のものが次々と登場する中でそれらを追いかけ続けるのは難しいけど、「ここだ」と決めて詳しくなっておくことは大事だな、と。「僕はドローンを5台持っています」とか。テクノロジーにすべて詳しいなんて、そんな魔法みたいなことはあり得ないわけで。

豊田:
働き方で言うとリモートワークも盛んに議論されていますが、PC1台だけで家で安心して働けるかというと、まだ不安もありますよね。このあたりはどう考えていますか?

久保田:
「手でものをつかむ」というような動作以外のことであれば、コミュニケーションでも何でも遠隔で違和感なくできるようになると思っています。

豊田:
その動きは確実に進んでいくんでしょうね。一方でテキストでのやり取りって、記録に残るのはいいんだけど、それだけだと「対面しての言葉より何倍も冷たく感じる」らしいんですよね。だから難しいなと思っていて。働き方が変わるからこそ、対面の価値も見直されていくのではないかとも思うんですよ。

久保田:
今すぐにというよりは、ゆっくりと時間をかけてそういう時代になっていくのだろうと思います。いろいろな企業が挑戦し、成功したり失敗したりする中で、新しい働き方が少しずつ根付いていくのではないでしょうか。

次世代のリーダーサミットとしてCIRCULATION LOUNGE

MEDLEYのTシャツを着るサーキュレーションの代表の久保田

第20回目のCIRCULATION LOUNGE(サーキュレーションラウンジ)は、サーキュレーション代表の久保田がメドレーさんのオリジナルTシャツを着てきて場を温めたところから始まり、盛況のうちに終わりました。今後も定期的に開催される注目の対談をnomad journal(ノマドジャーナル)でレポートしていきます。