デジタルツールの発展やソーシャルメディアの普及により、企業と顧客の関係性だけではなく、従業員や取引先、投資家など企業を取り巻く全てのステークホルダーと企業との関係性に変化が生じています。

ソーシャルメディアを活用して、手軽に企業やサービスのブランド価値を発信できるようになったことはメリットといえるでしょう。一方で、これまで長い時間をかけて構築してきたブランドが簡単に破壊されてしまう脅威にさらされていることも忘れてはなりません。

このような時代の中で、コーポレートブランディングはどうあるべきなのでしょうか。

本記事では、サーキュレーションで行われた広報・HR・IRなどの領域で活躍しているプロフェッショナルの方々によるパネルディスカッションの内容をもとに、コーポレートブランディングに焦点をあて、これからの成長企業に必要とされる広報・HR・IRの役割と戦略について解説します。

上村 嗣美氏

上村 嗣美氏

株式会社サイバーエージェント 全社広報室 シニアマネージャー。1999年、法政大学経営学部在学時より設立2年目、当時社員数30名だったサイバーエージェントの内定者インターンを開始。東証マザーズ上場を経験し、2000年に同社へ入社、社長秘書を経て広報専任として広報部署を立ち上げ。BtoB事業の広報からBtoC事業の広報、クライシス対応や広報担当者の育成などで実績を積み2008年より広報責任者として全社の広報統括と企業広報を担当。社員数30名のスタートアップ時期から、グループ社員数4,500名を超える現在までを、一貫して見てきた経験を生かし、各所で広報に関する講演活動などを行う。

菅原 弘暁氏

菅原 弘暁氏

株式会社PR Table取締役/共同創業者。2011〜2015年、大手総合PR会社であるオズマピーアール、内1年間は博報堂 PR戦略局に在籍。その後、国内最大級共創プラットフォームを運営する会社でPR・ブランディングに従事し、2015年9月よりPR Tableに参画。2年間で200社以上の採用広報/社内広報を支援し、500本以上のコンテンツを監修。PRSJ認定PRプランナー。

渡邊将志氏

渡邊 将志氏

渡邊将志オフィス株式会社 代表取締役。1994年、慶應義塾大学総合政策学部卒業後、日興証券入社。営業、ニューヨーク駐在を経てM&A業務に従事。2001年松井証券入社。上場準備リーダーとして自社の東証一部上場を実現。その後、経営企画部で経営戦略の立案に携わり業界トップシェアを実現。また、広報IR担当部長として年300件の記者取材に対応し、新聞やテレビに多数登場して会社や商品の知名度アップに貢献。IRでは上場後のIR体制を構築し、自社株の売買高を増大させ、後の日経225銘柄への採用に貢献。2009年取締役に就任し4期務める。2014年渡邊将志オフィス株式会社を創業、代表取締役就任。主に上場前後の企業向けに経営戦略、IR・広報・上場支援、人材育成等のコンサルティングを実施。

サーキュレーション大野

モデレータ 大野 行康

株式会社サーキュレーション ITチーム リーダー コンサルタント。2009年、総合商社に新卒入社。新規事業統括としてアライアンス提携や営業戦略を推進。数十億円の市場創造に貢献。その後、インターネット広告代理店にて大手通販企業からローカルビジネスまでの幅広い業種のマーケティング戦略からメディアプランニング支援を経験、全社MVPを数度受賞。2015年、サーキュレーションに参画。コンサルティング本部のリーダーとして、オープンイノベーションの概念を取り入れた経営コンサルティング事業を展開。中期経営計画策定、新規事業プロデュース、広報・マーケティング支援、資本政策、人事戦略など多岐にわたるプロジェクト推進支援を行う。<

コーポレートブランディングとは?

イベントをファシリテートするサーキュレーション大野
イベントの概要をモデーレータとして紹介するサーキュレーション大野

そもそもコーポレートブランディングとは何でしょうか。イベントでも、関心はあるもののよくわからないという声が多く集まりました。

そこで、コーポレートブランディングが寄与する領域として、社外発信などの広報の観点、社内広報や採用広報などの人に関するHRの観点、投資家向けのIRの観点に分けて見ていきます。

広報領域からコーポレートブランディングを考える

広報領域からコーポレートブランディングについて語る上村氏
広報領域からコーポレートブランディングについて語る上村氏

コーポレートブランディングを考えるうえで、重要になるのが社外広報の役割です。

サイバーエージェント様では、広報のミッションとして「事業と経営のバリューアップ」を掲げています。全社広報室 シニアマネージャーの上村氏は「広報は、ファンをつくり事業と経営をやりやすくする環境作りを担っている」といいます。

コーポレートブランドを形成するもの

コーポレートブランドを形成するものとしてビジョンや企業文化、アウトプットなどがありますが、それら全てに一貫性があることが重要です。

上村氏が考える「コーポレートブランドを形成するもの

企業文化を多角的に社外に伝える

サイバーエージェント様では企業文化を社内だけではなく社外に伝えることも重要だと考え、活躍する社員のインタビューをコーポレートサイトに掲載しています。

企業文化を多角的に見せることも重視しており、新卒で社長になった新卒社長のインタビューや新卒社長の就任時期などの実績も公開しています。また、テキストだけではなく動画で事業の価値を配信しているのも特徴です。

上村氏の実践するコーポレートブランディングとしてのサイバーエージェントのコーポレートサイトに掲載している社員インタビュー

上村氏によると、これらの広報活動はコーポレートブランディングのためというよりも、企業価値の最大化のために行っているそうです。イベントでは、それが結局自社のファンや応援者を増やすことにつながっており、コーポレートブランディングに寄与しているのではという議論も行われました。

HR領域からコーポレートブランディングを考える

HR領域からコーポレートブランディングを語る菅原氏
HR領域からコーポレートブランディングを語る菅原氏

次に、人に関するHR領域からコーポレートブランディングを考えていきましょう。

多くの企業の採用広報や社内広報の支援をしている菅原氏によると、HR領域で成功している企業は、

全社員が「伝えられる」つまり、自社のPRを上手にできるといいます。トップや広報だけではなく、全社員が伝えられるというのがポイントです。

したがって、広報には自分と同レベルで社員が伝えられるようになるための支援をする役割が求められます。そこで菅原氏は、適切な情報提供のために社員をメディアと置き換えることを提案しています。メディアに対するのと同じように、社員の周囲にいる読者層を想定し、それに応じた情報提供をしていくというわけです。

コーポレートブランディングから考える社員〜社員をメディアと置き換えてみよう〜

社員から社会に共感が広がる

このようにして社員一人ひとりが自社のPRをしていくことで、まずは周囲にいる家族や友人、取引先などに共感が広がります。そして、そこから社会に共感が広がっていくのです。

いきなり社会に広がるのではありません。まずは社員からじわじわと浸透させていくことがポイントです。

コーポレートブランディングから考える社員〜社員から社会に広がる共感〜

つまり、社員からの共感なくして、社会からの共感はないということです。社員のことを常に意識し、社員が誇りに思えるような情報提供をしていくことが、ブランドを守ることにつながるのです。

コーポレートブランディングから考える社員〜社員からの共感なくして社会からの共感なし〜

コーポレートブランディングはいい循環を作ることが重要

しかし、残念ながら日本では社員の戦略理解やコミットメント、勤務先への信頼度が低いのが現状です。

日本の勤務先への信頼度は先進国28カ国中で最下位

コーポレートブランディングを考えるうえでは「人」、つまり社員が果たす役割は非常に大きいといえるでしょう。そのためには、いい循環を作ることが重要です。社員の現状を見て、社員の戦略理解やコミットメントを引き上げ、適切な情報提供をすることで社会への共感を広げていくのです。

HR領域に携わる方々は経営や人事などとタッグを組んで、いい循環を作ることに注力していきましょう。

IR領域からコーポレートブランディングを考える

IR領域からコーポレートブランディングについて語る渡邊氏
IR領域からコーポレートブランディングについて語る渡邊氏

最後に、IR領域を見ていきましょう。

上場前後の企業向けに経営戦略やIRの支援をしている渡邊氏によると、経営者の方でもIR活動についてあまり理解していないケースは多いといいます。

IR活動とは何か

IR活動とは成長戦略を数値ベースの資料で説明することです。「成長戦略」「数値ベースの資料」「説明」この3つの要素が不可欠です。よく、伝えることがIR活動といわれますが、そもそも伝えるべきネタがないと意味がありません。

まずは成長戦略を作るところから始めましょう。成長戦略とは、現在から未来に向けての企業の成長ストーリーです。

IR活動とは、「成長戦略」を「数値ベースの資料」で「説明する」こと

それでは、どのように成長戦略を作っていけばいいのでしょうか。

成長戦略には、①現状②市場機会③戦略④将来ビジョンの4つの項目が必要です。これら4つの項目を1本の線でつないだものが成長戦略です。成長戦略が固まって初めて、それを伝えるフェーズに入るのです。

IR資料に必要な成長戦略の4項目

IR活動の本質とは

IRの目的は、全社員が成長戦略を語ることで企業価値を上げることです。社長やIR担当者だけが語ればいいのではありません。広報担当や営業担当などが、それぞれの立場で外部のステークホルダーに成長戦略を語っていくことが重要です。それが結果的に企業価値を上げ、株価向上につながるからです。

IR活動の本質は役員・社員が成長戦略を語ることで、企業価値を上げること

実際にIR活動で企業価値を高めている企業もあります。これらの企業に共通するのは、成長戦略を明確にし、何が何でも目標を達成するという強いコミットが感じられることです。

また、IRと広報は分けて考えない方がいいでしょう。企業の信頼性や知名度を高めるには、IR活動に加えて、メディアによる情報発信も非常に効果的だからです。広報と連携してIR活動を進めていくことがポイントです。

まとめ:改めてコーポレートブランディングとは?

ここまで広報、HR、IRと領域別に見てきましたが、それぞれの領域が重なり合っているのが理解できたのではないでしょうか。イベントでは、コーポレートブランディングとは、企業を取り巻くあらゆるステークホルダーとの信頼関係の構築だという話も出ました。

そう考えると、コーポレートブランディングは全社員に関係してくるテーマだといえるでしょう。社員への情報提供や意識改革の話が出てきましたが、そのためにも広報、HR、IRが連携してコーポレートブランディングを考えていくことが重要になってきます。本記事を参考に、社内でコーポレートブランディングについて議論するなど、できるところから始めてみてはいかがでしょうか。

なお、本記事はイベントでお話しいただいた内容から一部を抜粋したものです。イベントでは、ほかにもコーポレートブランディングの具体的な進め方などたくさんのトピックスについてお話しいただきました。もっと詳しく聞きたい方は、次回の開催をご期待ください。

イベントの後のサーキュレーション大野、上村氏、渡邊氏、菅原氏