変化のスピードが速い現代では、事業を拡大・変革する人材を育てることは非常に重要です。特に、次世代の事業を創るリーダーとなる中堅社員の人材開発は急務であると言えます。

もちろん、大企業と成長ベンチャー企業では、人材開発の取り組み方に異なる点も多いでしょう。それでは、人材開発に成功している企業は、具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか。

本記事では、サーキュレーションで行われた人事開発のパネルディスカッションイベントの内容をもとに、次世代の事業を創る人材開発のポイントを考察します。

人材開発に取り組む企業の責任者:溝田 吉倫氏

株式会社アイモバイル 取締役 副社長 アドプラットフォーム 事業本部担当。アパレル業界、不動産業界での営業経験を経て、2009年に株式会社アイモバイルへ入社。入社後、フィーチャーフォン広告の営業として運用に特化した部隊の立ち上げを担当。その後、2013年にアドネットワーク事業部の責任者となり地方・海外支社などの拠点拡大や、動画広告事業「maio」、DSP事業「Evory」などの新規事業の立ち上げに携わる。現在は、約100名を超える広告事業の責任者も兼任して務めている。

人材開発に取り組む企業の責任者:山口 圭介氏

大日本印刷株式会社 包装事業部 マーケティング企画本部 本部長。関西、関東エリアでの営業を経て、同社の基幹事業である包装事業部のマーケティング企画本部長に就任。その傍らで、ヒトづくり部会長、働き方変革事務局長や営業変革PJT責任者も兼務。若手からマネジメントクラスまで多岐にわたる層を対象にした、企業風土改革・人材育成の責任者に従事。

人材開発の支援に入った専門家:塩川 博孝氏

株式会社Level5 Consulting 代表取締役社長。日本航空を経て米ダートマス大学にてMBA取得。その後、AT&T、外資系広告代理店に勤務後、外資系ダイレクト損保の立ち上げに取締役CMOとして参画。複数の外資系ベンチャー企業の社長を歴任後、トランスコスモスにてグループ出資会社の社長や取締役を兼務。ライブドア・マーケティングの取締役COOとして事業再生にも関わる。現在は、複数企業の経営顧問や、経営陣・幹部社員に対するMBA研修を務める。

人材開発のコーディネートをしたコンサルタント:大野行康

株式会社サーキュレーション ITチームリーダー コンサルタント。総合商社に新卒入社。法人営業に従事した後、新規事業統括としてパートナー企業とのアライアンス提携や営業戦略を推進。その後、インターネット広告代理店にてマーケティング戦略から広告運用までを経験。全社MVP受賞。現在は、株式会社サーキュレーションにて、オープンイノベーションによる経営コンサルティングプロジェクトを推進。

大企業における中堅社員を中心とした人材開発プログラム

次世代の事業を創るリーダーとなるのは、中堅社員です。しかし、なかなか体系立って育成ができていない企業も多いのではないでしょうか。

今回ご紹介する大日本印刷株式会社様では、部門ごとに自社の成長につながる人材開発の取り組みを行っています。ヒトづくりや働き方改革の責任者も兼任するマーケティング企画本部本部長の山口氏は、これらの取り組みを3つの柱で紹介します。

1.ヒトづくり

ヒトづくりとは〜人材の共育〜

山口氏によれば、キャリアとは「働くこと」を通じて自らの「志」を実現する成長プロセスであり、ヒトづくりとは自ら考え、実践できるヒトを増やすことだと言います。

大日本印刷株式会社様のような大企業になると、部門によって事業内容や必要なスキルなども大きく異なるため、自社の成長につなげるヒトづくりを、部門自らの手で責任を持って実施しているのが特徴です。

キャリアアップとは、能力・経験・知識をバランスよく大きくすること

キャリアアップしていくには、知識・経験・能力をバランスよく積み上げていくことが重要になります。そのために、大日本印刷株式会社様では、知識・経験・能力を伸ばすカリキュラムを作り、各事業部で実施しています。特に新卒9年目までは継続してしっかりと研修を行っているそうです。

2.働き方改革

働き方改革が叫ばれる中、企業における取り組み状況は様々です。山口氏は、働き方改革は「生き方改革」であり、「成果の出し方改革」であると定義します。会社に行くだけ、作業をするだけではなく、限られた時間で成果を出すプロになることが求められていると考えるからです。

改めて「働き方変革」とは〜結果・成果を出すworkする人材になれること〜

働き方の変革の目的は、組織力アップです。一人ひとりが成長し、成長した個人の知恵が様々なネットワークでつながることで、組織力はアップしていきます。

そのために、大日本印刷株式会社様では個人と組織の生産性を上げることを基本方針とし、目標を可視化しています。

改めて「働き方変革」とは〜働き方の変革の目的は組織力アップ〜

3.営業革新活動

また、大日本印刷株式会社様では企業風土改革を目指して営業革新活動もスタートさせています。営業担当者が自ら意識や行動を変え、徹底的な生活者視点に立って新しい価値を創造することで、将来的に事業構造改革、企業風土改革を実現することを目指しています。

次世代の事業を創る中堅社員を中心に、選抜されたメンバーが研修なども活用しながら変革に取り組んでいます。彼らが今後他の社員を引っ張っていくリーダーになれるように、体制を作って時間をかけて育成しているところです。

成長ベンチャー企業における次世代リーダー育成プロジェクト

次世代リーダーを育成することの重要性は多くの方が理解していると思います。しかし、特に成長著しいベンチャー企業では、人手やノウハウ不足などにより育成が後回しになっているという話をよく聞きます。

今回ご紹介するアイモバイル様は、2007年創業でインターネット広告事業を軸に、ふるさと納税事業などコンシューマー事業も拡大している成長ベンチャー企業でありながら、人材開発に積極的に取り組んでいる企業です。

アイモバイル様の人材開発の取り組みを見ていきましょう。

「やる気」を大切にしたキャリアパス

取締役の溝田氏によれば、アイモバイル様では、社員の「やる気」を大切にしたキャリアパスを準備していると言います。

役職関係なく「やりたい」と手を挙げた社員にチャンスを与えられる環境づくりを心がけているそうです。 下図のキャリアパスからもわかるように、入社4~5年目で部長に昇格することもできます。

実際に、入社数年で子会社の取締役になっている社員もいます。ベンチャー企業ならではのスピード感ですが、それに応えられる人材開発も重要になってくると言えるでしょう。

imobile社で導入したフレックス制度

充実した社内制度や福利厚生

ほかにも、充実した社内制度や福利厚生も特徴的です。社内公募でキャリアチェンジの機会を積極的に作ったり、会社から2駅以内に住む社員に住宅手当を支給したりするなど、仕事と生活両面から支援しています。

また、現在テスト導入中なのがフレックス制度です。これは、部門によって繁忙期に差があったり、子供を持つ社員が多くなったりしたことなど、ニーズの多様化が背景になっています。ライフスタイルに応じた働き方をすることで、生産性を上げることを目指しています。

imobile社が整えた社内制度・福利厚生

プロ経営者による人材開発支援

ここまで大企業と成長ベンチャー企業の取り組みを見てきましたが、両社の人材開発に共通することは、外部のプロ経営者である株式会社Level5 Consulting代表取締役社長の塩川氏による支援を受けたことです。

外部人材の支援を受けることについて、アイモバイル取締役の溝田氏は「事業を拡大するには社員を育てるしかありません。しかし、経営などについて教えることができる人が社内にいないという課題がありました」と背景を語ります。

そこで、サーキュレーション大野のコーディネートのもと、複数の企業で社長や取締役を務め、現在複数企業の経営顧問や、経営陣・幹部社員に対するMBA研修を務める塩川氏が支援に入ることになりました。

同じように、大日本印刷株式会社様でも、選抜メンバーが現状に課題や迷いを持っており、彼らをまずはリーダーとして引き上げることの重要性を感じていました。そこでサーキュレーション大野のコーディネートのもと、塩川氏に選抜メンバーの育成支援を依頼することにしました。

MBA研修で基礎知識を身につける

塩川氏が支援に入ってまず行ったのが、MBA研修です。これは、MBAで学ぶ基礎知識を約半年かけてひととおり学ぶ研修で、これまでにも多くの企業で成果を上げています。コーディネートを担当したサーキュレーション大野自身もこの研修を受講しており、効果を実感した一人です。

塩川氏によれば、知識は使えないと意味がないので、研修では今話題になっている企業をケースにしていると言います。

研修後、アイモバイル様の社内では行き詰まった時「研修で学んだことを生かせないだろうか」という言葉が出てくることが増えたそうです。受講者全員の知識が向上し、それに伴い意識や行動にも変化が表れていると言います。

また、大日本印刷株式会社様では受講者はMBAの知識を身につけたので、今後は塩川氏の支援を受けながら事業構造改革を考えるフェーズに進むということです。

人材開発に投資できるかが企業の成長を左右するのではないか

アイモバイル様のコーディネートを担当した大野(大日本印刷株式会社様は別のコンサルタントが担当)は両社の取り組みを振り返って、人材開発は何をもって成功と言えるのか、KPIが見えにくいと言われる中で、両社では着実に次世代リーダーが育っていることを指摘し、今後は人材開発に投資できるかが企業の成長を左右するのではないかと締めくくりました。

まとめ:次世代の事業を創る人材を育成する人材開発とは

最後に、今回ご紹介した大企業と成長ベンチャー企業の人材開発のポイントを振り返ります。

企業の状況に応じた人材開発プログラムを実施

まず、自社の状況や課題に応じて取り組みを具体化させていることです。大日本印刷株式会社様では、部門別に体系立った人材開発プログラムを行っていました。また、選抜型の活動も実施し、多くの社員を引っ張るリーダーの育成も重視しています。

一方、成長スピードに対応できるよう「やる気」を大切にしたキャリアパスを準備しているのがアイモバイル様です。キャリアパス実現のために、「やりたい」と手を挙げた社員に任せることができる企業風土や仕組みも重要であることがわかりました。

自社で育成が難しい部分は外部の専門家の知見を活用

そして、自社では育成が難しい部分においてはサーキュレーションのコーディネートのもと、プロ経営者の塩川氏の支援を受けているのも特徴です。

実際に、MBA研修を受講することで受講者の知識レベルが向上し、意識や行動にも変化が表れてきていると言います。

このように、自社では育成が難しい部分は、外部の専門家の知見をいかにうまく活用できるかが重要と言えます。

次世代の事業を創る人材開発に課題を抱えている企業の経営・人事の方々は本記事の事例を参考に、外部の専門家の支援を検討してみてはいかがでしょうか。

サーキュレーション大野、株式会社アイモバイル溝田氏、大日本印刷株式会社の山口氏、株式会社Level5 Consulting の塩川氏、サーキュレーション中村
左から、サーキュレーション大野、株式会社アイモバイル溝田氏、株式会社Level5 Consulting塩川氏、大日本印刷株式会社 山口氏、サーキュレーション中村

なお、本記事はイベントでお話しいただいた内容から一部を抜粋したものです。セミナーでは、ほかにも人生100年時代のキャリアの考え方ななどたくさんのトピックスについて活発なディスカッションが行われました。もっと詳しく聞きたい方は、次回の開催をご期待ください。