企業内部だけではなく、外部と連携して新たな価値を創出する「オープンイノベーション」。市場や人材を取り巻く環境変化が激しい昨今、オープンイノベーションに取り組む企業も多いのではないでしょうか。しかし、外部との連携活動は活発化しているものの、肝心の事業がなかなか生まれていないのが現状です。

その理由のひとつに、社内に協業やインキュベーションのノウハウが不足していることが挙げられます。そんな中、プロ人材やスタートアップと連携しながら新規事業を推進していくオープンイノベーションの進化系手法が注目を集めています。

本記事では、大企業とプロ人材をつなぐサーキュレーションと、大企業とスタートアップの協業支援をするサムライインキュベート様によるセミナーの内容をもとに、オープンイノベーションを最速で実現する方法を解説します。

成瀬功一氏

登壇者:成瀬 功一氏

株式会社サムライインキュベート 執行役員/Enterprise Group。2010年大手事業会社へ入社し「新規メディア事業立ち上げから営業・運営」を実施。

2013年外資系コンサルティング会社へ移り、大企業の企業・事業戦略、イノベーション戦略、新事業開発、スタートアップ協業に関わるプロジェクトを多数経験。同じく、2013年より日本のスタートアップに対するインキュベーションを多数実施。

富樫 憲之氏

登壇者:富樫 憲之氏

株式会社サムライインキュベートTeam Leader/Enterprise Group。日本におけるオープンイノベーションプログラムの黎明期から携わりアクセラレータプログラムやハッカソンといったオープンイノベーションプログラムを大企業向けに多数提供。前職の広告会社では、リアル&webプロモーション両分野において、広告の企画・デザイン・制作など幅広い業務に従事。

村上亮太

登壇者:村上 亮太

株式会社サーキュレーション 執行役員/新規事業開発管掌。ボストン コンサルティング グループに入社。大企業の新規事業立ち上げ支援や組織再編/ダウンサイジングなどのプロジェクトに従事。その後同社を離れ、世界60ヶ国を旅する。帰国後、サーキュレーション創業に参画。現在は、新規事業開発管掌としてテクノロジーを活用した新規事業の立ち上げに従事。

鈴木亮裕

登壇者:鈴木 亮裕

株式会社サーキュレーション 執行役員/シニアコンサルタント。立教大学法学部を卒業後、NTT東日本に入社し法人営業で売上トップを獲得。その後、インテリジェンス(現パーソルキャリア)にてIT企業向け採用支援に従事した後、中国にて研修・適性検査・マーケティング事業を行う会社を起業。帰国後、組織人事コンサルティングファームを経て、2015年サーキュレーションに参画。現在はIT・インターネット並びにサービス領域の管掌役員として企業の経営支援に従事。

オープンイノベーションとは?

成瀬氏による登壇の様子

オープンイノベーションとは社内と社外のアイデアやアセットを有機的に結合させて、事業競争力を高める手法です。今まで築き上げてきた強みを活用しつつ、外部と連携することによって自社だけでは実現しえないスピードと新しい価値を生み出すことを目的としています。

日本でもオープンイノベーションが盛り上がっており、大企業とスタートアップの出会いは急速に増加しています。しかし、まだまだ事業化に結びついている例が少ないのが現状です。

既存のビジネスモデルを改善するなら、同じようなアセットを持っている他社と組めばいいので社内のアセットがキーになります。

一方で、事業モデル自体の転換や革新領域の新事業を生み出す場合、キーとなるアセットや推進手法が社内にない場合でも、なんとか自前でやろうとして停滞するケースが多く見られます。

オープンイノベーションを次のステージへ

その背景として、言葉にすれば当たり前のことですが「社内でコミットすべきこと」「社外と積極的に連携すべきこと」の切り分けが曖昧なケースが非常に多く見られます。

「どんな課題を解決したいのか」「どんな価値を生み出したいのか」「どれくらいの投資/リスクテイクが可能か」などは自社でコミットする必要があります。とは言え、新事業と言われてもどう考えたらいいか分からないという課題も大きいと思います。そこで活用すべきが「プロ人材」です。

また、その「解決のためのビジネスモデルやテクノロジー」「それを検証して実用化していくケイパビリティ」は、社内になければ積極的に外部と連携することが近道です。特にデジタルビジネスは顧客獲得スピードが圧倒的な優位性につながることも多いため、時間を意識することが重要だと感じています。そこに強みを持つのが「スタートアップ」という事業開発形態です。

この「プロ人材」「スタートアップ」との連携を高いレベルで行えることが、デジタルイノベーションを上手く進められている企業に共通の特徴だと考えています。

プロ人材との協業によるオープンイノベーション

サーキュレーション村上による登壇の様子

サーキュレーションはプロ人材のシェアリングサービスを行っており、オープンイノベーションにおいて、経験豊富なプロ人材が実働型で支援するのが特徴です。これまで、オープンイノベーションの文脈にプロ人材はなかなか出てきませんでしたが、オープンイノベーションは次のフェーズに進んでいるとサーキュレーション執行役員の村上は指摘します。

下記の図の一番左が、かつてのモデルである社内完結型のイノベーションです。そして今行われているのが、真ん中のオープンイノベーション1.0です。

今後は、一番右のオープンイノベーション2.0に向かっていきます。これは、個人のネットワークからイノベーションを生み出していくというモデルです。

オープンイノベーションは次のフェーズへ

オープンイノベーション2.0へ

欧州委員会が提唱しているオープンイノベーション2.0の特徴は、イノベーションのプロセスにおいて

「ユーザー」、つまり個人が主要 なプレーヤーのひとつとして位置づけられている点にあります。

村上は、オープンイノベーション2.0のキーワードとして「技術から課題へ」を挙げます。オープンイノベーションと言えばどうしても自社の強みから入りますが、新しい事業を生み出す際に必ずしも技術が業界1位である必要はありません。また、技術優位だけで個人は巻き込めません。それよりも「誰のどんな課題を解決するのか」で個人を引きつけ、その結果イノベーションにつなげるのです。

個人のネットワークの時代において有効なのが、知識や経験が豊富なプロ人材です。しかし、日本ではそもそも外部連携がほとんど進んでいないのが現状です。

日本における存続年数とオープンイノベーションとの関係性

プロ人材10,000名からアイデアを募る

プロ人材の強みとして、何かに特化した専門性を持つというものがあります。

サーキュレーションでは10,000名以上のプロ人材からアイデアを募るサービスを提供しています。多様な経験や専門性を持つプロ人材が登録しているため、社内ではなかなか出てこない幅のあるアイデアが集まります。また、それらは実際のビジネス経験から生み出されているため、机上の空論ではないのもポイントです。

このように、様々な場面でプロ人材の活用が可能です。

オープンイノベーションにおいて、プロ人材と協業するかスタートアップと協業するか迷われるかもしれませんが、それぞれに強みがあります。

自社の状況に応じてプロ人材やスタートアップと柔軟に連携していくことが、オープンイノベーション

を最速で実現させるカギになります。

スタートアップとプロ人材の比較

スタートアップとの協業によるオープンイノベーション

続いてご紹介するのは、スタートアップとの協業によるオープンイノベーションです。

サムライインキュベート様は、VCとして創業期のスタートアップを多数支援してきたノウハウを活かし、スタートアップとの協業によって大企業のイノベーションを支援しています。ノウハウが社内にないという理由で事業開発が進まない現状の中、大企業とスタートアップが一緒に事業開発を進めることで、オープンイノベーションを最速で実現させているのです。

大企業で新規事業が生まれにくい理由

富樫氏による登壇の様子

外部連携は進んできたものの、なかなか事業が生まれない理由をサムライインキュベートTeam Leaderの富樫氏は2点指摘します。

1点目は、日本では製造業などひとつの事業に注力して伸びてきた企業が多いことから、最初から新規事業を絞りすぎることです。新規事業はどれが成功するかわかりません。様々なやり方でスピーディーにやってみることが重要です。

2点目は、スタートアップに任せきりになるなど、効果的に協業ができていないことです。社内でどう動くのか、どこを社外に任せるのかをしっかりと設計することが重要です。

大企業×スタートアップ協業事例

大企業とスタートアップの協業事例として、日本郵便様初の「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM」があります。

このプログラムでは、“多様化するライフスタイル、地域コミュニティにおいて、郵便・物流のラストワンマイルをテクノロジーで変革する。”というテーマにおいて、105社の応募から採択された4社がオープンイノベーション型で協業検討し、継続的に実証実験等を検討して進めています。

例えば、物流の最適化を手掛けるスタートアップによる人工知能を活用した配達ルートの自動化・効率化や、紛失防止デバイスを開発するスタートアップによる郵便配達を行いながら落とし物を見つける移動式通信インフラアイデアなどが採択されています。

このように、自社だけでは実現が難しいアイデアや技術などを取り込んでイノベーションを起こせるのが、スタートアップとの協業メリットです。

富樫氏は、オープンイノベーション成功のポイントとして、事業アイデアの模索といったできるだけ早いタイミングでスタートアップと協業するのが望ましいと話します。

まとめ:オープンイノベーションを最速で実現するには?

(敬称略)左からサムライインキュベート成瀬氏,サムライインキュベート富樫氏,サーキュレーション村上

セミナーでは、これまでサーキュレーションとサムライインキュベート様が手掛けた多数の事例から、オープンイノベーションを最速で実現させるコツなども紹介されました。

社内の巻き込みと熱意ある人材が重要

まず、両社がポイントとして挙げたのが社内の巻き込みです。オープンイノベーションと言いながら、そもそも社内を巻き込めていないケースが多いのが現状です。初期段階からキーパーソンをヒアリングで巻き込むなど、「自分ごと化」してもらう仕掛けが必要です。

また、成功している企業に共通しているのが熱意ある人の存在です。やらされているのではなく、ビジョンを持って自ら動く人が、イノベーションを成功に導くのです。

熱意のある人材を見つける方法として、社内での勉強会やイベント、ビジネスコンテストなども有効でしょう。

外部と協業する際はスピードが重要

また「最速」で実現する重要性も両社が強調したところです。スピードが重要な理由は、競合との競争にあります。いかに最速で事業を立ち上げ、検証していくかがポイントです。

そのためには、最初から社長決裁を取りに行くのではなく、小さい規模でトライアルを繰り返していく方がいいでしょう。

このように、オープンイノベーションを最速で実現するためには、いくつかのポイントがあります。

オープンイノベーションがなかなかうまくいかないという企業は、本記事を参考にプロ人材やスタートアップとの協業を考えてみてはいかがでしょうか。

なお、本記事はセミナーでお話しいただいた内容から一部を抜粋したものです。セミナーでは、ほかにもプロ人材やスタートアップの選定基準などたくさんのトピックスについてお話しいただきました。もっと詳しく聞きたい方は、次回の開催をご期待ください。