今やシリコンバレーでも当たり前になっているエクゼクティブコーチング。

インテルと同様に、Facebook、LinkedIn、Googleなどの企業でも、成長過程では、ディレクター以上の経営陣は、1対1のエグゼクティブコーチングを会社の経費で受けられるようになっています。コーチングを受けると、相手を自分の思うように変えようとするのではなく、自分の側の行動と人との接し方を変えることによって得られる、周りの変化に初めて気づくことができます。

前編に続き、後編でも、若手エンジニアやCTOも含めて、ベンチャーの中で実際に振り返りとコーチングによって、どのようにリーダーが気づき、組織力を向上させたのか、具体的な事例をみていきます。

トラウマに気づかせ、自信をもつ

起業家のDさんですが、過去にあった失敗の経験や、途中であきらめたり、夢が叶わなかったことがトラウマとなって、自分で自分に自信をもてない傾向がありました。

過去のできていることや、小さな目標を達成できたことを思い出してもらって、今日できる小さなことから実行してもらうことにしました。

その結果、6か月の間に、自信を持てるようになったことや、仕事に対しての心構え、学生への接し方などが 大きく変わったと実感したそうです。

決断を早くする。「周りに合わせる」タイプの経営者の変革

Eさんは当初はデザイン系ベンチャーのNO.2でしたが、コーチングを受けて自分が本来やりたかったことや過去の経験などをふりかえりました。そのあと、自分で動画教育系ベンチャーを起こし、多方面に活躍しはじめています。

Eさんは、非常に穏やかな性格なので、理想像は常にありつつも、日々の業務、日々の環境、他人の文化に合わせる傾向があり、本来の自分を見失っていたそうです。「そうだよね、俺ってそうだった」と頭ではわかっていましたが、第三者にヒアリングをしてもらうことで、客観視できて、改めて次なる行動へ繋がりました。

また他のエグゼクティブクラスの事例を交えることで、がんばろうと思っている自分にとって、腑に落ちる内容が多かったらしいです。決断スピードが上がったことと、気づきから決断、そして最終行動までの迷いが減りました。

自信をつける。若手エンジニアにとっての気づき

スタートアップに入社して2年目のF君は、最近かなり積極的にセミナーや勉強会に出たり、資格を取ったりしています。入社時はかなり頼りなさそうだったのですが。彼になぜコーチングが君にとって意味があるのかを聞いてみました。彼の答えは、「自分はエンジニアで、あまり人に自分の考えを話す機会がない。だから、目標やゴール、できていること、できていないことなどを質問してくれて、メモして目で確認できるのは貴重なんです。また、色々な会社のケースや、どうやって解決していけるかなどのアイデアも自分では思いつかないことを並べてくれるので、そこにも気づきがあります。」と話しています。

最初は控えめでしたが、自分にできる品質管理やオペレーション、会議の運営などの責任を積極的にとるようにもなりました。ずっとジムに通い、朝活をするようになってから、体の調子もいいそうです。自分ができていることに気づいて自信がついてきたようです。

効率だけでは、生産性が上がらない。「緻密すぎる」CTOの変革

ベンチャーのCTOのGさんは、「緻密に開発する」ことを信条として、バグがないように完璧にシミュレーションしているとのプライドを持っていました。そのために期間がかかり、新しい機能追加などに柔軟性がないとのCEOのフィードバックがありました。Gさん自身は、グローバル企業で高い実績を上げた方なので、非常に論理的で、無駄な行為をしたくない「現実型」でした。チャットで課題を解決できるので、打ち合わせもなるべくしないようなタイプです。

しかし、部下のエンジニアが退職したことで、マネジメントをもっと学びたいという意欲がありました。自分が尊敬する前職の開発部長が、部下のサポートをさりげなくしていたり、キャリアについての相談を受けたりしているのを思い出してもらい、自分もやってみると気づかれました。

コンサルタントとコーチの違い

よくある質問として、コーチングとコンサルティングの違いについて聞かれますがこれらは全く別物です。

コンサルタントは、課題の抽出、戦略の構築、実行計画など、成果をだすための分析をします。ただ戦略を実行できるかどうかは、当該組織のやる気、リソース、能力や市場環境などに依存するので、必ずしも実行できるわけではありません。戦略は正しいが、実行できなかった、あるいはリソース能力から正しい戦略ではなかったという場合があります。

コーチは、まず課題や、やるべきオプションについてクライアントの意志を確認します。クライアントが自分で実行できる自信のある、目標、行動計画、そして障壁などを考えてもらいます。その際に、クライアントが意識していない思考のカベの外の可能性や、過去のトラウマ、自分をしばっている成功体験などにも気づかせられるかが重要です。さらには、習慣化してもらうために必要な行動も含めます。

コンサルタントは、抜群の分析力、考察力と、クライアントよりも高い知見を要求されます。しかし、コーチはクライアントの知らない知識をかならずしも知っている必要はありません。客観的に、事実を伝えて、傾聴しながら、自信と勇気を与えて力づけることが一番重要なので。

次回は、もう少し、ベンチャーに対するコーチングのバリューについて、違った側面からお話ししたいと思います。

【専門家】板越 正彦

(マネジメントコーチ・事業開発メンター)新卒入社の石油化学会社でコテコテの国内営業を学んだ後、国連(UNESCO)、インテルと24年間グローバル組織でのリーダーシップを学ぶ。インテル在社(21年)中は、オペレーション部門全般(管理/経理/予算)から、技術標準・新規事業開発など15以上の職務を担当。2013年 インテル株式会社 執行役員事業開発本部長。2015年退社。
現在、ビジネスコーチ株式会社クラウド担当顧問兼エグゼクティブコーチ、ヒトクセ(リッチ動画広告ベンチャー)マネジメントコーチ つくば在住21年 九州大や、 筑波大学の起業家養成講座などで、講義をおこなっており、2015年は、筑波大学ヒューマンバイオロジー講座でもプロジェクトマネジメントを講義(英語)。IT、事業開発、ファイナンスという3つの職務経験から、コーチング・事業開発メンターなどを行う。「地雷」を未然に防ぎ、リーダーの成長を加速させることを使命とする。「気づきハック」というコーチングブログを連載している。

ノマドジャーナル編集部
専門家と1時間相談できるサービスX-bookを介して、企業の課題を手軽に解決します。業界リサーチから経営相談、新規事業のブレストまで幅広い形の事例を情報発信していきます。