世界を変える最新のテクノロジーは、AIだけではありません。AIと同様に、これから必ず世の中に欠かせない存在となるであろう、4つのテクノロジーがあります。ビジネスにおいてもトレンドとなっており、各社が競って研究開発を進めている、これらテクノロジーを紹介します。

【IoT】

モノのインターネット、それがIoT(Internet of Things)です。これまでインターネットには、パソコンやスマホ、タブレットから接続するのが一般的でした。けれど近年、それ以外のモノからも接続が可能になるIoTが、急速に普及しています。

 

では「それ以外のモノ」とは、具体的に何でしょうか。自動車、住宅、産業用機械など大きなものから、家電製品、腕時計、メガネ、ごみ箱、監視カメラ、猫の首輪、植木鉢など身の回りにあるもの、そして道路や公共交通機関などの社会インフラまで。まさにあらゆるモノがインターネットに繋がりつつあるのです。

 

IoTが注目されている理由として、インターネットを通じてデータを収集し、活用できることが挙げられます。

 

建設機器業界に大きなインパクトをもたらした、「KOMTRAX」(コムトラックス:コマツ製作所が開発)というシステムがあります。GPSや通信システムが搭載されており、このシステムによって、パワーショベルなどの建設機械がインターネットと接続します。すると、機械の位置や稼働時間、各部の状態などをデータとして可視化できるのです。

 

そのデータをもとに、どのくらいの時間稼働したら、どの部分にどのくらいの負荷がかかるかを把握でき、メンテナンスの適切なタイミングが分かるというわけです。また機械の稼働状況や稼働時間をもとに、効率的な運用計画も立てられます。これこそがIoTの最大のメリットで、あらゆるモノの動きを数値化・分析し、それをもとに最適化できるのです。

 

ほかにも、以下のようなIoT活用の例があります。

 

◎メガネに搭載したセンサーが、瞬きの回数や目の動きから、健康・精神状況を分析する
◎芝生や畑に設置されたスプリンクラーが、日照や気温、天候、水分、土の状態などを分析し、最適な量の水をまく

 

今後ビジネスはもちろん、私たちの日常生活、そして都市計画や公的サービスまで、IoTが深く関わっていくことは間違いないでしょう。

【VR(仮想現実)】

宇宙空間に行ったり、映画の世界に入り込めたり、憧れのアイドルに超接近できたり……現実ではありえないことを現実にしてしまう技術、それがVR(virtual reality)です。ユーザーはゴーグルなど専用の機器を装着することで、人工的に作られた3次元の空間に入る(厳密には入ったように錯覚する)ことができます。

 

その世界では思い通りに行動することも可能で、例えばアイドルのコンサートを目の前で見ながら、ノリノリではしゃぎ、実際の会場にいるような楽しみ方をすることができます。一方で、VRを用いたゲームなどでは、仮想空間での出来事が身体に反映されるものもあります。例えばゾンビが追いかけてきて、攻撃を受けたら身につけたセンサーが振動したり、目の前が真っ赤になったり、強風が顔に吹いてきたり、といった具合です。

 

現在は視覚や聴覚に訴えかける演出が主流ですが、味覚や嗅覚に働きかける技術開発も進められているそうです。自分の部屋にいながら、世界各国の珍しい料理の味や香りをVRで楽しむ……そんな体験ができる日も来るかもしれません。

 

VRはゲームや映画、ライブなどのエンタメ分野で使われることが多いですが、それ以外の応用も進んでいます。例えば不動産業界では、部屋を借りたいお客さんが、希望物件の内見を家にいながらできます。医療業界では、医学生が手術の様子をVRで見学したり、現実に近い形で人命救助の訓練をしたりできるのです。

 

VRの市場は、2015年に約400億円でしたが、2021年までに約1兆円にまで拡大するとみられています。

【フィンテック(FinTech)】

ファイナンス(金融=Finance)とテクノロジー(技術=Technology)を掛け合わせた造語がフィンテックです。定義としては、ICTを活用した金融商品やサービスの総称です。これまで金融業界がほぼ独占していた市場に、ビジネスチャンスを見出したIT企業などが参入し、便利なサービスや商品が続々と誕生しています。

 

私たちの身近なところでは、suicaなどの電子マネーや、ApplePayなどの決算サービスもフィンテックです。ほかにどのようなものがあるのか、見ていきましょう。

 

■PFM(Personal Financial Management:個人資産管理)

一般的には銀行や証券、保険など複数の口座情報を集約して一元的に管理できるオンラインサービスを指し、家計簿アプリもそのひとつです。650万DLの人気アプリ「Zaim」は、銀行やクレジットカードと連携させることで、支出(いつ、何に、幾ら使ったか)、収入(いつ、どこから、幾ら入金があったか)のデータが自動取得されます。現金で支払いをした場合は、レシートを撮影すると、自動で品目や金額が追加されます。こうして取得したデータをグラフ化し、無駄な出費の見直しなどに繋げることができるのです。

 

■ロボ・アドバイザー

AIが資産運用のアドバイスをしてくれるサービスです。これまで資産運用といえば、証券会社や銀行の担当者が分析や提案をアナログで行っていました。しかし、金融商品の値動きを瞬時に察知し、データに基づいて最適な運用を行うのは、AIの最も得意とするところです。人件費が削減された分、低い手数料で、気軽に資産運用を行えるのが特徴で、メガバンクやネット証券、ベンチャー企業などが次々に参入しています。

 

■マーケットプレイス・レンディング

融資を受けたい人と、融資したい人をインターネット上で仲介するサービスです(P2Pレンディングと同義)。融資を受けたい方は、希望額、利用目的、事業内容、売上げ状況などを入力の上、申請します。それを見て、貸してもいいという人が現れれば、融資が成立となります。なお、金利は希望者の状況に応じて決まります。このサービスによって、金融機関から融資を断られた人や企業も、スピーディに資金調達できるチャンスと巡り合えるのです。

 

■モバイルPOS

スマートフォンやタブレットといったモバイル端末を用いて取引処理を行う仕組みで、POS端末として決済が行えます。それ以外にも、顧客管理や売り上げ分析など、小売店に必要な機能が実装されています。普通に購入すると、数十万~百万円以上かかるPOSレジの導入コストを抑え、省スペースで簡単に使えるのが特徴です。

【ブロックチェーン】

最後に紹介するのはブロックチェーンです。これは一言でいうと、仮想通貨「ビットコインの取引履歴」です。ビットコインはインターネットを介し、簡単に送金することができます。便利な一方で、インターネット上の取引のため、悪意を持った者の標的にされやすい。そこで開発されたのが、二重支払いやデータの改ざんといったトラブルを防止し、安全性を確保するためのシステム・ブロックチェーンなのです。

 

世界に存在するビットコインの所有者情報と、あらゆる取引履歴は、個人のコンピュータを介して全ての人に公開・共有されています。その取引履歴が情報のブロックを作り、鎖のように次々と連なっていくため、ブロックチェーンと呼ばれています。

 

取引履歴は、どこか一か所に集約されているわけではありません。コンピュータ同士を網の目状に繋いで管理されているので、外部からの攻撃にも強さを持ちます。改ざんはほぼ不可能で、利用者は安心して取引ができるのです。

 

このブロックチェーンの技術を用いることで、セキュリティコストを格段に下げられることから、金融取引や資産管理、契約書の締結など、などさまざまな分野への応用が進められています。

ライター: 肥沼 和之

大学中退後、大手広告代理店へ入社。その後、フリーライターとしての活動を経て、2014年に株式会社月に吠えるを設立。編集プロダクションとして、主にビジネス系やノンフィクションの記事制作を行っている。
著書に「究極の愛について語るときに僕たちの語ること(青月社)」
フリーライターとして稼いでいく方法、教えます。(実務教育出版)」