外国人労働者の受け入れメリットのひとつとして、「グローバル人材を採用できる」ことが挙げられます。「グローバル人材」の定義は人と場合によりますが、英語でビジネスすることができ、さまざまな文化背景を持つ人と問題なくコミュニケーションがとれるという2つの要素は必須と言えるでしょう。

日本は特に英語を使うことが出来るビジネスパーソンが少なく、「国際競争に遅れをとる」と懸念されています。そのため、「英語を話すことが出来る外国人を雇おう」というのは、ある意味合理的で当然の流れです。

ですが、「日本人が英語を話せないから英語を話せる外国人を呼ぶ」ことによって、日本は本当に国際競争を生き抜くことができるのでしょうか。

英語力が依然として低い日本

日本人の英語力は、教育水準に対してとても低いといわれています。EF EPI(EF ENGLISH PROFICIENCY INDEX)では、日本の英語力は72か国中35位に位置づけられています。能力レベルは「低い」。34位のロシアと36位のウルグアイの間で、インド(22位)や韓国(27位)、香港(30位)、ベトナム(31位)、インドネシア(32位)、台湾(33位)のアジア諸国に遅れをとっています。

日本に行ったことがあるドイツの友人は口をそろえて、「日本人は英語が話せない」と言います。道端で駅の場所を尋ねただけで「No English」と言われて逃げられたり、ホテルの受付ですらまともに英語を話せる人がいなかった、などの経験を話してくれました。

友人たちは、「日本に来ているから英語を話せないからといって文句を言うつもりはない。でも、イエスかノーで答えられる簡単な質問ですら英語を話すのを嫌がるのはどうなのか」と首を傾げていました。

この記事を読んでくださっている方のなかにも、「いざ英語を話すとなるとどうしたらいいかわからない」「英語に興味はあってもいきなり話しかけられたら困る」と言った方も多いかと思います。

「日本にいるのだから英語は必要ない」という考えが悪いわけではありませんし、日本人全員が英語を話せる必要もないでしょう。ですが、グローバル化した世界では、「英語」が出来ないと、文字通り話にならないのです。

わざわざ日本に来るグローバル人材はいるのか?

そのため、「では英語が出来る人材を外から呼ぶ」という解決策に魅力を感じるのは当然と言えます。

事実、『2013年度グローバル人材白書』では、「2012年1月1日 時点でのグローバル人材量は1,687,871人と算出され、企業全体の総常用雇用者数(2012 年初推計値)39,460,504人の4.3%」とされているものの、5年後である2017年の予測としては、「グローバ ル人材需要量は4,118,562人とされ、全雇用者数の8.7%となり、2012年と比較すると2.4倍」になるとされています。

当時からしたら5年後である現在、たしかにグローバル人材、端的に言えば「英語ができる人」は多くの場面で求められています。ですが日本企業がそういった人材を受け入れられる状況かというと、疑問を抱かずにはいられません。

本連載の第7回で取り上げたのですが、グローバル人材といっても、日本語が出来るのはもちろん、日本人と同じような協調性を持ち、日本の社会常識を理解している外国人が求められることがほとんどです。

「英語を話せるグローバル人材」を求めておきながら、「日本に適応した人材であるべき」というのは矛盾しています。

英語を話せる人材は、どの国でも仕事を探すことが出来ます。わたしはドイツ在住なのですが、ドイツ人は英語が出来る人が多いので、ドイツにこだわらずに就職活動している人がたくさんいます。

どの国でも仕事することが出来るグローバル人材が、わざわざ日本に来るのでしょうか?

たしかに来てくれるのであれば、日本にとってはありがたいでしょう。ですが日本へ来るグローバル人材は、「ほかの国で就職できるにも関わらず長時間労働大国の日本で働く意思があり、その上で日本語を理解し日本における社会性を身につけた人」という、とても貴重、というより奇特な人に限られるのです。

そんな状況で「海外から日本語を話せる人材を呼ぼう」というのは、直裁に言えば身の程知らずですし、見通しが甘いです。

日本語を話せる外国人よりも英語を話せる日本人

そもそも、「日本人は英語ができないから英語ができる人材を呼ぶ」という考え方の出発点からしてまちがえているようにしか思えません。

英語は、決してむずかしい言語ではありません。世界中で多くの人が操れるのですから、日本人だからと言って使いこなせない特殊言語というわけではないのです。それなのに、できないことを前提としているのは情けないです。

英語が話せる+日本に順応できる外国人を探すくらいなら、英語が話せて異文化をリスペクトできる日本人を育てる方が国益になるのではないでしょうか。

日本はもう少し、「自力で解決する力」を培うべきです。人口が減ったから外国人を呼ぶ、労働人口が足りないから外国人を呼ぶ、英語が話せないから外国人を呼ぶ、というのは、いささか短絡的すぎます。もっとほかにも、出来ることがあるはずです。

海外からグローバル人材を呼び寄せることが悪いとは思いません。ですがそれは、もう少し日本国内で努力をしてからであるべきです。

英語が話せない日本人が多いとわかっているのだから、英語が話せるようになる授業をすればいいのです。その方法がわからないのなら、海外から講師を招いたり現地視察をして日本にも取り入れればいいでしょう。

「日本人は英語が話せない」を前提にして外国人を頼るのではなく、「どうすれば日本人は国際競争に参加できるか」を第一に考えるべきではないでしょうか。

取材・記事制作/雨宮 紫苑

ノマドジャーナル編集部
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