最近、いつ「外国人」に出会いましたか? 日本は地理的にほかの国と距離があり、「外国人」というと、ついつい特別な存在だと思ってしまう人もいるかもしれません。ですが、外国人は、すでに身近な存在になっています。

日本に住んでいる外国人労働者は、年々増加しています。厚生労働省の発表によると、2016年10月、外国人労働者はついに100万人を超えました。技能実習生は21万人超え、留学生は20万人超えとなっています。

多いと見るか少ないと見るかは人それぞれですが、少なくとも、「日本には日本人しかいない」状況ではなくなっているのです。

増加し続ける外国人労働者

厚生労働省の『外国人雇用状況の届出状況』によると、2008年10月末の時点で、外国人労働者数は約49万人いました。2010年は65万人、2013年は72万人と増加を続け、2016年には108万人を記録しました。この8年間で、日本で働く外国人労働者の数は、倍以上増加したのです。

わたしはドイツ在住なのですが、去年一時帰国をしたときに、お台場のショッピングモールに買い物に行きました。とあるブランドショップの店員が、半分以上がアジア系の外国人だったことに驚いた記憶があります。その方たちは、難しい専門用語もしっかりと理解し、日本人よりも正確な敬語を操り、丁寧に接客してくださいました。

日本には相対的に外国人が少なくはありますが、外国人労働者は、すでに身近な存在になってきています。あなたがもし都市部に住んでいるのなら、意識していないだけで、周りにも多くの外国人労働者がいるかもしれません。

外国人の増加率や政府の方針からして、これからも外国人労働者の受け入れは拡大していくでしょう。ですが日本は、外国人労働者の受け入れについて、もっと慎重に検討すべきなのではないでしょうか。

受け入れを拡大するにせよ規制を厳しくするにせよ、もっと現実を直視し、しっかりと議論すべきです。日本はあまりにも、外国人労働者を「都合のいい存在」と位置づけているような気がしてなりません。

猫の手ならぬ「外国人の手」を借りたい日本

政府は、労働力不足を補うために、外国人労働者に注目しています。たとえば、介護士が不足している状況を踏まえ、外国人労働者が訪問看護サービスに従事することを許可する方針を決定しました。

また、都市部への人口流出が進み、人手が不足している農業の分野でも、外国人労働者の受け入れを検討しはじめています。東京オリンピック開催に向け、建設業での人材不足も懸念されています。特定の職種では、猫の手も借りたい状況なのです。

そんな現状を踏まえ、議論の的となっているのが、「外国人労働者の受け入れ」です。日本は全体的に、移民の受け入れには慎重で、否定的な風潮が根強くあります。ですが外国人労働者に関しては、「労働力として日本に貢献してくれるのであれば、受け入れを拡大してもいいのではないか」と理解を示す人は少なくないでしょう。

もちろん、「文化的ちがい」や「言語の問題」なども議題にあがりますが、「外国人労働者」に対しては、比較的理解があるように思えます。理解、というよりは、「仕方ない」という認識かもしれません。事実、一部の職種では労働力が足りていないのですから。

ですがこの考えは、いかに日本が外国人労働者の受け入れを現実的に受け止めていないかを示しています。問題は、外国人に日本での滞在許可を出せば、生活拠点が日本になり、祖国の家族を呼び寄せ、定住化する人が多いかということです。

外国人労働者の定住化問題

2015年、厚生労働省の調査によると、外国人労働者の在留資格は、「身分に基づく在留資格」が40.4%とトップになっています。「身分に基づく在留資格」とは、永住者、日本人の配偶者、永住者の配偶者、定住者などが当てはまります。つまり外国人労働者の多くは、「生活や人生の拠点を日本としている人」ということになります。

「身分に基づく在留資格」を持っている人は、就労制限がありません。この統計からは、「身分に基づく在留資格」がある人が働きだしたのか、働いてからその在留資格を取ったのかはわかりません。

ですが、外国人労働者の4割が「日本を拠点にしている」ことから考えると、外国人労働者の受け入れは、外国人の日本定住化につながり、移民として日本で暮らし続ける可能性が十分にあるといえます。

外国人労働者というと、「日本に出稼ぎに来て、カネが貯まったら祖国へ帰る」というイメージがあるかもしれません。ですが実際は、日本を生活拠点にする人が多数派なのです。

人口が減り、労働力が不足するなか、外国人を呼ぶという発想自体がまちがえているとは思いません。ですが、外国人労働者を受け入れるということは、彼・彼女たちが日本で長く暮らし、日本で生きていく可能性が十分にある、ということを理解しなくてはいけません。

そう考えると、外国人労働者の受け入れについて、もっと慎重に考えなくてはいけないということが分かると思います。外国人というと特別視しがちですが、同じ人間です。都合のいい時にだけ呼んで、必要がなくなったら国に帰ってくれというのは、傲慢です。

外国人労働者を受け入れるのであれば、移民として日本に受け入れる覚悟がなければいけないのではないでしょうか。

外国人労働者の受け入れ拡大に関して、政府や企業が、どれだけその覚悟を持っているのでしょう。ヨーロッパやアメリカなど、多くの外国人が暮らす国での現地民との摩擦は耳にしているはずです。

それでも、外国人に頼るべきなのでしょうか。受け入れを拡大する前に、もっと現実的に議論する必要があります。

取材・記事制作/雨宮 紫苑

ノマドジャーナル編集部
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