本連載も、次回で最終回となりました。総括は次回にまわすとして、今回は「外国人労働者への都合のいい幻想は捨てよ」と強く主張したいと思います。

 

本連載では、外国人労働者受け入れに対しての賛否には、あまり触れてはきませんでした。というのも、現実を知らなくては、賛否を語ることはできないからです。

 

外国人労働者の受け入れとはどういうことなのか。日本は受け入れるべきか否か。自分なりにその答えを見つけるために、外国人労働者とはどういう存在なのか、最終回前にもう一度しっかり考えてみましょう。

外国人労働者の来日目的は日本への貢献ではない

外国人労働者は、なぜ日本に来るのでしょうか。それは日本が好きだからでも、ましてや日本に貢献するためでもありません。かんたんに言えば、ただの出稼ぎです。あくまでビジネスチャンスのために来日しているのです。

 

たとえば、あなたがキャリアアップするためにアメリカへ渡ったとして、アメリカがそんなあなたを「外国人労働者としてアメリカに尽くすだけ尽くしてその後は帰国してくれ」と扱ったらどう思うでしょうか。「そんなの知らない、自分は自分の仕事のために来たんだ」と思いませんか?

 

第5回で紹介しているように、外国人労働者の来日理由は「就労機会が多いから」が88.2%で、2番目に多い「賃金」が20.9%という結果になっています。来日した外国人労働者は、自国では満足な仕事が見つからないから日本に来ているに過ぎません。

 

逆の見方をすれば、その人たちにとっては、就労機会があるのならば日本以外の国でもかまわないのです。最近のアジア諸国の経済成長は目覚しいものがあり、日本と同じ水準の生活や給料が手に入る国があれば、外国人労働者はそちらへと流入するでしょう。

 

つまり、日本がいつでもいつまでも「選べる側である」という思い込みは禁物なのです。あくまで受け入れる国の「労働力不足の解消」と労働者の「就労機会を得られる」というマッチングにより、「外国人労働者受け入れ」は成り立つのです。

外国人労働者受け入れのデメリット・リスクも考慮

何度も繰り返していますが、外国人労働者の受け入れ自体が悪いわけではありません。ですが、外国人労働者は短期的に労働力不足を解消してくれるかもしれませんが、受け入れによるデメリットやリスクは小さくありません。

 

外国人労働者を受け入れるのであれば、必然的にそのデメリットやリスクを背負う義務も生じます。

 

いかにそのデメリットやリスクを抑えられるか、そして日本の利益はもちろん、外国人労働者ができる限り大きな利益を手にできる戦略的受け入れができるかが、外国人労働者受け入れの大きな鍵となります。

 

詳しくは第15回で紹介していますが、外国人労働者の受け入れを積極化させたとして、規制緩和により就労しない・できない外国人の流入や、日本での失業、もしくは十分な給料を得られずに公的支援に頼る外国人、日本語が話せない両親のもとに生まれた子どもの教育など、多くの「起こりうる問題」が予想されます。

 

こういったデメリットやリスクは、欧米諸国を見ていれば一目瞭然です。異物である「外国人」を受け入れるということは、本来起こり得なかった多くの問題を引き起こすのです。

 

それは、単に「外国人労働者が悪い」という話ではありません。そういった問題は「起こりうるもの」として、いかにマネージメントするかという戦略が必要なのです。その戦略が機能しなければ、日本は日本らしさを失い、社会には大きな混乱が起こるでしょう。

外国人労働者への都合のいい幻想は捨てよ

外国人労働者は、都合のいい救世主ではありません。日本がピンチのときに現れ、さっそうとピンチから救い、その後何も言わずに立ち去るヒーローではないのです。

 

規制を緩めて外国人労働者を積極的に受け入れたら、日本での需要とは関係なく、日本で働きたい人がやって来るでしょう。労働力不足はたしかに解消・緩和されるでしょうが、その後定住すれば、移民として日本で暮らし続けることになります。

 

現に、第2回で紹介しているように、外国人労働者の在留資格の4割は永住者、日本人の配偶者、定住者となっています。

 

「外国人労働者と移民はちがう」という詭弁は通用せず、移民の増加によって、文化的摩擦や宗教的問題、言語問題など、現代の日本では馴染みのない新たな社会問題が発生します。

 

欧米の国々を見ればわかりますが、移民と現地民は、多かれ少なかれ対立するものなのです。それは価値観が大きくちがうため、当然のことです。移民の受け入れには、戦略的・長期的な視点が必要不可欠なのです。

 

外国人労働者を短期的な出稼ぎ労働者として見るのではなく、これから日本に定住する移民として、もう一度考え直すべきなのではないでしょうか。また、こういったデメリットやリスクを踏まえ、「人材の国内での自給自足」のためにできることを検討することも選択肢のひとつでしょう。

 

日本は、外国人労働者への都合のいい幻想は捨て、外国人労働者は何をもたらすのか、もう少し現実的に未来予測しなくてはなりません。現実を踏まえてはじめて、外国人労働者の受け入れの賛否を考えることができるのです。

 

取材・記事制作/雨宮 紫苑