モバイル機器の急激な普及を始めとする技術の発展とともに、「ヘルスケア」分野は、成長著しい分野としてますます注目度が高まっています。

しかし、「ヘルスケア」は人の生命にかかわる分野であるからこそ、法規制の内容が厳しい側面もあり、そのため、関連する法規制やその特性を踏まえた適切なサービスを設計する必要があります。

ヘルスケア分野では、医師法、医療法、薬剤師法、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法。従前薬事法と略されていた法律が名称も含めて改正されたことにより、薬機法と略されるようになりました。)など、様々な法律が関連してきます。また、ヘルスケア分野では、厚生労働省からの通達に従った運用がなされる傾向が強くありますので、このような通達にも配慮する必要があります。

そこで、今回は、4回にわたってヘルスケアベンチャーにおいて法律上よく問題となるポイントを紹介していきます。

前回はこちら。

しっかりと整備しておきたい利用規約

⑩利用規約の重要性

ヘルスケアに限った話ではありませんが、サービスを提供する場合には、しっかりと利用規約を整備することが重要です。

利用規約の目的には、大きく分けると、(i)法的拘束力のある契約を成立させる目的、(ii)規制との関係で法律関係を明確にする目的、(iii)ユーザーからのクレーム等に対応する目的の3つがありますが、この3つの目的は、医薬品のECであっても、医療情報のキュレーションであっても、妥当するものです。

したがって、通常の利用規約の場合と同様、ユーザーの禁止行為や免責規定を盛り込んだ利用規約を整備しておくことが重要となります。利用規約作成のポイントについては、こちらの記事などをご参照下さい。

⑪消費者契約法について

この点も、ヘルスケア分野プロパーの問題ではありませんが、利用規約を作成する上では、消費者契約法に注意しなければなりません。

消費者契約法は、(i)事業者の損害賠償責任を全部免除する規定、(ii)事業者に故意または重過失がある場合にその賠償責任の一部を免除する規定、(iii)損害賠償額に不当に低い上限を設ける規定、(ⅳ)消費者の利益を一方的に害する条項を無効としています。

したがって、一切賠償責任を負わないとする規定や事業者の賠償責任の範囲を著しく制限する規定は、法律上、無効と判断されてしまうリスクがあります。

ただし、このような免責規定があることにより、ユーザーからのクレームを素早くさばくことができるケースも少なくありません。

また、実際に裁判まで発展するケースは少なく、トラブルが起きたとしても裁判外で交渉にとどめるケースが多いため、このような免責規定を定めておくことも不合理ではないと考えます。

メッセージ機能やチャット機能はありますか?

⑫電子通信事業の届出を忘れずに

インターネット上において、1対1でメッセージをやりとりできたり、チャット機能をもっているサービスの場合、電気通信事業法の届出が必要になる可能性があります。

届出が必要か否かの判断は「電気通信事業参入マニュアル」に詳しく書いてありますが、上記のようなメッセージ機能がある場合、届出が必要になると考えて頂いておおむね問題ありません。

この届出は結構忘れがちになるものですが、このようなサービスの提供を予定している場合には忘れずに届け出るようにしましょう。

サービスの適法性を確認するには?

⑬グレーゾーン解消制度とは

グレーゾーン解消制度」はある事業が特定の法律に違反していないかを国に確認できる制度です。

グレーゾーン解消制度は、「新事業活動」を行おうとする者であれば、基本的に誰でも利用することが可能です。

したがって、サービスの適法性を確認したい場合には、利用を検討されてみてはいかがでしょうか。

もっとも、グレーゾーン解消制度は、あるビジネスがあらゆる法律に照らして問題がないかを網羅的に確認してくれるわけではありませんので、確認の際には「○○法第○条第○項」など、法令等の条項を特定した上で行う必要があります。

また、回答までにある程度時間がかかる上、「グレーゾーン解消制度」を利用した結果、規制対象になるという結論が明らかになることもあります。

なお、筆者の所属事務所では、ビジネスモデルを無料で審査しています。30分程度のヒアリングで行う簡易なものですが、「グレーゾーン解消制度」のように特定の条項に限定して審査を行うわけではなく、また、「グレーゾーン解消制度」と比較すると回答までの期間も短いため、ご興味があれば、サイトをご一読頂ければ嬉しく思います(http://www.azx.co.jp/modules/business/)。

以上が、4回にわたる、ヘルスケアベンチャーにおいて、よく法律上問題となるポイントについての解説となります。

本文中でも解説しましたが、例えば第1回の医業とは何か、遠隔診療が認められる範囲など、ヘルスケア分野においては、法令上、いまだにグレーと判断せざるを得ない領域が多くあります。

したがって、実際に、サービスを検討される際には、その適法性をグレーゾーン解消制度で確認してみたり、当分野に詳しい弁護士にご相談されることをおすすめします。

専門家:長尾 卓(AZX総合法律事務所 パートナー弁護士) 
ベンチャー企業のサポートを専門としており、ビジネスモデルの法務チェック、利用規約の作成、資金調達、ストックオプションの発行、M&Aのサポート、上場審査のサポート等、ベンチャー企業のあらゆる法務に携わる。特にITベンチャーのサポートを得意とする。趣味は、バスケ、ゴルフ、お酒。

専門家:小鷹 龍哉(AZX総合法律事務所 弁護士)
弁護士になって以来、適法性チェック、各種契約関係法務、ファイナンスサポートなどを通じて、ウェブサービス、スマートフォンアプリサービス等をメインとするベンチャー企業の挑戦を幅広くサポートしている。特にファイナンスに強い。

ノマドジャーナル編集部
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