フリーランスになってから明らかに変化したものの一つが体重だ。2015年夏にフリーになってから、約2年。その間に10キロ近く増量してしまった。

 

原因というか言い訳についてはいくつか考えられるのだが、最たるものはやはり運動不足だろうと思う。しょっちゅう取材に出歩いているとはいえ、動き回りながらテキストを書くわけでもなく、じっと机に向かっている時間が多いのは事実だ。

 

20代の半ば頃から体重が断続的に増え続けた。社会人になってからの10年間でプラス20キロ。そしてフリーになってからの2年でさらに10キロ。これはさすがにまずいと、自分でも強く思うのだが……。

 

太り続けても、客観的に厳しく指摘してくれる人はいない

以前、取材で知り合ったとある経営者に体重のことを本気で詰められたことがある。俺もそうだった、というのだ。

 

個人事業主になると、日常のこまかい変化に気づいてくれる人がいなくなるんだよ。会社員時代は『最近太ったんじゃない?』なんてよく同僚に指摘されていたでしょ? あれは家族に言われるのとはまた違うプレッシャーになるんだけど、それがなくなっても自分を客観的に見続けられるかどうかが勝負でな……」

 

その経営者は、会社員を辞めた後の数年間、フリーランスとして過ごしていた時期があるそうだ。そして僕と同じように太り続け、40代を迎えたのを機に本気で肉体改造に励んだのだとか。

 

フリーランスは独りよがりになりがちな生き物だろ? 良いことも悪いことも、判断するのはすべて自分だから。健康管理については、会社員以上にずっと気をつけなきゃいけないんだよ

 

確かに会社員時代には定期健康診断があり、忙しかろうが何だろうが強制的に参加させられ、年に1回は必ず自分のリアルを突きつけられていた。幸いにして僕の場合は病気が見つかることはなかったが、自分では気づけない体の異変を発見してもらえる貴重な場だった。そして件の経営者が言う通り、太り続けていれば必ず誰かが厳しく指摘してくれていたのだった。

 

油断につながるフリーランスの「独りよがり」

まあ僕の場合はフリーランスになる前からずっと太り続けているわけで、根本的に生活習慣が良くないのだろう。それでも会社員のときよりは随分マシになったものだと思っていた。夜遅くまで仕事をして深夜に食事をしたり、毎晩のように飲みに出かけたりすることがなくなったからだ。

 

いや、そう思って油断していたことが大問題だったのかもしれない。日々の仕事での運動量が落ちているから、多少生活習慣が改善されたとしても、総合的にはマイナスになっていたのかも……。こうやって勝手に判断してしまうことが、「フリーランスの独りよがり」ということなのだろう。

 

リアルの世界で僕のことを知っている人がこの文章を見れば、まず「そんなことをつらつら書く前にダイエットしろよ」というツッコミが入ると思う。

 

ちょっとはやってみたこともあるのだ。今年の2月、「早起きして運動しよう!」と一念発起してランニングアイテムをそろえた。実際に朝5時に起きて1時間ほどのウォーキングを始めた。2日目にはたるみきった体に鞭を打って少し走ってもみた。同時に食事の内容にも気を遣い、糖質を制限した。ところが3日目に風邪を引き、扁桃炎が腫れてしまって1週間近くダウンすることに。ランニングアイテムはそれから眠ったままなのだ。

 

今度こそやります。この原稿を入稿したら、今度こそ……。

 

フリーランスの健康を支援する仕組みも、ちゃんと用意されている

先日、尊敬するライターさんから久しぶりにメールが来た。僕より20ほど年が上の大先輩だ。そういえば以前に飲む約束をしていたのだが、突然キャンセルになってしまい、それきりだった。

 

「あのときはすみません。実は脳梗塞をやってしまいました。幸い命に別状はなかったんだけど、半身にしびれがあって滑舌も結構やられた。取材がちゃんとできない、PCを打つのも時間がかかるという状況になってしまって、今は少しずつリハビリをしているところです」

 

分かってはいるつもりでも、直面するまで気づかない。それが健康の大切さなのだろう。これは他人事などではなく、単に「1日も早い回復をお祈りしています」とメールを返して終わる話でもなく、僕自身の今後の生き方を考えさせられる出来事だった。

 

フリーランスの健康管理は重要な問題だということで、自治体も支援してくれる。僕が住んでいる自治体では会社員の定期健康診断に相当する「30代健康診査」というものがあり、年に2回、6月と9月に各1日ずつ、受診の機会がある。ちゃんと仕組みはあるのだ。

 

フリー1年目だった昨年は6月に予約していたのだが、直前で取材のアポイントが入ったためキャンセルしてしまった。その旨を伝える電話で「次は9月にありますのでぜひ受診してくださいね」と念を押されたのだが、仕事の都合を優先してしまい、結局9月も、そして今年の6月も受診しなかった。

 

次の機会は今年の9月。もちろん予約した。忙しくなりがちな月末日の設定だけど文句を言える立場ではない。何が何でも、這ってでも行くつもりだ。それまでにはちゃんと体重を落として。

ライター:多田 慎介

フリーランス・ライター。1983年、石川県金沢市生まれ。大学中退後に求人広告代理店へアルバイトとして入社し、転職サイトなどを扱う法人営業職や営業マネジャー職に従事。編集プロダクション勤務を経て、2015年よりフリーランスとして活動。個人の働き方やキャリア形成、企業の採用コンテンツ、マーケティング手法などをテーマに取材・執筆を重ねている。