首都圏への人口・商業施設の集中からの脱却を図る「地方創生」が叫ばれる中、地方の企業はどのように先代からの伝統を引き継ぎながら、新たな事業展開を図っているのでしょうか?そこで、北海道札幌市に住む筆者が北海道の企業の社長に「地方創生」について伺っていきます。

北海道のプロバスケットボールチーム・レバンガ北海道。その代表兼選手の折茂武彦さんに、前編ではオーナーになるまでの生みの苦しみをお伺いしました。後編では、株式会社になってからのここ3年間について伺いました。

一般社団法人から株式会社へ。設立9年目で初のプレーオフ出場……チームはすぐには強くならない

Q:レバンガ北海道の運営母体が株式会社になってから3年が経過しました。

折茂 武彦氏(以下、折茂):

一般社団法人時代も理事長だったので、トップはトップだったのですが、会議を開くにも理事の方々がほかの仕事をしているのでなかなか集まることができず、スピード感に欠けていました。株式会社にしてからは、スピードに関しては早まったと思います。ただ、それですぐにチームが強くなるほど甘い世界ではありません。企業チーム時代は優勝するのに9年かかりましたけど、レバンガは9年目で初めてプレーオフに出場するのがやっとです。若手の成長もあり、光が見えた今シーズンで一段階上がったのは間違いないのですが、まだまだこれからですね。

Q:5月2日の試合では、レバンガ北海道の観客動員数のレコード(5,661人)を打ち立てました。

折茂:

北海道という場所は、プロのバスケットボール選手にとっては本当にやりがいのある場所です。どの場所に顔を出しても『頑張ってね』『ケガ大丈夫?』と声をかけてくれます。チームが勝てば喜んでくれますし、負ければ励ましてくれる。こういう場所はなかなかないんですよ。あと大きいのは、メディアの方々の取り上げ方ですね。野球・サッカーと同列に扱ってもらえるのは、本当にありがたいです。私がプロにこだわっていたのは、バスケットボールでも野球・サッカーと同じレベルになれることを証明したかったというのもあるので、そういう意味でも応援してくれる人のために頑張らないと、そして裏切ることはできないという気持ちですよ。全財産投げ打ってでも自分がやるんだと。『出会い』と『人』が自分の人生を変え、それらを経てこのチームが存続できていると思います」

Q:その5月2日といえば、悪性リンパ腫の闘病中だった佐藤竜弥さん(5月25日逝去)が1日入団しました。

折茂:

竜弥はレバンガの選手の先輩でもあるんですが、実は大野篤史(当時広島ドラゴンフライズ、現千葉ジェッツ)から『5月1日に広島とレバンガの試合の時なんですが…』という相談があったんです。その内容としては、竜弥が今闘病中なので励ますためにも何かできないかと。私は竜弥と対戦経験があった(佐藤さんは教諭を務める傍ら札幌市役所の企業チームに所属していた)ので、彼が北海道のバスケットボールにどれだけ貢献していたかも知っていたのですが、今そのような状況にあることを初めて知って。そこで、会社とも話し合って、NBLにも了解を取ってホーム最終戦の5月2日に1日入団してもらうことにしました。大野も「最終戦の方がいいかもしれないですね」と了承してくれました。異例中の異例の出来事でしたが、バスケットボール人として彼を励ましたかった、これに尽きます

プロバスケットボールチームのモデルケースを目指す

Q:現在、そしてこれからの地域貢献についてはどのように考えられていますか?

折茂:

私たちはバスケットボールチームなので、やはりバスケットボールの楽しさを普及していく活動を続けていきたいと思います。選手の育成や強化はもちろん、子供たちが『バスケットボール選手になりたい』と思えるよう、学校訪問やファンとの交流にさらに注力していきたいですね。現在も北海道14地区の協会の親善大使を務めるなど、より地域に密着した活動を行っていますので、もっと身近な存在でありたいと思っています

Q:北海道日本ハムファイターズ、北海道コンサドーレ札幌といった別の球技のプロチームについてはどうお考えですか?

折茂:

規模が違いすぎます(笑)。それは置いておいて、選手同士の交流も少しずつ出てきましたし、球団としてはほかのチームの事業で参考になることはレバンガでも試したいなと思っています。それもすべて『北海道のため』です。レバンガ北海道は決して私のチームではなく、北海道のチームなんです。東京で会議に行った時でも、北海道出身の方に『北海道のために頑張ってください』と声をかけられます。これは、ほかの地域では考えられないことだと思うんです。なので、まずはレバンガ北海道が10年・20年存続できる体制を作って、それがプロバスケットボールチームのモデルケースにできればと考えています。その体制が整った時には、自分は手を引こうかなと……でも、北海道には残りますよ。「北海道のため」にできることがあるはずなので。

取材・撮影/橋場了吾(株式会社アールアンドアール)

写真提供・株式会社北海道バスケットボールクラブ

【専門家】折茂 武彦
1970(昭和45)年、東京都出身。NBL所属のプロバスケットボールチーム・レバンガ北海道の代表兼選手。
日本大学時代にインカレ優勝、卒業後トヨタ自動車でタイトルを多数獲得、全日本チームにも選抜される。
2007(平成19)年、レラカムイ北海道設立と同時に移籍。
2011(平成23)年に一般社団法人北海道総合スポーツクラブを設立し理事長に就任、
チーム名をレバンガ北海道に変更。
2013年(平成25)年に運営権を株式会社北海道バスケットボールクラブに委譲し、代表取締役に就任。
【専門家】橋場 了吾
同志社大学法学部政治学科卒業後、札幌テレビ放送株式会社へ入社。
STVラジオのディレクターを経て株式会社アールアンドアールを創立、SAPPORO MUSIC NAKED(現 REAL MUSIC NAKED)を開設。
現在までに500組以上のミュージシャンにインタビューを実施。
北海道観光マスター資格保持者、ニュース・観光サイトやコンテンツマーケティングのライティングも行う。

ノマドジャーナル編集部
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