首都圏への人口・商業施設の集中からの脱却を図る「地方創生」が叫ばれる中、地方の企業はどのような事業展開を進めるべきなのか、北海道札幌市に住む筆者が北海道で開催された「地方創生」に関するイベントのレポートを行っていきます。
9月10日・土曜日、パウダースノーが評判を呼び、海外スキーヤーが多くやってくる倶知安町で開催された「次世代につなぐ新たなまちづくりフォーラム~ともに知ろうプロジェクト~」(主催/倶知安青年会議所・倶知安町教育委員会)のレポートの最後は、北海道大学公共政策大学院特任教授・小磯修二さんによる基調講演「次世代につなぐまちづくり」に次いで行われた「地域活力の創出に向けて」というパネルディスカッションのレポートです。
このディスカッションでは、倶知安町青年会議所の「未来へのひとづくり委員会」委員長で倶知安町議会議員の門田淳さんをコーディネーターに、パネラーとして倶知安町で仕事をしている方3名と、倶知安農業高校の学生2名が参加。小磯さんもアドバイザーを務めました。
今回は、同校2年生の石川翔大さんと小山莉奈さんの発言をピックアップしてレポートしていきます。
夏場の観光の強化や和牛のブランド化を提案
石川さんは和牛の飼育を、小山さんは米の生産を勉強しています。
まず小山さんが「倶知安町は、冬はスキーをしに海外の方が多く訪れますが、夏場の観光の強化のために体験型観光農園を提案したいと思います。体験学習で『じゃがいも(倶知安の特産品)の花を使った押し花』を作ったのですが、そのような体験ができる農園があると夏場にも人が来てくれるのでは。
そして、今学内で栽培しているムラサキコマツナやカラフルニンジンなど、栄養価の高いカラフルな野菜を提供できる農家レストランがあるといいなと思います」と提案。「倶知安駅の近くに、若者が集うお店が増えるといいですね」と高校生らしい意見も。
続いて石川さんも「和牛の飼育はいろいろな農家さんが協力して行っているので、牛肉のハンバーグなど『羊蹄(倶知安は羊蹄山の麓にある)和牛』のブランド化を目指してみては。
あとは特産品であるじゃがいもをもっとアピールするために、地元野菜を使ったカレーレトルトなどの6次化製品の開発や、どの店にも地元のじゃがいもを使ったフライドポテトがあると特徴づけになると思います」と提案し、コーディネーターの門田さんも「素晴らしいご意見をありがとうございます」と答え、聴衆からも「ほお」と声が漏れました。
「地域ならではの食」に大きな需要がある
アドバイザーの小磯さんは「食と観光は密接につながっています。観光におけるもっとも大きな消費になりますから。しかも、『その地域でしか食べられないもの』に対して一番お金を落としてくれるわけです。石川さんと小山さんの提案は、まさに地元ならではの食なのですごく可能性があると思います。また東京の富裕層に押し花は人気があるので、『じゃがいもの花を使った押し花』というのも良いアイディアですね。地元食品のブランド化で大切なのは、地元の人がその美味しさを伝えることですから」と太鼓判。
また地方ではハンディと考えがちな「距離」の問題ですが、小磯さんは「長距離移動はそれだけお金が動くという意味では、ハンディとは言えないのでは」と語りました。
そして最後に「倶知安町は海外の方からも愛されていますし、素晴らしいポテンシャルを持った地域ですよね。私は今面白いのは地域に密着した農業高校だと思っているので、逞しさと可能性を感じました」と締めました。
取材・撮影/橋場了吾(株式会社アールアンドアール)
同志社大学法学部政治学科卒業後、札幌テレビ放送株式会社へ入社。
STVラジオのディレクターを経て株式会社アールアンドアールを創立、SAPPORO MUSIC NAKED(現 REAL MUSIC NAKED)を開設。
現在までに500組以上のミュージシャンにインタビューを実施。
北海道観光マスター資格保持者、ニュース・観光サイトやコンテンツマーケティングのライティングも行う。
専門家と1時間相談できるサービスOpen Researchを介して、企業の課題を手軽に解決します。業界リサーチから経営相談、新規事業のブレストまで幅広い形の事例を情報発信していきます。