ここ数年、「イノベーション」という言葉をよく聞くようになりました。特に近年多く聞くのは「オープンイノベーション」という言葉です。そもそもイノベーションとは何を表すのか、そしてオープンイノベーションとはどんなものなのか?詳しく解説していきます。

イノベーションとはどういう意味か?

クローズドイノベーションとオープンイノベーション

イノベーションは、日本では主に「技術革新」という意味合いで使われてきました。これも間違いではないのですが、正確にいうと技術革新は「テクニカルイノベーション」です。本来イノベーションというのは新しいアイデアや価値が創造され、それにより起こる変革のことを指します。

これが会社1社や同一の業界内のみを対象とした、狭い範囲でのイノベーションであればクローズドイノベーションと呼ばれます。一方自社だけではなく、自治体や他業種、異分野まで巻き込んだものはオープンイノベーションと言います。

イノベーションが生み出すものとは

ここ数年で最もわかりやすいイノベーションは「スマートフォン」でしょう。スマートフォンの登場によって、いろいろな情報が手軽に簡単に得られるようになり、また発信も手軽にできるようになりました。SNSの普及で変わってきた生活スタイルも、元はスマートフォンの普及から来ています。このように、たったひとつの発明が起こすイノベーションは非常に大きなものなのです。

オープンイノベーションの実例紹介

オープンイノベーション実例①〜産学連携事例〜

さて、今話題のオープンイノベーションについて、その実例を見ていきましょう。まず。産業と大学が連携した産学連携事例です。

創薬オープンイノベーションセンター

東京大学が開設した「創薬オープンイノベーションセンター」がそのひとつです。こちらは研究者と創薬分野を結びつけるネットワークを作ることで、創薬にオープンイノベーションを導入しました。

科学技術振興機構の「新技術説明会」と「イノベーション・ジャパン」

科学技術振興機構も積極的にオープンイノベーションに取り組んでいます。科学技術振興機構の研究成果の実用化を促進するという目的で、「新技術説明会」を開催し広く新技術の普及に努めています。また革新性の高い産学連携に助成金を出すといった制度も考案されています。さらに、科学技術振興機構ではイノベーション・ジャパンとよばれる展示会を毎年夏に開催し、技術的交流を図っています。

オープンイノベーション実例②〜IT業界における事例〜

IT業界では常に最新の技術を取り扱うため、オープンイノベーションを目的とした他社との交流が頻繁に行われています。わかりやすいのが「オープンソース」の概念です。どのように設計されているかを公開し、ある程度改変を加えて使用許可を出すことで、他社が独自の工夫を加えて新たなサービスを生んでいく、というのがオープンソースの考え方です。

スマートフォンのOSであるAndroid OSが良い例で、googleの開発したこのOSがオープンソースであったからこそ、スマートフォンはあっという間に普及していったと言えます。また現在では音楽や絵画の世界でもIT技術が注目されており、いろいろな分野との交流も進められてきています。

オープンイノベーション実例③〜働き方改革事例〜

政府が進めている「働き方改革」の中にもオープンイノベーションの考え方が採用されています。その事例のひとつが「副業の解禁を推奨すること」です。自分の企業にはないもの、見たことのない文化に触れ、それを自社に持ち帰ってイノベーションを起こさせる、というのが目的です。

単純に収入の面だけではなく、そうした他業種での経験から個人として成長し、またそれが企業を成長させる良い循環を作り出そうとしているわけですね。

副業解禁でオープンイノベーションを起こせるか

副業に取り組むことのメリット・デメリット

自分自身にオープンイノベーションを起こそうとする場合、副業にはいろいろなメリットをもたらします。

二つの仕事を持つことは大変なことですので、なんとなく副業に取り組む、というのはなかなかありません。新しい知識を得たり、欲しいものがあったりと何かしらの強い目的があるものです。副業を通して楽しみが広がったり、友人が増えたりすれば人生も充実し、本業も充実していくものです。ただなんとなく副業に取り組むのではなく目的意識を持つことで、充実感を感じ、生き生きと働くことができる可能性があります。

また副業はスケジュール管理から税金の申請まで全て自分で行わなくてはならず、自ずと経営に近い物事をやることになります。副業をすることで経営感覚が身に着くのであれば、非常にいい勉強だと言えるでしょう。

デメリットももちろん存在します。一番大きなものが本業に支障をきたすことです。体力面や精神面の疲れから本業がおろそかになってしまってはイノベーションどころの話ではありません。また、本業や副業を通して個人情報や社外秘の情報を得た場合、情報漏洩の危険性が付きまといます。どのような副業につくのであれ、情報の取扱いは極めて慎重に行いましょう。

オープンイノベーションを起こすために必要な姿勢

オープンイノベーションは、ただ副業をすれば起こる、というようなものではありません。オープンイノベーションに副業が有効な理由は、「異文化の体験」ができるからです。業種が違ったり会社が違えば、自ずとやり方も違いますし、社内の文化も様々です。それを体験し、いいところを持ち帰って自社に応用することがオープンイノベーションを起こすきっかけになります。副業に取り組むときは、自社に無い部分を探すこと、そしてそれを自社にどのような形で生かせるのかを考えながら働く、という姿勢が必要になってきます。

オープンイノベーションを意識した副業の探し方

今の仕事とは無関係でも問題ない

異文化に触れることがオープンイノベーションの要です。つまりオープンイノベーションを意識して副業を探すのであれば、今現在の仕事とは無関係でも問題ありません。同業他社であればより自社との違いを感じられる点は良いのですが、企業秘密の漏洩の観点からはおすすめできません。

むしろ本業と無関係の仕事をして、そこで得たものを自社で生かすように考える方がオープンイノベーションにつながります。今はインターネットの発達によって、様々な方法で募集情報を集めることができます。できるかどうかわからなくでも気にせずに、一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。

まとめ

「三人寄れば文殊の知恵」ということわざがあります。これは、特別に賢い人間ではなくても三人いれば何かいいアイデアが浮かぶ、という意味です。そして見方を変えるとこの三人が集まったことでイノベーションが起きた、と考えることもできます。異業種・異文化との交流を深めることで新たな知識や技術が生まれ、社会が変革していきます。技術の進んだ現在でも、むしろ現在だからこそ、さらなるイノベーションがあるはずです。様々な交流を通して、オープンイノベーションを起こせるような社会になれば理想的ですね。

執筆者:守山 有

2014年からフリーライターとして活動。副業、IT関連、飲食など多ジャンルに渡って多数執筆。勉強の日々ですが、執筆も楽しく充実しています!