高度プロフェッショナル制度とは?

労働基準法の改正案に盛り込まれた「高度プロフェッショナル制度」は、一部の職種、一定の年収以上の人を対象に労働時間という枠組みを撤廃しようという内容です。

具体的にどんな職種、年収の人が対象になるのか。またこの制度が導入されると、どのようなメリットやデメリットがあるのかを、わかりやすく解説していきます。

高度プロフェッショナル制度の対象になる人は?

高い専門性が必要とされる職種に限られる

制度の詳しい内容や対象についても議論が交わされているところなので、まだ確定ではありませんが、現在下記のような業務の人が対象になる見込みです。

・高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められる業務

どのような職業や業種が対象になるのかについても確定しておりません。しかしコンサルティング、開発研究職、金融商開発など高度な専門知識が必要な職種が対象になるのではないかと言われています。

収入が一般平均の約3倍の労働者に限られる

こちらもまだ法律案の段階ですが、高度プロフェッショナル制度の対象になるのは、労働者の平均給与額の3倍を相当程度上回る水準の人が対象として検討されています。

これは、国税庁が発表した2013年の平均年収は413.6万円であることを考えると、年収1,075万円以上の人がおそらく対象です。

しかしいまのところ、年収1,000万円に達していないから大丈夫と思っている方も、平均給与額の変動や、対象年収が引き下げられれば、対象者となる可能性があります。法案の行く末を見守る必要がありそうですね。

裁量労働制との違いは?〜残業代があるかないかの違い〜

高度プロフェッショナル制度と「裁量労働制」の違いがわからないと言った声が多く聞かれます。労働時間に関わらず、その仕事の質や成果で報酬を定めるというのが、両者が共通する目的。

一方で両者の大きな違いが、残業代の仕組みです。

裁量労働制は、みなし時間によって残業代が支給されます。しかし高度プロフェッショナル制度には、労働基準法の定める法定労働時間や休日などの規制が適用されません。つまり残業代がゼロ。

国会で野党から多く批判される理由が、上記の残業代が支払われない仕組みとなっているためです。

制度が創設された際のメリットとデメリット

高度プロフェッショナル制度のメリット

労働生産性が上がり、残業代が不要になる

現行の仕組みでは、残業すればするほど報酬が多くなります。これは仕事の生産性が低い人の方が、生産性が高い人よりも報酬が多いという構図です。そのため労働者
が生産性を高めるインセンティブが働かず、下げている要因になっていると考えられています。

高度プロフェッショナル制度が採用されれば、労働時間に報酬が左右されません。そのためいかに効率よく成果を上げるかを、社員一人ひとりが考えるようになり、労働生産性が上がることが期待されます。

ワークライフバランスが実現できる

高度プロフェッショナル制度は、自由に出社や退社の時間を決められるため、ワークライフバランスを実現できるメリットも。

現在、介護や育児で働けない労働環境が問題になっています。制度が実現されれば、きちんと成果を上げれば、労働時間を自由に決められ、介護や育児と仕事との両立が可能になることもメリットのひとつです。

高度プロフェッショナル制度のデメリット

立場の弱い労働者が残業を強要される危険性も

現在の労働基準法では、労働時間の上限が決められ、それを超えた労働は違法となります。しかし高度プロフェッショナル制度は、成果をベースにしているため、労働時間については上限がありません。

そのため長時間労働が横行してしまう危険性があり、懸念されているのが現状です。野党からは、「残業代ゼロ法案」「過労死促進」などと強い批判を浴び、過労死などにつながる恐れもあり、慎重に審議していくことが求められています。

成果の評価方法が難しい

また労働者の報酬につながる、評価制度の難しさについても心配されています。

なぜなら多くの企業が年功序列の評価制度を採用しています。そのため成果をベースとした評価制度への変更が、組織・個人に与える影響は小さくないからです。いかに不公平感が出ないように制度を構築できるかがポイントになります。

高度プロフェッショナル制度のスタートされるのはいつ?

現在国会で審議が進められている「高度プロフェッショナル制度」は、すでに閣議決定され、2015年に労働基準法改正案として国会に提出されました。

そして2017年秋時点で、早くも法案成立の可能性が高まっています。希望の党が合流したことにより、国民投票を実施する国会発議に必要な衆参国会議員の3分の2の確保が容易になったためです。

「残業代ゼロ法案」と危険視されながらも、もう少しで成立してしまうかもしれない高度プロフェッショナル制度。どのように着地するのかを見守りましょう。