今後も加速する働き方改革

労働力不足や長時間労働の問題など、働き方に対する問題が続出しています。そうした中で政府は働き方改革を進めることになりました。このコラムでは2017年の働き方改革10大ニュースとして、今年の働き方改革に関連したニュースを紹介します。

1.働き方によって不公平感がない税制の実現へ

働き方改革の重要なポイントの一つとして、正規・非正規での賃金の区別を無くすことが挙げられています。

そうした動きを加速させるために税制を改革するという動きが出てきました。2018年の税制大綱によれば「特定の収入のみ適用される給与所控除から、どのような所得にでも適用される基礎控除に負担調整の比重を移していくことが必要だ」とし、「所得再配分機能の回復や税負担の在り方の観点から、引き続き所得税の見直しを継続していく」としています。

こうした動きは非正規やフリーランスにとって有利な改革だと言えるでしょう。

2.部活動は義務ではない~教員の働き方改革も必要

教員は公務員として長時間労働が強いられてきましたが、こうした教員の働き方の改革も必要です。中でも部活動は教員の長時間労働の原因のひとつだと言えます。

中教審の中間報告では「教育課程外であるが、学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意すること」とされているとし、部活動運営は学校の義務ではないとしながらも、「現状ではほとんどの中学校、高校で部活動が設置され、教師が顧問を担わざるを得ない状況である」としています。しかし、「学校の業務として行う場合であっても必ずしも教師が担わなければならない業務ではない」とし、「外部人材が担うことも積極的に検討すべき」としています。

外部人材などを招くことで、教員の負担を軽減しなければ、教員を志望する人たちも減っていくことも間違いないでしょう。

3.働き方改革によって株価が上がる企業も

働き方改革にはITの活用は不可欠です。こうしたITを活用することで生産が向上し、さらに労働時間も減るのは間違いありません。

こうした流れの中で株価上昇率の「上位には「働き方改革」のニーズを取り込む企業や半導体などIT(情報技術)関連企業などが入った」と報道されています。今後ますますこの流れは加速するでしょう。

4.テレワークに効果あり。今後活用する企業は増えるのか

場所や時間を選ばず働くことができるのがテレワークです。

こうした働き方を正社員として選択できる企業は少ないと言えます。しかし、実際にテレワークを実験的に実施した企業があります。積水ハウスの場合、「参加社員約160人の83%が『時間を有効活用できた』と回答し、「カルビーは社員約220人の72%が『業務効率が向上した』とし、94%が『今後も利用したい』と好評」でした。そのためカルビーでは「2017年10月から東京・丸の内にある本社などで毎月1回のテレワークを開始」ししています。こうした動きは今後も増えてくることでしょう。

働き方が柔軟になることで、これまで働くことができなかった人も働くことができる環境が整っていくはずです。

5.フリーランス支援サービスの登場

私もフリーランスとして仕事をしていますので、フリーランスの支援をする協会が発足したというニュースはありがたいニュースでした。

発足した協会は「一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会」で、「会員になって年会費1万円を払えば、福利厚生サービスと賠償責任保険が自動的に付」き、「人間ドック割引などの健診メニューが充実」しています。こうしたサービスはありがたいはずです。さらに「損害保険ジャパン日本興亜の所得補償保険にも加入でき、30歳なら月1500円程度の保険料で病気やケガで働けなくなったときに月20万円の補償を受けられる」サービスもあります。他にも152万人のフリーランスを抱えるクラウドワークスは16年10月、継続的に高収入を得る利用者に対し、万一の際に月5万円を受け取れる所得補償保険を付与」してもいます。

フリーランスはこうした制度も利用すべきでしょう。

6.NHK、働き方改革発表

長時間労働で自殺者を出したNHKでは、NHKの働き方改革を発表しました。

それによれば「来年度からスタジオ収録は原則午後10時終了を目指す。深夜に及ぶこともある大河ドラマや連続テレビ小説は午後9時を目標とする。また、一部大都市を除く地方放送局記者の泊まり勤務の段階的な廃止を検討。定型原稿やテロップの自動作成などにAI(人工知能)やICT(情報通信技術)などの活用も進める」ということです。

長時間労働はこれからなくなっていく流れなのでしょうが、どこまでこの内容が守られるのか注目していく必要があるでしょう。

7.東京都と東商が働き方改革について協定を結ぶ

東京都と東商が働き方改革で協力するのは自然な流れです。

この協定では「情報通信技術(ICT)を活用して職場以外で働くテレワークや混雑緩和を狙う時差通勤の普及、女性の活躍推進、ボランティア休暇制度の導入促進など7分野で協力する」としており、東京が先頭を切って、多様な働き方が身近になる時代が来るかもしれません。

8.副業と本業の労働時間の合算の見直しが行われるかもしれない

現在、労働時間は本業と副業を合算して計算されるため、8時間を超えた時間分を働いた企業の方が残業代を払う仕組みですが、「海外には労働者が自らを労働時間規制の対象外とすることを選べる制度などがある」とし、「海外の事例も参考にしながら、いまの規定をどう改めるか議論していく」方向に向かっています。

ただこれは長時間労働を無くすという政府の「働き方改革」に反するとも言えます。それでも副業がやりやすくなる社会環境は歓迎すべきことです。このニュースに関しては今後も注目していくべきでしょう。

9.「働き方改革」への取り組み状況

読売新聞社と帝国データバンクが行った調査によれば、「「働き方改革を行っている」と回答した企業は全体の39.9%を占め、「検討中」という回答の企業も29.6%で、約7割の企業が働き方改革に前向き」でしたが、「「行っていない」とする企業は21.2%、「分からない」との回答も9.3%に達し」ています。

企業によってその意識に大きな差があるのは間違いないでしょう。また、「「改革を行っている」と回答した中小企業は、全体平均とほぼ同じ水準の38.0%」、「大企業ではこれを大きく上回る63.5%」で、特に大企業にとっては働き方改革は行わなければならないものという意識があるのが分かります。こうした流れは社会全体に浸透していくのは間違いないでしょう。

10.違法残業は電通でも

違法残業で自殺者まで出した電通では、山本社長が「「労働時間に関する是正勧告を複数回受けていたにもかかわらず根本的な解決を図れず、深く反省する」と謝罪。

事件の背景として「仕事に時間をかけることがサービス品質の向上につながるとの思い込みがあった」」と説明しています。長時間労働をすればサービスが向上するという考え方は、これから否定されていくことでしょう。

これからも働き方改革に注目

働き方改革はまだまだ始まったばかりです。これからますます加速していくことでしょう。税制の問題など皆さんの生活に直接関係があることもありますので、今後も働き方改革のニュースに注目してください。

記事作成/ジョン0725