長期間の休暇を取得できるサバティカル休暇。長時間労働や副業解禁など、働き方改革の報道がなされる中、労働時間の短縮や新しい知見を得られるといった効果が期待されます。本稿では、サバティカル休暇のメリットや類似の休暇制度、海外や国内での導入事例をもとに解説していきます。
サバティカル休暇ってどういう意味?
「サバティカル休暇」とは、
一定の長期期間勤続者に対して少なくとも1カ月以上の休暇を与える、という長期休暇制度
で、ヨーロッパを中心に取り入れている企業が多いです。
通常の有給休暇などの年次休暇とは違い、使途に制限はなく、場合によっては1年にわたる連続休暇のケースもあります。
なぜ今注目されているのか?企業にはどんなメリットがあるの?
今、サバティカル休暇が注目されている背景と導入企業のメリットについてご紹介します。
注目されている背景
長時間労働問題
近年、政府主導で働き方改革が推進されています。中でも大手企業社員の過労自殺が報道されるなど、長時間労働の是正に対する機運が高まっています。サバティカル休暇は、長期休暇制度として過労を防止し労働者の健康を守るという観点で注目されています。
価値観の多様化
また、少子高齢化やビジネス環境の変化に伴い、終身雇用制度への信頼が揺らいでいます。一つの企業で勤め上げるという価値観から、転職も当たり前の世の中となり、直近では大手企業が副業を解禁するという報道も増えてきています。
長期間の休暇を取得することにより、大学院進学や留学、サイドビジネスの立ち上げなど、個人のスキルアップやキャリアアップにつながる制度としても注目を集めています。
企業のメリット
個人へのメリットはいうまでもないですが、企業側にもサバティカル休暇を導入するメリットがあります。
有給休暇取得を促進することが可能
企業ごとに制度は異なりますが、サバティカル休暇の取得に有給休暇を充当できます。たまっていた有給休暇を一度に消化することができ、総労働時間の短縮でも効果が期待できます。
一方で、有給休暇の取得自体が課題とされている状況でもあり、長期休暇を取得することへのハードルも高いのではという意見もあります。
新しい知見を職場に還元することが可能
1日だけの有給休暇の取得ですと難しいですが、もし1カ月の長期休暇を取得した場合、例えば海外でのボランティア活動や語学留学に参加できます。最近では留職の効果にも注目が集まっていますので、通常の勤務をしているだけでは得られない知見を社員が持ち帰り、職場に還元してくれる効果を期待できます。
離職率の低下につながる
上記の様に、休暇を取得してリフレッシュすることや、大学院で自身の興味のある分野を学んだり、海外留学で互角スキルを高めたりすることにより、モチベーションを高めることにより、離職を防止できるという効果も期待できます。
企業のさまざまな休暇制度
サバティカルの他にも、さまざまな休暇制度があります。ここでは代表的な制度をいくつか紹介します。
リフレッシュ休暇
リフレッシュ休暇は、社員やその家族のリフレッシュを目的とした、年齢や勤続年数に応じて、有給休暇とは別に与えられる休暇のことです。年次有給休暇は労働基準法によって付与が義務付けられていますが、リフレッシュ休暇は義務ではないため、取得日数や手当の支給など、会社が自由にルールを決めることができます。
ディスカバリー休暇
MSD株式会社などではディスカバリー休暇という休暇制度を設けています。ほぼ実質的にサバティカル休暇と言える制度で、その名の通り新しい体験を発見から新たな発想を得ることを目的としており、そちらのニュアンスが強い制度となっています。
育児休暇
休暇という観点では「育児休暇」という言葉もあります。こちらは法律に基づいて取得できる「育児休業」とは異なり、育児期間中に個人で休暇を取得する行為を指します。
そのため、育児休業にある収入減のための給付などの権利がなく、育児休暇では守ってくれる制度はありません。一般的にどちらも「育休」と呼ばれているので、混同しないよう、注意しましょう。
諸外国や導入企業の事例
欧州を中心にサバティカル制度は導入されています。代表的な国の事例をご紹介します。
スウェーデン
スウェーデンでは、国の制度としてサバティカル休暇制度を導入しています。労働者は手当を受給しながら最長1年の休暇を取得できます。
また、代替要員として失業者を雇い入れることを定められているため、失業対策にも効果があると期待されています。
フィンランド
フィンランドでは、ジョブローテーション制度が長期休暇制度の一つとして導入されています。フルタイムの従業員は 90~359 日の範囲で休暇を取得でき、休暇の間は手当が支給されます。
フィンランドのサバティカル休暇制度と同様、代替要員として失業者を雇い入れることが定められています。休暇の使途に制限はありません。
フランス
フランスにもサバティカル休暇制度があります。勤務する企業における勤務年数が3年以上であり、かつ通算の勤務年数が6年以上であること、また過去6年間に当該企業において同制度を利用していないことを条件に、6~11カ月の長期休暇を取得することできます。
なお、フランスのサバティカル休暇は、スウェーデンやフィンランドとは異なり、無給です。
国内企業の事例
実際にサバティカル休暇を制度として設けている国内企業を具体的にご紹介します。
ヤフー株式会社(サバティカル制度)
自らのキャリアや経験、働き方を見つめなおし、考える機会をつくることで、本人のさらなる成長につなげることを目的とした休暇制度です。勤続10年以上の正社員を対象に、2~3カ月の範囲で取得が可能です。なお、休暇期間中、一定期間は会社が支援金を支給します。
(参考:https://about.yahoo.co.jp/hr/workplace/vacation.html)
株式会社ぐるなび(プチ・サバティカル休暇)
勤続5年で3日間の連続休暇が付与されます。連続休暇の中で新たな学びに取り組んだり、キャリアの振り返りをするためのもので、休暇にあわせて活動支援金として2万円が支給されます。
(参考:https://corporate.gnavi.co.jp/recruit/support/welfare.html)
ココデ・グローバル株式会社(サバティカル休暇)
入社の約1年後に、最大1カ月間のサバティカル休暇(有給です。年俸維持。)を取得できます。
(参考:https://kokodeglobal.com/recruit/welfare.php)
株式会社トライバルメディアハウス(浮世離れ休暇)
株式会社トライバルメディアハウスでは、勤続満5年を迎えた社員に1カ月の連続有給休暇を付与するという浮世離れ休暇という制度を設けています。「普段できないようなアメイジングな体験をすることを強く推奨」しています。
(参考:http://www.tribalmedia.co.jp/recruit/unique/)
リクルート(STEP休暇)
株式会社リクルートテクノロジーズでは、勤続3年以上の社員を対象に、3年ごとに最大連続28日間取得できる長期休暇制度、SETP休暇を設けています。心身のリフレッシュや、自己の成長機会のための学びに充てるなど、目的は自由です。加えて、それを応援する手当として一律30万円が支給されます。
同じグループ会社である、株式会社リクルートコミュニケーションズにも同様の制度があります。
- (参考:https://recruit-tech.co.jp/recruitment/vacation.html)
- (参考:https://www.rco.recruit.co.jp/new/about-support.html)
まとめ〜新しい知見を得たりチャレンジできたりする機会はますます重要に〜
長時間労働が問題視される昨今、ワークライフバランスの観点からもサバティカル休暇のような長期休暇でリフレッシュすることは重要になってくるはずです。休暇取得の海外の事例を取り入れることにより、グローバルでの労働環境にも近づくことが可能です。
また、一つの企業に勤め上げる時代ではなくなってきており、副業やフリーランスが増加傾向にある中、サバティカル休暇のような、新しい知見を得たり、チャレンジができたりする機会はますます重要になってくるのではないでしょうか?