ワークシェアリングについて学ぼう!
ワークシェアリングとは、仕事を分かち合うという考えのこと。雇用を生み出すワークシェアリングは、一億総活躍時代や働き方改革を考えるうえでも、とても重要な考え方です。
ここではワークシェアリングのメリット・デメリットなどを学び、ワークシェアリングがどのように働き方を変えていくのかを解説していきます。
ワークシェアリングは、仕事を分かち合うこと
ワークシェアリングとは、働いている者同士が仕事を分け合うことを言います。英語では「job sharing(ジョブシェアリング)」と言われ、日本では「ワークシェアリング」のほか「ワーキングシェア」という呼ばれ方もしています。
ワークシェアリングの起源
ワークシェアリングはもともとはヨーロッパ型の社会民主主義の中で生まれた発想で、オランダでの成功例が有名です。
基本的な考え方としては、仕事をたくさん抱えている人が自分の仕事を他の人に手伝ってもらい、仕事の無い人に雇用を与えるという考えです。失業率が高い時代に重要とされる考え方です。
背景には日本人の長時間労働がある
もともとは新しい雇用機会創出に主眼が置かれた考え方ですが、日本においてのワークシェアリングは少し違います。
日本でワークシェアリングが注目されている背景は、深刻になっている長時間労働の問題があります。日本は長時間労働者の割合がとても高く、国連から是正するよう勧告を受けるほど深刻化しています。
長時間労働がなくならない理由として、「終わらない量の仕事が振られている」のであれば、その仕事を別の人が担当するワークシェアリングを導入すれば、長時間労働が解消されるであろうと期待されています。
ワークシェアリングのメリットとデメリット
メリット1:長時間労働の改善や職場環境の向上
ワークシェアリングを導入した場合のメリットとしては、今まで仕事が集中していた従業員の仕事を、別の従業員に割り振って担当してもらうため、長時間労働を改善できるということが挙げられます。
また、長時間労働が是正されることで、離職率が高かった職場の労働環境が良くなり、定着率が高まることで技能喪失を防ぐメリットもあります。
メリット2:新しい雇用創出の実現
いままで働きたくても働くことが難しかった人たちの受け皿になる、というメリットもあります。雇用創出により、高齢者雇用や女性の社会進出のほか、介護や育児で仕事を離れていた働き手が働けるようになります。
これを可能にするためには、ただ雇用を増やすだけではなく、新しい枠組みで様々な生活スタイルに合わせた多様性のある働き方を容認する必要があります。
デメリット1:企業の雇用コスト負担が増す
ワークシェアリングのデメリットや問題点としては、企業が抱える雇用コストが増大する点が挙げられます。
いままで一人で担当した作業を、人数を増やしてシェアすることで、生産性向上や従業員の満足度は上がるかも知れません。しかし雇用を増やすためには採用コストがかかり、人員を管理するためのコストもかかります。
企業にとってはコスト負担は避けられません。
デメリット2:低賃金労働者が増加する可能性がある
ワークシェアリングを推進する際には、短時間労働者などパートタイマーの受け入れなど多様性のある雇用形態で従業員を獲得する必要があります。
この際に、価格格差が是正されないまま多様化が進められてしまうと、低賃金労働者が増加する可能性があります。
失業者の割合が減って労働人口は増えたのに、従業員の平均賃金が上がらないという事態になりかねません。
大不況から復活したオランダの事例〜パートタイマーを積極的に採用し、失業率が低下〜
ワークシェアリングを導入して成功を収めた例に、オランダの事例があります。それが、1980年代から始まった「オランダ・モデル」と呼ばれる労働市場改革です。
オランダは天然ガスの資源エネルギーブームが去った後、人件費を払えなくなった企業が労働者の賃金を減らし、大量の失業者を生みました。1980年代前半にはオランダの失業率は14%に達し、オランダ病と呼ばれる大不況が国を襲いました。
労働市場改革では、それぞれの従業員が必要な収入を稼げるような多様な働き方が促進され、パートタイム労働者が増加し、その結果失業率が下がりました。
フルタイムで働いていた従業員の仕事を、パートタイマーが分担して行えるようになり、ワークシェアリングが進みました。さまざまな分野でワークシェアリングが進んだ結果、いまでは公務員や警察官、教師などもパートタイム労働者なしでは成立しないほどになっています。
日本におけるワークシェアリング〜導入企業には助成金も〜
オランダ・モデルのようなワークシェアリングが日本で進まない理由としては、雇用保険や労災保険など、雇用時にかかる経費が高いこと、フルタイムとパートタイムの価格の格差や差別などが挙げられています。
実際に導入するには、国レベルでの改革が必要になりそうです。
前述した問題点により導入が難しいワークシェアリングには、政府からの助成制度が用意されています。
たとえば、「ワークシェアリングに係る緊急雇用創出特別奨励金」では、一定の条件でワークシェアリングを導入した場合に、事業所に奨励金が支給される制度です。
日本の雇用対策にとって、重要なワークシェアリング
台頭する長時間労働の是正、そして働きたくても働けない人への新しい雇用創出、これらを同時に解決する方法として、ワークシェアリングが注目されています。
働き方改革が推進されていくなか、ワークシェアリングや多様性のある働き方も進んでいくことでしょう。今よりも労働環境が改善され、すべての人が働きやすい社会に近づいていくことを期待しましょう。