近年、働き方改革が話題となっています。働き方改革には大きく分けて「働き方の改善」と「休み方の改善」があります。各社の「働き方改革」の事例を参照して、私たちの「働き方」がどのように変わるか見ていくとともに、「働き方改革」で生まれた時間を有効活用する方法について記載していきます。

働き方改革の事例「働き方の改善」とは?

働き方改革の取り組みの中に「働き方の改善」というものがあります。ここでは、厚生労働省が開設している「働き方・休み方改善ポータルサイト」に掲載されている各社の事例を紹介して働き方の改善について解説していきます。

柔軟な働き方とはどのようなものなのか?

柔軟な働き方としては、テレワークやフレックスタイム制度、在宅勤務の導入があります。大手商社の住友商事では、2018年度からテレワーク制度の導入が検討されています。

現在も住友商事社内の一部で運用されている、病気、育児、介護等の理由による「在宅勤務」に加えてさらに「サテライトオフィス勤務」・「モバイルワーク」等、働く場所と時間を選ばず自由に選択できる制度を通して多様な働き方を推進するとともに、多様な人材の活躍を図ることを目的とされています。

テレワークとはどのようなものなか?

テレワークとは「ICT(情報通信技術)を活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」とテレワーク協会では定義しています。あらかじめ定められた時間、場所で働くのでは無い、柔軟に選べる働き方です。トヨタ自動車(株)では勤務場所を原則自宅としたFTL制度(Free Time and Location)を導入しています。

フレックスタイム制とはどのようなものなのか?

フレックスタイム制は労働基準法32条の3で定められています。1か月以内の期間における総労働時間を定めて、社員がその範囲内で各日の始業、 終業時刻を自分で決定します。育児、介護等で柔軟な勤務時間が必要な方にも適した制度です。多くの企業の事務系職種に導入されています。

働き方改革の事例「休み方の改善」とは?

働き方改革の中に「休み方の改善」というものがあります。改善の中身としては年次有給休暇の取得推進(取得率の向上)、様々な特別休暇の新設が挙げられます。各社の事例を紹介して休み方の改善について解説していきます。

休み方の改善とはどのようなものなのか?

厚生労働省の「平成28年度就労条件総合調査」によると、日本の企業全体の年次有給休暇取得率は48.7%と5割を切っています。今後、法改正によって企業に年次有給休暇の付与を義務付ける動きも出ています。このような中で年次有給休暇の取得率100%を目標にしている企業もあります。東京都港区に本社を置く製造業、東亞合成(株)です。

勤怠管理システムに年次有給休暇確認用の機能を付与、各社員に早期に年次有給休暇取得予定日を入力させ、他の社員の取得予定日も確認できるようにして、計画的な取得を促しています。同社では取得率が平成26年の70.1%から平成28年には92.2%にまで上昇しました。

年次有給休暇とはどのような制度なのか?半日単位、時間単位での取得とは?

年次有給休暇とは、労働基準法第39条で定められているものです。会社は雇い入れ日から6か月間継続勤務して全労働日の8割以上出勤した社員に対しては、10労働日の有給休暇を与えなければなりません。

会社は社員に対して半日単位で付与することもできます。労使協定を結ぶことにより1年間に5日を限度として時間単位で付与することも可能です。半日単位や時間単位の付与は取得率向上に役立つものといえます。

特別休暇とはどのような休暇なのか

特別休暇は、法律で定められたものではないため、各企業が独自に定めることができます。

具体的には、ボランティア休暇、記念日休暇、慶弔休暇等です。埼玉県さいたま市の製造業、ポーライト(株)では誕生日休暇を設けており、その取得率は100%です。

副業・兼業・学びなおし(リカレント)の推進とは

近年、会社以外でのキャリアを身に着けたり、副収入を得るために、副業・兼業を希望する方が増えています。しかし、認める企業は少ない状況です。(大企業で兼業を認める企業としては、ロート製薬(株)や味の素(株)等があります。)

働く人たちの健康確保に留意しつつ、 副業・兼業を認める方向に進めるために、国でガイドラインの策定やモデル就業規則の改正がされています。

また、女性・若者の人材育成等活躍しやすい環境整備の一つとして、社会に出てからの学びなおし(リカレント)の推進も国より推奨されています。

副業・兼業で成功するために資格取得しよう!学習に使える公的制度とは?

副業・兼業で成功を考えるために「資格取得」を考える方も多いのではないでしょうか。兼業や副業に活用できる資格としては、税理士や社労士等将来の独立開業も狙える資格や、必要な知識を得るためのファイナンシャルプランナーや語学等の資格が有効です。

ここでは、会社員が資格取得で使える制度として特定支出控除と教育訓練給付制度を紹介します。

特定支出控除とは、会社員が業務に必要なために支出した経費の一部を収入から控除できる制度で、資格取得にかかる費用も対象の経費に入れることができます。ただし、会社から業務上必要だと証明されることと、かかった経費の領収書が必要です。

教育訓練給付制度とは、雇用保険から教育訓練にかかった費用の一部が支給される制度です。かかった費用の2割が給付される一般教育訓練給付金とかかった費用の4割から6割が給付される専門実践型教育訓練給付金に分かれています。詳しくはハローワークにお問合せ下さい。

まとめ

第10回働き方改革実現会議(平成29年3月28日)において安倍総理は「働き方改革実行計画の決定は、日本の働き方を変える改革にとって、歴史的な一歩である」と発言されています。

東京都でも、「TOKYO働き方改革宣言企業」制度を実施して、既に多数の企業の「働き方改革宣言」をサイト上で閲覧することができます。各社の宣言を見ながら、働き方改革によって変わる自分の働き方についても考えていきましょう。

執筆者:中新 大地

2016年10月より特定社会保険労務士として開業、元ハローワーク職員(厚生労働事務官)。雇用保険の専門家として、各種助成金、雇用保険、労働問題を得意にしています。今までに労働、社会保険、労働保険に関する記事を多数執筆、監修。近年は各種講演会も開催しています。(キャリアコンサルタント、1級ファイナンシャル・プランニング技能士も保有しています)