2016年度の女性の労働人口は、正規・非正規合わせて2,445万人と、前年の2,388万人から約60万人増加しています。こうした状況を鑑み、近年では企業が女性が働きやすい環境や制度づくりを急ピッチで進めているようです。

妊娠・出産といったライフイベントを迎えた後も女性社員が活躍し続けるために、企業ではどのような取り組みが行なわれているのでしょうか。女性活躍推進策を実施する企業の意図も合わせて、見ていきたいと思います。

女性社員の活躍は、男性のやる気にもつながる

どれくらいの数の企業が、女性の活躍推進に向けた取り組みをしているのでしょうか。大手人材紹介会社のエン・ジャパン株式会社が同社のサービスを利用する189社に対して実施した「女性の活躍推進」に関するアンケートによると、従業員301名以上の企業では83%、300名以下の企業でも45%が、女性社員の活躍と定着に向けた取り組みを行っていることが分かりました。

 

具体的な取り組みとしては「出産育児をサポートする福利厚生の充実」「時短勤務・テレワークなど勤務形態の多様化」「管理職への積極採用」が上位3つに挙がっています。

なお、これらの施策を行ったことで、業績の向上に影響があると答えた企業の割合は54%でした。その理由として、「有能な女性を登用することは男性社員のやる気も生み出し、業務において相乗効果が生まれる」「多様な考えが生まれるため、視野が拡がる」などの意見が数多く出ています。こうした事実から、職場に女性が増えることで、社員のモチベーションアップにつながり、さらに業績アップに繋がるという好循環を生み出していると言えそうです。

自社ビルを活用して女性向けのイベントを開催

三井不動産株式会社は、2020年までに女性管理職の人数を2015年度から3倍に増やすという目標を掲げ、ワークライフバランスの実現に向けた数々の取り組みを行っています。その一つとして、2016年から女性の視点を取り入れた「Work Life Bridge(ワークライフブリッジ)」プロジェクトをスタートさせました。

 

これはオフィスビルをワークスペースとして利用するだけではなく、オフの時間にも有効活用してもらうことを狙いとし、「Work」と「Life」の架け橋(bridge)となれるプロジェクトの実現を目指すというもの。第一弾では「食と健康」をテーマに、食材のインターネット販売を行うオイシックス株式会社との共同企画で、短時間で総菜を作れるレシピと食材をセットにした「Kit Oisix(きっとおいしっくす)」の企画、開発をしました。

 

そのほか、オフィスビル内にフリースペースを設けてヨガ教室や英会話レッスンなどを開催したり、社員の子どもたち向けにサマースクールやビルの自由研究ツアーをするなど、働く女性のニーズにあったイベントを定期的に開催しています。

子育て世代の女性社員を応援する「macalonパッケージ」

インターネット広告代理店の株式会社サイバーエージェント正社員数は約1,400名に上り、そのうち女性社員の割合が33%です。同社の女性は一時期、仕事もプライベートも(おしゃれも)充実させている「キラキラ女子」社員が多数在籍していることで話題となりました。

 

なお、家庭を持つ社員が今後も増加すると考え、2014年からは「macalon(マカロン)パッケージ」という女性活躍推進制度をスタート。現在、産休・育休を経て復帰している社員は、男女合わせて87%に上ります。名前の「macalon」には、「ママ(mama)が、サーバーエージェント(CA)で長く(long)働く」という意味が込められています。

・子供の急病に在宅勤務で対応

macalonは、8つの制度がパッケージ化されたものです。たとえば子どもの急な病気やケガにより、自宅で看病する必要が生じた場合、在宅勤務ができる「キッズ在宅」という制度。また、認可あるいは認証保育園の入園許可が降りず、高額な費用のかかる認可外保育園に通園させなければならない場合、入園料金を一部負担する「認可外保育園補助制度」など、働くママのニーズに寄り添った制度を導入しています。

・妊娠を希望する社員への配慮も

macalonでは、子育て中の社員だけでなく妊娠を考えている女性を支援する取り組みも行っています。「妊活コンシェル」では、妊娠に関する専門家のカウンセリングを受診することができ、クリニックの紹介もしてもらえます。

さらに、不妊治療のための通院を目的とした「妊活休暇」を奨励。社員が休暇を取得する理由を伝えづらい場合、女性特有の体調不良の際に使用できる「エフ休」(エフは「Female(女性)のエフ」)という休暇として利用を申請することもできます。

育休中から職場復帰を後押し エウレカの「baniera(バニエラ)」

マッチングサービスアプリの「pairs(ペアーズ)」を運営している株式会社エウレカは、2016年から「baniera(バニエラ)」という福利厚生プログラムの導入を開始しました。会社で働く多種多様な社員たちのプライベートを充実させ、互いを高め合える職場環境を目指して11の制度を提供。中でも、子どもがいる社員への福利厚生を充実させています。

・200円でシッターを雇える「病児シッター制度」

エウレカの本社がある首都圏は人口が集中しており、保育園や幼稚園に入園できない多くの「待機児童」を抱えています。子どもが保育園、幼稚園に入りやすい地域に引っ越して、「仕事を継続しよう」と考える社員に「引っ越し金の援助」を行っています。

また、子どもの急な看病などで会社を休まなくてもすむように、子育て中の社員は200円を負担すればシッターを雇ってもらえる「病児シッター制度」をつくったそうです。

・育休中でも会社に関わる機会を

産休・育休を取得しているパパママが、職場復帰をしやすくするための制度もあります。エウレカの社員は、月に一度上長との一対一の面談を行っています。

産休・育休の間は、職場に復帰した後の仕事について相談ができる「育休中1on1(イクワン)」として面談を継続。パパやママの不安を和らげることが目的です。さらには育休中に社内会議に出席できる「イクカイ」という制度も、復職支援の一環として導入されました。どちらの制度もオンライン電話での参加、あるいは社員が子どもを連れて出社し会社で行うことが可能です。

おわりに

これまで見てきたように、共働き世帯の増加や待機児童問題など、社会状況を反映した福利厚生制度が導入されるようになってきました。女性社員にとって働きやすい職場環境を目指すには、時代の変化に対応した制度が必要不可欠です。女性社員の増加は男性社員のやる気につながり、企業にもメリットをもたします。

こうした制度がうまく活用されれば、女性社員のパフォーマンスが向上するのみならず、企業への信頼性も高まっていくでしょう。

ライター:平賀 妙子

1989年、三重県生まれ。広告代理店勤務を経て、ライターへ転身。
企業のPRライティングやビジネス書の編集、IT企業のオウンドメディアの執筆などに携わっている。
普段は当たり前すぎて見逃されていることにスポットを当てて、
その魅力を伝える文章を書いていきたい。