今回は、個人事業主や経営者、独立コンサルタントが理解しておくべき「予算」について解説いたします。

 

将来を予測して予算を作るのが難しい、まだ事業規模が小さいから必要ないのでは、といった理由で、予算を立てていない方もいるかと思います。
しかし、夢や目標を実現させるためには、予算は欠かせないもの。予算の種類や作り方を学び、ぜひ、自社に合わせた予算を作成してください。

事業の計画と合わせて予算を作成する

Q:予算を作る必要はあるのでしょうか?将来のことを考えるのが苦手です

A:予算を作ることは非常に重要です。いつまでに、何をすべきか、予算を作ることで事業の進捗確認や検証ができます。

 

経営者の中には予算を作ることが苦手な方がいらっしゃいます。確かに将来のことを考えるのは難しい作業ですし、作ったことにより予算を達成しなければいけないプレッシャーもかかることでしょう。
ですがみなさんは、実現したい夢や目標があるからこそ起業し、会社を経営していることでしょう。事業計画がなければ地図の無いまま車を運転して目的地を目指すようなものです。ぜひ事業の計画と合わせて予算を作成して下さい。

Q:予算はどの程度先の期間までつくっておくものでしょうか?

A:予算については大きく3~5年後までを描いた中長期予算に加えて、より短期的な年次予算、そして月次予算を作っておきましょう。

 

例えば、飲食事業を開始するに当たり1店舗で1年間の売上予算を2千万とします。そして5年後には10店舗の出店目標による2億円という中長期予算を設けたとします。となると、5年後に10店舗であれば3年後は少なくとも5店舗で1億円という予算が立てられると思います。そして最初の1年目について月次の予算を設けることで毎月の実績との比較が容易になりますし、年度予算の進捗も検証しやすくなることでしょう。

 

また会社によっては部門別予算も設けることもあります。部門別予算は各事業部の運営に役立ちます。

ベンチャーに多い「トップダウン方式」と大企業の「ボトムアップ方式」

Q:予算はどのように策定していくのですか?

A:まず、予算を作る時期としては、3月決算の企業の場合は決算前の1月~2月です。そして4月1日の新年度スタートを迎えると新予算の下、事業がスタートします。

 

予算を作成する流れとしては、「トップダウン方式」と「ボトムアップ方式」が主流です。
「トップダウン方式」は経営者が「当社は3~5年後には売上高○○億円を目標とする。そのため翌期の売上高は○○億円の予算とする」と鶴の一声のように予算を決めていく方式です。

 

「ボトムアップ方式」は各部署が作った予算から経営陣が承認をして全体の予算を作っていく方式です。経理部のみならず、営業部や購買部、工場などの各部署の現場の声を重視して、予算を積み上げていきます。
ベンチャー企業や中小企業ではトップダウン方式が多く、大企業ではボトムアップ方式が多いですね。

目的に応じて複数の数字の予算を設定する場合も

Q:予算は1つの数字だけでよいのですか?

A:予算は1つだけでもいいですが、複数の場合もあります。例えば、好況時と不況時の2種類の数字のイメージを持っておくと、事業や経営環境が上手くいった場合でも、大変な場合でもあわてず冷静に分析ができるでしょう。

 

銀行など外部には保守的な予算を提示し、社内では高めの予算を設定している会社も多いです。または、トップダウン方式で高い目標予算を作成するとともに、ボトムアップ方式で現場に向けた予算を作るのも良いでしょう。

 

ぜひ企業の目的達成に向け、事業を推進する予算を立案してください。

専門家:江黒 崇史

大学卒業後、公認会計士として大手監査法人において製造業、小売業、IT企業を中心に多くの会計監査に従事。
2005年にハードウェアベンチャー企業の最高財務責任者(CFO)として、資本政策、株式公開業務、決算業務、人事業務に従事するとともに、株式上場業務を担当。
2005年より中堅監査法人に参画し、情報・通信企業、不動産業、製造業、サービス業の会計監査に従事。またM&Aにおける買収調査や企業価値評価業務、TOBやMBOの助言業務も多く担当。
2014年7月より独立し江黒公認会計士事務所を設立。
会計コンサル、経営コンサル、IPOコンサル、M&Aアドバイザリー業務の遂行に努める。