子連れワークをする”ベビーカー社長”として有名な株式会社プラスカラー代表取締役の佐久間映里さん。ワーキングマザーの同僚や理解のある夫、クライアントに囲まれて、とても順風満帆で幸せなようにみえます。
ですが、そんな佐久間さんにも「これは大変だった!」と感じたことがあるとのこと。後編では、佐久間さんの幸せの秘訣や、女性がもっともっと輝くためにやりたいことを、語っていただきました。
100点を目指さないことで、幸せをたくさん実感できる
Q:佐久間さんは、とてもハッピーオーラが溢れていますね。今幸せでらっしゃることが伝わってきます。
佐久間映里さん(以下、佐久間):
私、ずーっと幸せを更新していると思います。不幸せって思ったことがないですね。主体的に自分が決めて、実行して、結果を実感できることが、私にとって最大の幸せなんです。今は、誰と話し、どんな仕事をするか、全部自分で決められますから。
独立して、解き放たれた感もあります。会社員時代は、幸せとはいえ、思うところもありました。「パワーもやる気もあるのに、なんでやりたいと思うことを任せてもらえないんだろう?」って、もやもやしたり。目的を共有されないまま納得度の低い仕事をしなければならないことも多々あり、社会に出れば理不尽なことも多いことは分かってはいましたが「この社会の仕組みって何なの?」とずっと思っていました。
ただ、今ではそんな経験があったからこそ独立を決意できたのだとも思っているので私を雇ってくれていた会社には感謝しています。
Q:幸せを更新し続けているってすごいですね!そんなに突き抜けている方には、なかなかお会いしません。どんなマインドを持っていらっしゃるんですか?
佐久間:
現代の女性って、めちゃめちゃ大変ですよね。やれ働け、やれ子どもを産め。結婚してなかったら「まだなの?」とプレッシャーをかけられる。私は、「仕事も育児も家事も、全部やってるんだから、文句あるか!」って思うようにしています!
理想は限りなく下げた方がいい。高いと、「あぁ、まだ足りない」って思ってしまう。でも、「私はこれだけやってる!」と思うと、「十分頑張ってる。でも、もっとやりたい!」って思えるんです。100点を目指さないのが重要。何か一つに絞るんだったら、100点目指した方がいいけど、仕事と育児と家事をこなしているんだから、30点ずつでも90点ですよね。それぞれ、自分の満足度のラインである70点くらいはやっているつもりですから、「40点分もプラスしてる!」と思えるんです。
Q:これまで、悩んだこと、大変だったことはありますか?
佐久間:
自分の目標と現状が乖離した時は、不安を感じます。子どもを持つことにおいては、30歳までにという目標と乖離したので焦りましたし、周囲のプレッシャーも感じていました。でも、どうにかできるものでもなかったので、あまり気にしすぎないようにしました。
大変だったことといえば、事務所を大きくして、人も採用して、事業加速モードだった時に、妊娠が発覚したこと。つわりがひどく、2ヶ月入院したんです。その間に、社員が全員やめてしまいました。事業をストップしなくてはいけなくなったのですが、その作業をやってくれる人もいない。パソコンや携帯で活字を見るのも気持ちが悪い中で、「サービスを一時停止させて頂きたい。もちろん請求もしません!」という覚書を作成し、「退院し次第、直接謝罪に伺わせていただきます」というお詫びとともに、クライアントに送りました。
その時はさすがに、「大厄ってこういうことか…。」と思いました。でも、経営者になれば、遅かれ早かれピンチを経験するもの。それならこの規模の時で良かった、と思えました。
“女性が輝きながら働く社会”のために。輝いている姿を見せることで、「変わりたい!」と思わせる
Q:現在は、”キラキラ輝く女性を応援する”というビジョンのもと、広報育成事業・キャリア支援事業のほか、ロールモデル女性育成・妊活支援・PRサポートなどの事業を展開されていますよね。今後の方向性はどのようにお考えですか?
佐久間:
12月末に、新しく「NOZOKIMI」というサービスをリリースします。既存の中途採用向けのサービスでは、企業と応募者の相互理解が深めにくいなと感じていて。新卒でいう企業研究期間を設けて、実際にオフィスに訪問し、働き方座談会をし、本当に長く働けるかをちゃんと見極めよう、というものです。さらに、キャリアカウンセリングを行うカウンセラーを、全員ワーキングマザーにする予定です。家庭と仕事を両立するのにどんな弊害があるかを知った上で、求職者自身で戦略を練ってほしいんです。
すでにプレオープン中なので、登録はできます。(http://nozokimi.jp/)将来的には、”ママ受け入れOK”の企業だけを載せたサイトも作ろうかなと思っています。
一方で、掲げているビジョンとサービスがイコールでなくても、”女性が輝きながら働く社会”は作れる、とごく最近思い至ったんです。まず自分たちがそういう働き方を示すこともそうですし、事業を広げていくことで雇用を生んで、理想の働き方を実現できる女性を増やせると思うんです。
Q:なるほど、確かにそうですね。各々が理想の働き方を実現するためには、社会全体のマインドはもちろん、女性自身も変わっていかかなくてはいけませんよね。
佐久間:
社会や会社を変えるのは、とても難しい。女性一人ひとりが立ち上がり、実例を示すことが、一番早いと思うんです。世の中、すべては結果。「変わりましょう」って言ってもわかってもらえないけど、「結果出てますよ。」って言ったら、「どうやってるの?」って注目してもらえると思うんです。社会に対して有用なサービスであればユーザーも増えるし、良い循環が生めるはずです。
「時間=仕事」という考え方は、どうにかするべき
佐久間:
会社の事業としてやるかどうかは別にして、今後、変えたいことが二つあります。
一つは、ワーキングマザーに対する社会のマインド。「子どもを産んだら、働けない・責任ある仕事はできない」っていう固定概念を取っていきたい。そんな風に女性が見られているのは、癪ですね。「どうせ子ども優先にするんでしょ?」って言う人がいますが、自分が親だったら、もし子どもが入院したら帰るでしょう。そこに男女は関係ないはずです。
本当に輝きながら、仕事を楽しみながら続けている人って、まだ少ないですよね。プライベートを犠牲にしているか、仕事を抑えているか、どちらかではないでしょうか。保育園代を払い、時短でお給料を下げてまでやるんだから、やりがいある仕事・自分だからこそできる仕事をしないと、意味がないんです。誰にでもできる作業系の仕事をさせられるのなら、子育てに専念した方がいい、という人も多いでしょう。だから、「ワーキングマザーだけでも、責任ある仕事できます!生み出せる売上がありますよ!」って、社会に示していきたいです。
女性側も、”子どもがいる”ってセーフティラインを張っちゃだめだと思います。仕事においてはプロフェッショナルであるべきだし、だからこそお金を払いますよね。子どもがいようといまいと、関係ありません。成果を上げればいいんです。ただ、子どもがいると、周囲に協力してもらわなくてはならない部分があるから、そこは話し合いだと思います。私も、「子連れでよければ、私が担当します。でも、子どもが苦手とか、おむつ替えなどの時間を取るのが難しい、ということであれば、子連れではない担当をつけます。」とクライアントにはお話しています。
二つめは、働き方。時間=仕事、という考え方をどうにかした方がいいと思っています。製造業中心だった時代はそれで良かったと思いますが、今は違います。流れ作業をラインでやっているわけでもないし、8時間オフィスにいたからって、仕事をしたことにはなりません。8時間以上仕事したら残業、という考え方も違うと思います。自分の仕事の仕方が遅いだけ、というケースもあるでしょう。本当の意味での裁量労働というか、限られた時間で、結果にコミットしてどう達成するか、を考えて動くべきだと思います。
<編集後記>
時折お子さんにミルクをあげ、あやしつつ、ご自身の思いを語ってくださった佐久間さん。自ら背中で見せること、女性自身も意識を変える必要があること、というお話が特に印象的でした。自分が納得できるよう頑張り、周囲を納得させられるよう成果を上げるお姿には、学ぶことが多くありました。
プロフィール:佐久間 映里さん
株式会社プラスカラー代表取締役。
大学卒業後大手求人広告を扱う会社の営業職として入社。
新人MVPや通年MVPなど、数々の輝かしい実績を残す。
2009年、モバイルを主軸とした事業を展開するITベンチャーへ転職。
モバイルサイト構築とモバイルプロモーションの営業、
人事部で採用担当を務めた後、広報に異動。
“攻めの広報”というスタイルを貫き、型にはまらないスタイルで活動。
2013年に独立し、株式会社プラスカラー設立。
専門家:天田有美
慶應義塾大学文学部人間科学科卒業後、株式会社リクルート(現リクルートキャリア)へ入社。一貫してHR事業に携わる。2012年、フリーランスへ転身。
キャリアコンサルタントとしてカウンセリングを行うほか、研修講師・面接官などを務める。ライター、チアダンスインストラクターとしても活動中。