結婚、出産、夫の転勤、介護など、ライフイベントに左右されやすい女性のキャリア。では、女性が楽しく働きながら、自分らしいキャリアを築くためには、どうしたらいいのでしょうか。
今回は、株式会社プラスカラー代表取締役の佐久間映里さんに、お話を伺いました。佐久間さんは、子連れワークをする”ベビーカー社長”として有名な方です。インタビュー当日もお子さんを連れて、颯爽と登場されました。
前編では、会社を設立するに至った想いや、現在、どのように仕事と子育て、家庭を両立しているかについてお伺いしました。
29歳の転機。「子どもを産んだあと、私もこんな働き方をするのかな。いや、それは無理!」
Q:佐久間さんは、大学卒業後大手求人広告を扱う会社の営業として活躍後、モバイルを主軸とした事業を展開するITベンチャーへ転職。”攻めの広報”として型にはまらないスタイルで活動されてきました。そうして、2013年に、株式会社プラスカラーを立ち上げられました。まずは、会社を設立された経緯を教えてください。
佐久間映里さん(以下、佐久間):
2012年11月頃、29歳になって少し経ったタイミングで、「このまま、この会社で働き続けるってどうなんだろう」とふと思ったんです。25歳で結婚し、30歳までに子どもが欲しいと思っていました。当時はまだ妊娠しておらず、でも子どもがいない人生は考えていなかったので、「30歳までにどうしよう」と。それが、「私はどういう生き方がしたいんだろう」と立ち止まって考えるきっかけになりました。いろいろ悩んで、そぎ落としていった結果、「会社員でいるよりは、自分が積み上げてきたものを使って、新しい30代を切り拓いていこう」と思い、独立に至りました。
フリーランスというよりは組織を作りたかったので株式会社にするとは決めていましたが、何の事業をやるかは決めていませんでした。そこでまずは、それまでの経験を生かし、広報部の立ち上げを検討している会社でのコンサルティングをやるところからスタートしました。事業として成立したのは、半年後。フリーランスで広報・コンサルをやっている方に、アドバイザーとして就いてもらうことにしました。自ら営業をしたあとは、アドバイザーさんにお任せする、という仕組みを作りました。今は、法人企業に対しての広報人材育成と採用サポートという、大きく二つの事業をやっています。
Q:「女性の働き方」について、会社員時代、これは変えたいなと思っていたことはありますか?
佐久間:
人事時代の一つ上の先輩の姿が、印象に残っています。その方は、新卒入社後、ずっと人事でキャリアを積み、出産・育休を経て、再び人事に管理職として復職されました。仕事ができる人だし、意欲もあり、責任感も強い方でした。
ですが、まだ子どもが幼いので、お熱などで、保育園からしょっちゅう呼び出されていました。最初は周囲も応援モードだったのですが、その場にいない、呼び出されて帰っちゃった、しわ寄せが来る、ということに対して、だんだんネガティブな雰囲気になってしまったんです。ご本人も、時短勤務なのに延長保育して、保育料もかかり、周りにも応援してもらえず、とても大変そうでした。その姿を目の当りにして、「子どもを産んだあと、私もこんな働き方をするのかな。いや、それは無理!」と思いました。
であれば、環境を変えないといけない、という課題感が生まれました。許容してくれる仲間なり、会社なりを探さないと、私が実現したいスタイルは叶わない。でも、制度はあっても活用しきれていない会社が多く、ワーキングマザーを許容する風潮があるところも少ない。探すよりも、理想とするスタイルを追求できる会社を作ったほうがいいのでは、と思いました。
「ベビーカー社長」というスタイル。仕事と子育ての両立には、時間をフレキシブルにすることが必要
Q:”ベビーカー社長”というスタイルに行きついたのは、なぜですか?
佐久間:
もともと、子どもと一緒にいてあげたい。でも保育園に預けっぱなしは嫌だなと思っていました。そんな考えから子連れワークはどうだろう?と思ったのがきっかけです。子連れワークをOKとできる仕事のやり方や、ビジネスを生み出してみたい。働き方の欲求に対して、寄り添える会社でありたいと考えています。
Q:御社で活躍している方は、どんな方ですか?
佐久間:
正社員は3人で、全員ワーキングマザーです。役員を任せている社員は、31歳で人事経験者。現在第二子妊娠中で、10月末に産休に入る予定です。1人目は保育園に入れていますが、2人目は子連れワークをしようと思っているそうです。他の人は、時短勤務で16時に上がっています。正社員以外にも、自分のスタイルに合わせて手伝ってくれている人が、7~8人います。
私自身もフレキシブルな働き方をしていて、午後から出社しています。子どもの離乳食が始まり、食べさせるのに時間がかかってしまうので。午前中を仕事時間としてカウントすると、自分もメンバーもストレスを感じてしまうと思うので、私の仕事の時間は13時~20時にさせてね、とお願いしてあります。でも、保育園に預けている人は、9時から16時まで、というバンドで働いています。
新規営業も子連れで。クライアントも、夫も、家事ロボットも、みんなを味方にする
Q:子連れワークや時短など、各々が自分のスタイルに合わせた働き方を実践してみて、どうですか?
佐久間:
めちゃめちゃ働きやすいですよ!”会社にいなきゃいけない”という風潮がなく、「時間がない中でどうする?」という建設的な議論ができます。いかに時間を効率的に使うか、という意識で仕事をしているので、工夫が生まれやすいのだと思います。私は子連れなので、日中は打ち合わせ中心。デスクワークはメンバーと分担したり、子どもが寝ている間にしたりしています。
クライアントに理解し、協力していただいているのも大きいです。いきなり子どもを連れていったら驚かれると思いますが、事前に了承いただいておけば、問題ないと考えています。新規の営業なども、子連れで行っています。
Q:クライアントの反応はどうですか?
佐久間:
「すごいですね!」というポジティブなものが多いです。社長さんだと、「佐久間さんすごいね。じゃあ任せてみるよ。」と言って下さいます。現場の担当者の方だと、「こういう風に働いている姿を見ると、励みになります。勇気をもらいます。」って言っていただいたりしますね。
Q:ご家庭内では、子育てと家事をどう分担されていますか?
佐久間:
水曜日は私の会食デーとしていて、主人には20時に帰ってきてもらい、育児を交代しています。あとは土日に関わってもらっていますね。
家事は、週2日シルバーセンターの方に来てもらって、食事の支度や家の掃除をお願いしています。それと、ロボット掃除機や食器洗い乾燥機などの家電頼みですね。だいぶ賄えていますよ。よく、家事労働は年収1000万円相当って言うじゃないですか。本体代と電気代を足してもそんなにかからないので、だったら外で1000万円生み出しに行った方がいいって思っています。
どこを大事にするかはその人次第ですよね。私の場合は、子どもとの時間と仕事が最優先。主人ともすり合わせた結果、もともと得意ではない家事を頑張るより、得意なことで力を発揮するため不得意な部分は手を抜いていい(笑)としています。
プロフィール:佐久間 映里さん
株式会社プラスカラー代表取締役。
大学卒業後大手求人広告を扱う会社の営業職として入社。
新人MVPや通年MVPなど、数々の輝かしい実績を残す。
2009年、モバイルを主軸とした事業を展開するITベンチャーへ転職。
モバイルサイト構築とモバイルプロモーションの営業、
人事部で採用担当を務めた後、広報に異動。
“攻めの広報”というスタイルを貫き、型にはまらないスタイルで活動。
2013年に独立し、株式会社プラスカラー設立。
専門家:天田有美
慶應義塾大学文学部人間科学科卒業後、株式会社リクルート(現リクルートキャリア)へ入社。一貫してHR事業に携わる。2012年、フリーランスへ転身。
キャリアコンサルタントとしてカウンセリングを行うほか、研修講師・面接官などを務める。ライター、チアダンスインストラクターとしても活動中。