首都圏への人口・商業施設の集中からの脱却を図る「地方創生」が叫ばれる中、地方の企業はどのような事業展開を進めるべきなのか、北海道札幌市に住む筆者が北海道で開催された「地方創生」に関するイベントのレポートを行っていきます。
今回は2016年10月10日・月曜日から16日・日曜日の一週間に渡って開催された『No Maps』、その象徴的イベント『Where U Heading』をレポート。
『No Maps』は「Film(映像)」「Music(音楽)」「Interactive(双方向)」の3コンテンツを軸に展開された総合イベントで、今年がプレ開催。札幌市内の23会場を使用し、過去に開催してきたイベントと連動しながら50近いイベントが開催されましたが、その中でも『Where U Heading』は3コンテンツを融合させたイベントとして注目されていました。
4アーティスト(北海道2・東京1・台湾1)が出演したのですが、北海道初登場となった台湾のハープ奏者・Paige-Suさんのライブをピックアップ。彼女の演奏を中心に、『Where U Heading』の可能性を考えてみました。
転換の時間を利用してショートフィルムを上映
『Where U Heading』は10月15日・土曜日、札幌・狸小路にあるライブハウス「Sound lab mole」で開催されました。いわゆる対バン形式(複数のアーティストが順番に出てくるライブ)では、アーティストの演奏が終わると、次のアーティストが準備をする「転換」という作業が行われます。
この転換には10分から15分ほどかかるのが普通ですが、『Where U Heading』ではその転換の途中で白幕が張られ会場が暗転、ショートムービーが始まりました。
オーディエンスも「何が起こったのか」と固唾を飲んでショートムービーを見守ります。そして、7分ほどのムービーが終わると自然に拍手が発生、「ライブハウスで見る映画は新鮮」との声も上がりました。
「そのように思ってもらえるのは本当にうれしいですね。3コンテンツを融合させた魅力が伝わっているのかなと思います」(『Where U Heading』プロデューサー・株式会社WESSの若林良三さん)
「いろいろな壁を超える」音楽を含めて総合的に文化を発信
一組目のアーティストが終わりこのような転換が行われた後、白幕が外されるとすでにPaige-Suさんがステージ上でスタンバイ済。エレクトリックハープとエフェクトドラムという珍しい編成が目を惹きます。
前半はいわゆるハープの美しい音色を期待しているといい意味で裏切られるヘビーなサウンドで構成、歪ませた音を多用したハープとは思えない重い音色と、透明感のあるPaigeさんのボーカルの対比が面白く、オーディエンスは自然に体を揺らしていました。Paigeさんの演奏中にも雨が降るような映像が流され、天井から雪が舞い降りるなど「Film」と「Interactive」を意識した演出も。
Paigeさんはライブ中盤のMCで「このハープ(青いハープは台湾でも1台の限定品だとか)と共に北海道に来られたことが嬉しいです。北海道の素晴らしい食事、天気、そして人々に感動しました。この場所で素晴らしいドラマーであり夫でもあるCodyと演奏できることに興奮しています。音楽は色や絵のようなもので、いろいろな壁を簡単に越えてくれる素晴らしいものです」とあいさつ。
後半はハープらしい美しい音色の楽曲も披露、最後は彼女の音楽のベースとなっている「人生を表現する」ことがテーマとなっている『Over The Fence』を演奏し、40分ほどの北海道初ライブを終えました。
1アーティストのライブの中で映像が使われることはよくありますが、対バン形式で転換の途中で映画が使われるのは珍しい試みですし、ライブハウスという場所で音楽と映像を同時に楽しめるのは、文化を総合的に発信するという意味でも今後の可能性を大いに感じさせるものでした。
「これからは音楽だけ、映像だけというのではなく、総合的に文化を発信していくことが大切になると思います。『札幌で何か面白いことが発信されているぞ』ということが、ここから全国へ、そして世界へ伝わっていくといいなと考えています。『Where U Heading』は世界が平和になるようにという意味も込めて国際色豊かなアーティストで構成したので、そういう思いも伝わればいいなと思います」(若林さん)
こういう機会があれば何度でも北海道に来たい
終演後、Paigeさんにインタビューすることができました。
Q:ハープをロックやポップス、ミクスチャースタイルで演奏するのは非常にユニークな発想だと思いました。
「私は台湾出身で小さいころからピアノやフルートを学んでいました。ハープを始めたのはアメリカの大学へ留学していたときで、なぜか突然『ハープをやろう!』と閃いたんですよね(笑)。
ただ、大学を卒業して台湾へ戻ってからは、なかなか音楽一本ではやっていけなくて、いろいろな仕事を経験しました。クラシックだけだと音楽の幅が狭まるので、当時好きだったインドの音楽を取り入れてみたんです。実際にインドに行って、教えてもらいました。そして2010年頃にようやく軌道に乗り、CDをリリースしイベントに出るようになりました」
Q:北海道では初の演奏でしたがいかがでしたか?
「4月に初来日して東京で演奏したのですが、その時は音楽関係者対象のイベントだったので皆さん座って冷静に見ていました。今回はライブイベントだったので、リラックスしたオーディエンスがたくさんいてとても楽しかったです。
『No Maps』は先進的なイベントだと聞いていますし、そのイベントに呼んでもらえたことをとても嬉しく思います。このような機会があれば、ぜひまた来たいですね!12月にはアルバムもリリースされるので、そのタイミングでまた北海道に来られれば最高です」
取材・撮影/橋場了吾(株式会社アールアンドアール)
同志社大学法学部政治学科卒業後、札幌テレビ放送株式会社へ入社。
STVラジオのディレクターを経て株式会社アールアンドアールを創立、SAPPORO MUSIC NAKED(現 REAL MUSIC NAKED)を開設。
現在までに500組以上のミュージシャンにインタビューを実施。
北海道観光マスター資格保持者、ニュース・観光サイトやコンテンツマーケティングのライティングも行う。
専門家と1時間相談できるサービスOpen Researchを介して、企業の課題を手軽に解決します。業界リサーチから経営相談、新規事業のブレストまで幅広い形の事例を情報発信していきます。