首都圏への人口・商業施設の集中からの脱却を図る「地方創生」が叫ばれる中、地方の企業はどのように先代からの伝統を引き継ぎながら、新たな事業展開を図っているのでしょうか?そこで、北海道札幌市に住む筆者が北海道の企業の社長や団体の代表者に「地方創生」について伺っていきます。
今回はサッカー選手を中心にスポーツ選手のセカンドキャリアを支援しているNPO法人セカンドサポートの芳賀博信理事長にご登場願いました。2012(平成24)年に北海道コンサドーレ札幌にて現役のサッカー生活を終えた芳賀さんは、2014(平成26)年に同法人を設立、ブラインドサッカーの支援も積極的に行っています。その芳賀さんに、現在の同法人の活動について伺いました。
現役時代からセカンドキャリアについて考えることの重要性
Q:現役引退後にさまざまな学校や施設を回るにあたり、コンサドーレで培ってきた実績はどのように影響しましたか?
「どの場所でも快く受け入れてくれたのは大きかったですね。その後、セカンドサポートを立ち上げるにあたりNPO法人にしたのは、スポーツ選手のセカンドキャリアの支援と障がい者支援を同時に行うので、そもそも利益を大きく上げることは考えていなかったんです」
Q:サッカーの場合、現役を引退した選手が解説者になるというパターンはどれくらいの割合なんですか?
「本当に一握りだと思います。僕が辞めてから感じたのは、現役時代からセカンドキャリアについて考えておかなければならないということでした。組織を運営するということやサッカー教室で指導することは、次のキャリアへの準備期間にもなりますし引き出しも増えると思うので、仲の良い選手に『何かやっていかないか』と声を掛けてセカンドサポートを立ち上げたんです」
Q:芳賀さんの実績ですと、解説も引く手あまただと思うのですが、根っからのキャプテン体質なんだなと思いました。
「僕は来るものは拒まないですけど(笑)、もともと解説をやっていらっしゃる方もいるので、その部分に刺さっていこうとは思っていなかったですね。僕は性格的に楽しいことしかやらないタイプなので、楽しいなと思う方に進んでいったらこうなったという感じです。皆が良くなる方向を考えていった方が、結果的に自分のためになるのかなと思います」
今後はもっとセカンドキャリア用のツールを増やしていきたい
Q:現在サッカー教室にはどれくらいの生徒がいるんですか?
「札幌、滝川、士別で教えているんですが、全部で100名くらいですね。北海道では現役のサッカー選手が教える教室は初めてなんです。それと、僕が視覚障がいを持つ方々とブラインドサッカーをやっていることもあり、私塾としては珍しく札幌市の後援もついているので、障がいを持っている子供たちの受け入れ態勢も整えました。現役を辞めて北海道を回ったときに、考え方が大きく変わりましたよね。現役時代は障がい者とサッカーの関係性まで頭は回っていませんでしたから。
でも、視覚障がいをお持ちの方から『ブラインドサッカーをやってみたいんだ』と声を掛けられて『チームを探してみますね』と言ってみたものの、北海道にはブラインドサッカーのチームがなかったんです。それで、ブラインドサッカーのチームを立ち上げて、今は10人以上が参加しています。フィールドプレイヤー4人のうち2人とゴールキーパーは健常者でもOKなのが日本のブラインドサッカーのルールなので、僕もゴールキーパーで参加しています」
※芳賀さんは昨年ブラインドサッカーの日本代表の合宿にも参加している
Q:今後についてはどのような展望をお持ちですか?
「初めて2年、サッカー以外にも野球や相撲などの選手との関わりもできてきました。現在はサッカー教室やブラインドサッカーが中心ですが、今後に向けてセカンドキャリア用のツールを増やしていきたいと考えています。例えばサッカー選手が引退して、次の年から企業勤めをしなさいといっても、頭と体の切り替えがなかなかできないんですよね。社会人への準備期間としての場でもいいのかなとも思っています。北海道はサッカー選手として僕を育ててもらった場所。人柄も土地も大好きなので、その恩返しをしていければと考えています」
取材・撮影/橋場了吾(株式会社アールアンドアール)
1982(昭和57)年、宮城県仙台市生まれ。
2003(平成15)年にジェフユナイテッド市原アマチュアに加入。
翌2004(平成16)年にトップチームに昇格。
2006(平成18)年に北海道コンサドーレ札幌に完全移籍、
翌2007(平成19)年よりキャプテンに就任。
2012年に現役を引退、2014(平成26)年にNPO法人セカンドサポート設立、
理事長に就任し現在に至る。
同志社大学法学部政治学科卒業後、札幌テレビ放送株式会社へ入社。
STVラジオのディレクターを経て株式会社アールアンドアールを創立、SAPPORO MUSIC NAKED(現 REAL MUSIC NAKED)を開設。
現在までに500組以上のミュージシャンにインタビューを実施。
北海道観光マスター資格保持者、ニュース・観光サイトやコンテンツマーケティングのライティングも行う。
専門家と1時間相談できるサービスOpen Researchを介して、企業の課題を手軽に解決します。業界リサーチから経営相談、新規事業のブレストまで幅広い形の事例を情報発信していきます。