「常に最先端を目指してきた」と話す斎藤さん

首都圏への人口・商業施設の集中からの脱却を図る「地方創生」が叫ばれる中、地方の企業はどのような事業展開を進めるべきなのか、北海道札幌市に住む筆者が北海道で「地方創生」に関わる施設を紹介していきます。

今回は、札幌の百貨店激戦区である札幌駅・大通駅周辺から少しすすきの(関東以北最大の繁華街として有名ですね)寄りにある、「横のデパート」こと札幌狸小路商店街の取り組みについて紹介しています。

同商店街は150年近い歴史を持っています。当然ながら大きく街並みが変貌し、今は多くの外国人観光客で賑わう毎日。その同商店街振興組合の常務理事であり、1960(昭和35)年から営業を続ける株式会社新倉屋・代表取締役会長の斎藤嘉久さんは「狸小路だけに人が集まっても、地域創生にはならない」と話します。そのためには、どのような施策が必要なのか伺いました。

長期的な視点で施策を行わなければ廃れてしまう

Q:最近の狸小路といえば、インバウンド(訪日外国人観光客)が増えています。

「ホテルは外国人で満杯ですね。とはいえ、いわゆる「爆買い」のピーク時からは減少傾向にあるのが実情です。外国人観光客が商店街に求めるもの……地元の商品はもちろんですが、一番はWi-Fiなんですよ。海外の観光地では、無料通話・ネットができるのは当たり前ですから。

インバウンドにも対応できる観光案内所

狸小路もWi-Fiを完備していますが、現在オリジナルのシステムを構築することでコストダウンを図ろうとしているところです。電力に関してはすべてLED電球に入れ替えて、最大使用時から1/3までコストダウンに成功しました。こういう地道な努力が、10年先・20年先の商店街を作っていくと思います」

Q:未来を見据えた投資が必要ということですね。

「確かに商売には直近の利益は大切なものです。しかし、長期的な視点で施策を行っていかなければ、商店街自体が廃れてしまいます。そのために大切なことは、狸小路だけが活性化されても仕方ないということです。札幌全体、北海道全体が活性化されないと地域創生にはつながらないと考えています。
狸小路は昔ながらの雰囲気が残っていることもあって、札幌以外の地方の方々からも人気が高い場所です。しかし、その地方が盛り上がっていないと札幌にもやって来てもらえないと思うんです」

丘珠空港の利用の仕方で地方の活性化にもつながる

Q:札幌市民はもちろん、地方からの集客が商店街を活性化させると。

「そうです。今年の夏は、北海道は台風により甚大な被害を受けました。移動網が分断され、『陸の孤島』が生まれました。

JRやバスなど陸路が数日に渡って利用できなくなってしまったわけですが、この弱さを解決するためには丘珠空港(札幌市東区)の活用が不可欠だと考えています。新千歳空港から札幌まではJRで40分ほどですが、もし丘珠空港まで地下鉄が通れば(実際、地下鉄東豊線の終着駅から1駅ほどの延伸距離)、丘珠空港へのアクセスの不便さが解消され、地方から札幌への時間的距離が一気に縮まります」

たくさんの人で賑わう商店街

Q:アクセスが強化されることで、各地の商店街が活性化するというわけですね。

「はい。丘珠空港は正式には札幌飛行場という名前も持っているので、『札幌』という部分を際立たせればよりわかりやすくなると思うんですよね。15年後に新幹線が札幌にやって来る予定にはなっていますが、この15年間で状況はまた変わっていくはずです。その状況の変化に対応するためには、狸小路のような一地域だけが活性化されるのではなく、全体が盛り上がることで地方創生が実現するのではと思います

取材・撮影/橋場了吾(株式会社アールアンドアール)

小磯修二
1948(昭和23)年、大阪市生まれ。北海道開発庁(現国土交通省)を経て、
1999(平成11)年に釧路公立大学教授、2008(平成20)年に同学長に。
2012(平成24)年から北海道大学公共政策大学院特任教授。専門は地域開発政策、地域経済。

【専門家】橋場 了吾
同志社大学法学部政治学科卒業後、札幌テレビ放送株式会社へ入社。
STVラジオのディレクターを経て株式会社アールアンドアールを創立、SAPPORO MUSIC NAKED(現 REAL MUSIC NAKED)を開設。
現在までに500組以上のミュージシャンにインタビューを実施。
北海道観光マスター資格保持者、ニュース・観光サイトやコンテンツマーケティングのライティングも行う。

ノマドジャーナル編集部
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