首都圏への人口・商業施設の集中からの脱却を図る「地方創生」が叫ばれる中、地方の企業はどのような事業展開を進めるべきなのか、北海道札幌市に住む筆者が北海道で開催された「地方創生」に関するイベントのレポートを行っていきます。

今回は、元観光庁長官で現大阪観光局理事長の溝畑宏さん(自治省時代、昭和60年から2年間北海道庁地方課に勤務)が8月5日・金曜日、札幌市内のホテルで行った講演会をレポート。

この講演会は「観光立国と地方創生で北海道を元気に」というテーマで、札幌商工会議所が主催したもの。予定を大きく超える2時間に及ぶ講演の中では、自身の経験を交えながら北海道が持つポテンシャルに話が及びました。

北海道の魅力は「四季の移り変わりのダイナミズム」

溝畑さんが北海道庁在籍時に感じたことは、日本の四季の移り変わりの美しさが凝縮されているということでした。212市町村(当時、現在は179)を2年間で3周したという溝畑さんは、実感として北海道は世界に通用する魅力を持っていると考えています。

テーマは「観光立国と地方創生で北海道を元気に」

そのために溝畑さんが北海道を観光立国として強化するためにポイントになるのが、「新千歳空港と丘珠空港(札幌市東区)をどうしていくか」「2030年、新幹線が札幌に到達するときにどういう姿を目指すか」だといいます。

10年後・20年後にどのような観光都市になっているか……このイメージを持つことを大切に考え、現職の大阪観光局でも職員に「世界の高みを目指せ、世界のトップを体験してきなさい」と口を酸っぱく話しているそうです。

この「世界の高み」を目指し、10年後・20年後に活躍する人物を育てることが自分のテーマになっているという溝畑さん。これは京都大学で数学を教えていた父親の影響で、リーダーは夢を持ち誰よりも汗をかき背中で仕事をしている姿を見せることを実践しています。

自分でやりたいことを仕事にしていくことが成長につながる

「溝畑さん?もしかして……?」とピンと来たサッカーファンの方もいるかもしれません。大分県庁に出向していたときに「2002FIFAワールドカップ」の試合誘致を実現し、クラブチーム・大分トリニータを2008年のJリーグカップ優勝まで育て上げた人物です。

ワールドカップをイタリアで見たときに「この興奮を大分に持っていったら盛り上がるな、街が変わるな」と感じ、大分への試合招致に奔走。「諦めなければ、世界の高みを実現できる」を体現しました。

そこで溝畑さんが感じたことは、やりたいことを仕事にすることが成長につながり、最終的に「世界の高み」にたどり着くということでした。そして、地方でも結果を出す人間には破格の報酬を保証することで、地方に「世界の高み」を目指す人間を集めて活性化につなげる……「ローカルでも世界の高みを目指し歴史を変える」ことを目標にしてきました。

もちろん、成功することもあれば失敗することもあります。失敗したときには酷い中傷も受けたという溝畑さん、その時は必死に汗をかくことで周りを巻き込みプロジェクトを上昇気流に乗せました。

インバウンド(訪日外国人観光客)の増加に伴い、活気を取り戻している北海道の観光事業。観光地の多くが、アジアからの観光客を中心に賑わっています。とはいえ、北海道全体の景気が上向いているかと問われれば、そこには疑問符がつきます。そこで溝畑さんは、北海道の観光を盛り上げるためにさまざまな提言を行いました。

(後編へ続く)

取材・撮影/橋場了吾(株式会社アールアンドアール)

溝畑宏
1960年、京都府生まれ。
1985年に自治省に入省以降、北海道庁や大分県企画総室など25年に渡り地方行政・財政に携わる傍ら、
大分トリニータの設立にも携わり、2008年にはJリーク・ナビスコカップ優勝にまで導く。
2010年に国土交通省観光長官、2015年より大阪観光局理事長。現在に至る。
【専門家】橋場 了吾
同志社大学法学部政治学科卒業後、札幌テレビ放送株式会社へ入社。
STVラジオのディレクターを経て株式会社アールアンドアールを創立、SAPPORO MUSIC NAKED(現 REAL MUSIC NAKED)を開設。
現在までに500組以上のミュージシャンにインタビューを実施。
北海道観光マスター資格保持者、ニュース・観光サイトやコンテンツマーケティングのライティングも行う。

ノマドジャーナル編集部
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