アパレル業界専門の戦略コンサルタントとして、中小企業やスタートアップ企業など多くの企業を支援する株式会社レバレッジラボ-研究所 代表取締役の山口さん。実績・経験が豊富で、戦略的マーケティング、ブランディング、プロモーション戦略を得意としています。

前編では、山口さんの大手アパレル4社で経験した新規事業立ち上げや事業の再構築のお話しを伺いました。後編では、現在コンサルタントとしてよく受ける相談内容から、今後のアパレル企業が発展するためにすべきことについてお伝えします。

売れない理由が分からない。多くの企業が抱える課題とは?

Q:今回、Open Researchでご相談にのっていただいた企業は、創業50年の老舗アパレルで地方の企業でしたが、どのような課題を持っていたのでしょうか?

山口貴光氏(以下、山口):

最初に言われたのが、『今までのやり方では今後先が見えない、けれども何をどうしたら良いのか分からない』という内容でした。アパレル企業のほとんどに当てはまるのですが、結局商品ありきになってしまっているんですね。商品が良いというのはもちろん大切なことですが、同じようなもので溢れている今の時代に”モノ発信”では通用しないんです。商品を中心に考えていては、売り上げを上げるのは厳しいと思いますね。

Q:同様の課題を抱えて相談に来る企業も多いのでしょうか?

山口:

多いですね。「ホームページも作ったしSNSもやっている。いろいろ取り組んでいるのに商品が売れない。」そして、「売れない理由が分からない。」という相談をよく受けます。SNSなどの施策を打つのはいいのですが、それはあくまで一つの手法であって、本質がエンドユーザーに伝わらないと意味がないんです。誰に向かって・何を発信していきたいのか。それが明確化されていないから、顧客のニーズに適さないことをしてしまう。活かすべき本質を活かしていない企業が多いと感じています。

デジタルの力を利用して、お客さんをファンにする

Q:解決策として、どのような点がポイントとなるのでしょうか?

山口:

今の時代は、さまざまな消費者との接点があります。昔は店舗だけでしたが、SNSやホームページもありますよね。すべての接点において、いかに”自社のコンセプトを伝えられるか”が求められていますし、急務としてやっていかなければならないでしょうね。

ですが、これだけでは十分ではありません。たとえば自社がシューズブランドなら、手入れの仕方やコーディネートの情報など”消費者が求める情報、消費者に役立つ情報”も、どんどん発信していくべきです。それができているアパレル企業は、実に少ないです。

コンテンツマーケティングのような試みを通して、消費者がファンになるキッカケ作りをしていくことも大切ですね。

あとは、ファンをどう繋ぎ合わせるか。新規顧客と既存顧客ではケア方法がちがいますし、ベストな提案方法は異なりますよね。それが一緒くたになってしまっている企業も多いですね。新しい人へのアプローチは、しっかりと差別化していくべきだと思います。

強みを見つけて伸ばす。中小アパレルにこそチャンスあり

Q:山口さんがコンサルタントとして支援をするときに意識しているのはどんなことでしょうか?

山口:

まずはその企業の強みを探して、光らせるようにしています。デザインがいいとか、接客がすごいとか、どの企業にも、何かしら一つは強みがあるんです。ただ、やはり社長に成長意欲がなければ変革は進まないですね。「コンサルタントを入れたから上手くいく」ということでなく「あくまでやるのは自分たち」という意識を持っていただく必要があります。プロジェクトの達成に向かって一緒に走っていく、そんな姿勢が大切です。

特に中小企業のアパレルは、社長の考えひとつなんです。私が4社を経験していきた中で思ったことが「最終的に社長と話さないと事業が動かない」ということ。だからこそ、”社長と直接、対峙できる”コンサルタントという道を選びました。

Q:社長自身がキーマンとなるのですね。新しい取り組みをする中で、その他に注意すべき点はありますか?

山口:

よく私が言っているのは「手段の目的化はダメ」ということです。目的に合わせて、やるべき導線をしっかり定めていく。”何のために””なぜやるのか”を意識してもらっています。

それと、アパレル業界は消費者のニーズや購買行動の変化に敏感な業界です。それらを先取りする先見性は勿論のこと、ユーザー視点に立って、自社の商品やサービスに最適な優位性を考える”デザイン的思考”が重要です。又、一貫したブランド体験を提供するために、デジタルシフトも急務ですね。

Q:とは言っても、課題を課題だと感じていなかったり、新しい取り組みに尻込みしない会社もあると思うのですが・・・。

山口:

最初は腑に落ちない方もいらっしゃいますよ。その場合は、結果を数字として出して、時系列で見ていく。「これをやったから伸びてきているよね」という感じで、やりながら理解してもらいます。私の場合は、知識先行型のコンサルタントではなく、実績・経験先行型です。培った経験をもとに最適な施策を考えますし、過去の事例もしっかり出せますから、その点は強みだと思っています。

Q:最後に、今後どのような支援をしていきたいかをお教えください。

山口:

今は、大企業よりも中小企業やスタートアップの方が、断然チャンスがあると思っています。
やり方さえ理解すれば、大手よりもフットワークが軽いので、小回りが効くんですよ。
本気でやろうとしている企業であれば、施策がはまれば確実に伸ばせると思いますし、いくらでも変えられると思います。

僕自身も、今は中小企業やスタートアップ企業の支援をメインに活動しています。大手に比べ資金や人材、ノウハウなどに乏しい部分はありますが、「強み」だけで見てみると、決して大手に劣っているわけではないんです。欠けている部分は外部のプロと積極的に連携し、「強み」に集中できる環境を提供したり、あるいは「強み」と「強み」をかけ合わせて、シナジー効果を誘発したり、外部ネットワークを活用することで、ビジネスチャンスは飛躍的に広がります。

弊社の支援体制も、時代に合わせて”プラットフォーム型コンサルティング”という制度を取り入れています。そこで、我々がプロデュース役となり、コンサルティングのみではなく、要望があれば、コンテンツツールの制作、あるいはイベントのプランニング、人材育成研修など、弊社パートナー企業や個人が持っている「強み」をつなぎ、ワンストップ支援ができる体制を整えています。

実際、コンサルティングという一つの枠にとらわれず、シームレスな連携によって、貢献できるケースは実に多いんです。コンサルファームという専門家集団ではなく、全く背景が違う方々との連携。これらのプロデュースをより強化しすることで、中小企業、スタートアップ企業の課題に応えていければと思っています。

取材・記事制作/浅野智恵美

ノマドジャーナル編集部
専門家と1時間相談できるサービスOpen Researchを介して、企業の課題を手軽に解決します。業界リサーチから経営相談、新規事業のブレストまで幅広い形の事例を情報発信していきます。