外国人労働者の人数が増える中、注目されているのは、外国人技能実習制度です。第一次産業を主とした職種で、外国人が日本の技術を学ぶために来日し、習得後には祖国でその技術を役立ててもらうことを目的とした制度です。

最近は外国人実習生の受け入れ拡大の議論や、劣悪な労働環境などが取りざたされているので、ご存知の方も多いかもしれません。ですがあまり積極的に「技能実習生制度の是非」について考えたことはないのではないでしょうか。

これから4回にわたり、外国人技能実習生の現状や課題などを考えていきましょう。

外国人技能実習はどんな制度?

国際研修協力機構(JITCO)によると、技能実習生制度はこのように定義されています。

開発途上国等には、経済発展・産業復興の担い手となる人材の育成を行うために、先進国の進んだ技能・技術・知識(以下「技能など」という。)を習得させようとするニーズがあります。我が国では、このニーズに応えるため、諸外国の青壮年労働者を一定期間産業界に受け入れて、産業上の技能などを習得してもらう「外国人技能実習制度」という仕組みがあります。
(出展:http://www.jitco.or.jp/system/seido_enkakuhaikei.html

ここで重要なのは、「一定期間」受け入れるということです。つまり、技能実習後は帰国することが前提となっています。

また、厚生労働省は、「開発途上国等の経済発展を担う『人づくり』に協力する」ことだと記しています。(出典:http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/shokugyounouryoku/global_cooperation/gaikoku/

技能実習制度は、「国際協力として、開発途上国などの人材育成に力を貸す」ことが理念とされています。日本が欧米諸国のように移民を受け入れていないという事実を踏まえ、日本も国際協力をしているアピールをしたい、という思惑もあるでしょう。

厚生労働省の報告によると、2015年度末の時点で、約20万人の外国人が技能実習生として日本に滞在していました。中国出身者が46.2%を占め、ベトナムの29.9%が続きます。その2か国の出身者を合わせれば、76.1%にのぼります。

技能実習生が従事できる職種は74あります。その職種を大きく分け、従事者数別に並べると、このようになります。

・機械・金属関係職種(金属プレス、電子機器組み立て、機械検査など):12,720人
・繊維・衣服関係職種(靴下製造、寝具制作、自動車シート縫製など):9,337人
・建設関係職種(とび作業、石材加工作業、壁装作業など):8,839人
・食品製造関係職種(調味加工品製造、パン製造、総菜加工など):7,988人
・農業関係職種(園芸や野菜、畜産など):7,785人
・漁業関係職種(刺し網漁業、いか釣り漁業など):743人

技能実習生を受け入れる日本の思惑

外国人労働者の受け入れを拡大しているとはいえ、日本で働く外国人労働者の数は、相対的には少ないのが現状です。理由は、外国人が日本で就労するためには多くの条件をクリアせねばならず、規制が厳しいからです。

日本はそもそも、「単純労働者は受け入れない」という方針を掲げていました。ですが、単純労働者の人手不足を受け、外国人の受け入れを検討せざるを得ない状況になりました。

単純労働者は受け入れられないものの、研修生として受け入れれば労働者扱いはできない。日本の「単純労働者を受け入れない」という方針を形式上守りつつ、事実上労働力として外国人を受け入れることを可能にしたのが、外国人実習生度です。

国としては、定住化する心配がいらず、国際協力のアピールもできる上、人手不足の分野の労働力を確保できる、メリットが大きい制度です。また、送り出す国としても、日本での技術を習得した人材が自国で貢献してくれるというメリットがあります。

技能実習生の現状と課題

トランプ大統領の就任、立て続けに行われるヨーロッパ諸国の選挙、北朝鮮の挑発など、現在の国際情勢は、非常に不安定です。そんななかで日本は、存在感を示し、国際競争に勝ち抜かなければなりません。そのため、技能実習制度は、都合のいい「国際協力」のかたちであると言えます。

制度としてみると、実習生側も雇用者側も、受け入れ側も排出側もメリットがあるように思えます。ですが「外国人実習生」とグーグルで調べると、サジェストの1番上に「奴隷」、2番目に「失踪」が続きます。

技能実習生を取り巻く環境は、常に理想的な国際協力であるとは限りません。制度には正しい使い方と間違った使い方があり、制度の悪用は、大きな国際問題に発展する可能性もあります。

外国から労働者を受け入れるということは、一歩踏み外せば、日本と労働者を送り出す国との関係が悪化する危険性もあるのです。

「実習後は国へ帰る」と安易に考えることなく、理念である「国際協力」を前提として、しっかりと制度を運用していかなければなりません。

次回は「理想的な制度としての技能実習制度」、次々回は「技能実習制度の問題点」について考え、技能実習制度の是非について考えていただきたいと思います。

取材・記事制作/雨宮 紫苑

ノマドジャーナル編集部
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