右:株式会社マクアケ 執行役員 菊地 凌輔氏(以下、菊地)
左:株式会社サーキュレーション 執行役員 笹島 敦史(以下、笹島)

株式会社サーキュレーションは事業会社内で独自のプロシェアリング事業を内製化する「プロシェアリングパートナー」を通じて、株式会社マクアケと共同で「マクアケプロシェアリング」の提供を開始しました。

今回は同社の執行役員である菊地 凌輔氏をお招きし、どのような経緯や想いで「マクアケプロシェアリング」の立ち上げに携わったのかを伺いました。菊地氏が考えるマクアケプロシェアリングの意義や展望についてもお伝えします。

「マクアケプロシェアリング」開始の背景

──プロシェアリングを通じた新たなサービスを導入すると決めた理由をお聞かせください。

菊地:私たちは、プロジェクト実行者が開発背景などのストーリーとともに発表する新商品や新サービスを、サポーターが応援の気持ちを込めて先行購入することができる、アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」というプラットフォームを運営しています。

2013年に創業してから10年以上、新商品・新サービスのデビューに向き合い続けてきた結果、プロジェクトに挑戦する実行者・新しいものに出会いたいサポーターの両者から価値を感じていただいています。

我々はそれぞれのお客様が掲げている夢やビジョンを実現するための手段として、新商品・新サービスのデビューを支援していますが、単なるデビューにとどまらず、その後の事業成長まで見据えた体制を構築し、真に寄り添えるパートナーであり続けたいと考えています。

株式会社マクアケ 執行役員 菊地 凌輔氏

──プロシェアリングに出会ったことで、どのような可能性が新たに見えてきたのでしょうか?

菊地:弊社が掲げる「生まれるべきものが生まれ 広がるべきものが広がり 残るべきものが残る世界の実現」というビジョンの実現のためには「Makuake」でのデビューフェーズを終えた後も様々な支援が必要と考えているので、志を同じくする企業様と連携しながら、お客様にとって最適なサービスをご提案することが重要です。

これまでも様々な連携を通じて「Makuake」以外のサービスの提供を試みてまいりましたが、これまでは紹介先の企業のサービスであり、マクアケで深部まで追求できませんでした。この経験から、外部サービスの紹介にとどまらず、お客様の夢を共に追い、確実に事業成長へと導ける真のパートナーシップを求めていました。その時に出会ったのがプロシェアリングパートナーという新たなアプローチでした。我々はこのプロシェアリングパートナーを通じて、お客様の事業の成長に深く伴走できると確信し、「マクアケプロシェアリング」の立ち上げに挑戦する決意を固めました。

──プロシェアリングがマッチすると考えたのはどの様な部分でしょうか?

菊地:サーキュレーションが掲げる「世界中の経験・知見が循環する社会の創造」というビジョンそのものですね。
事業の成長を考えると、課題をスピーディーに解決することは企業にとってとても重要なことです。ですが、全てを自社内のリソースで解決するのは限界があると考えています。
もちろん自社内のメンバーだけでできるのであれば理想的だとは思いますが、今後ますます市況の移り変わりも早くなるなかで、自前にこだわるあまりに回り道をしてしまうとビジネスチャンスを逃すことにも繋がるため、専門的な経験・知見を保有するプロ人材を活用することでスピーディーに課題を解決し、事業成長に繋げる手段を用意することは重要だと考えました。

弊社では、お客様のプロジェクトの魅力を最大化するために、クリエイティブやプロモーション、審査など様々な提案・サポートを通じ成功に向けて伴走する担当を「キュレーター」と呼んでいますが、キュレーターが産みの苦しみをお客様と同じレベルで理解し共に乗り越えていくからこそ、新商品・新サービスのデビュー後の事業展開から成長までをストーリーとして提案し続けていくことは使命であり、かつ我々だからこそできるのではないかと考えています。

マクアケとサーキュレーションは出会うべくして出会った

──サーキュレーションがプロシェアリングパートナーを立ち上げた背景を教えてください。

笹島:弊社は「世界中の経験・知見が循環する社会の創造」をビジョンに掲げています。
今後の人口減少が進んでいく日本においては、より人材の確保が難しくなっていきます。人材の確保が出来ないということは挑戦や変革の機会を逃すことに直結し、企業の成長が鈍化することに繋がりかねません。そのため弊社は働く人が持つ1人1人の経験・知見を1社で独占するのではなく複数社でシェアしていく価値観を人と経営に馴染ませていくことで、雇用では出会えなかった人材との出会いをより早く、より確実に創出していきます。結果、経営者の「やりたい」を先送りにせず、社長が「やりたい」と願ったその瞬間に動き出しができる世界を目指しています。

この実現には労働人口の65%を占める地方企業や、日本企業の99%を占める中小企業が持つ働く価値観を変えていくことが必要不可欠だと考えています。

弊社が初の地方拠点として関西支社を立ち上げたのが2017年。それから7年が経ちましたが、まだまだ全ての地域・企業にプロシェアリングを届けられたわけではありません。地方の人口減少やその先に起きうる地域経済の衰退の速度に対して、いかにプロシェアリングを届けることで価値観を変えていく速度が上回れるかの勝負だと強く感じています。

株式会社サーキュレーション 執行役員 プロシェアリングコンサルティング・地方拠点担当 笹島 敦史

この勝負に勝つための戦略として、弊社は現在90行庫以上の金融機関と提携しています。新しい価値観を届ける際、私たちが直接経営者にアプローチをしても警戒されることがほとんどですが、価値観を変える勝負をしている以上、警戒されていては何も進みません。私は届けているサービスには自信があったため、情報の届け方を変えることにしました。経営者は身近な人からの情報を信じる傾向にあり、各地域の経営者から信頼されている地方銀行員の皆様と手を組み共に情報を届けることで、より早くより確実に、プロシェアリングを届けていける手応えを強く感じています。

プロシェアリングパートナーの立ち上げのきっかけは、銀行員との連携を重ねていくなかで彼らが経営者から圧倒的な信頼を得ていることを確信したからです。だからこそ、銀行から経営者のご紹介を受ける従来のビジネスマッチングに留まることなく、銀行員にプロシェアリングを習得していただき、銀行員が直接経営者に届けることができれば、今よりももっと早く、全国の経営者にプロシェアリングを届けられると考えています。現在はプロシェアリングパートナーとしてプロシェアリングを自行サービス化した金融機関は7行まで拡大しています。

──そこから金融機関のみならず事業会社ともプロシェアリングパートナー提携を行うことに決めた理由をお聞かせください。

笹島:プロシェアリングパートナーの取り組みには可能性を感じており、今後も全国の金融機関と連携を深めていきたいと考えていますが、全国の金融機関には数に限りがどうしてもあること、また金融機関だけではアプローチできない企業層もあると感じています。そのため、さまざまな事業会社ともプロシェアリングパートナーを共に立ち上げることで、弊社のビジョン実現に近づけると考えます。

──その中で、マクアケ様と提携しようと思ったのはどうしてでしょうか。

笹島:中小企業に対する想いや支援実績の多さはもちろんありますが、最終的にはマクアケ様のビジョンに惹かれたからですね。マクアケ様については、以前弊社が新規事業開発でご支援した企業様が、「Makuake」をプラットフォームとして活用したのですが、その際のキュレーターの方が企業と向き合う姿勢に感銘を受けたことは今でも鮮明に覚えています。
菊地さんとは共通の知人から紹介を受け会食をしたのですが、お互い創業から十数年経つ上場企業の役員で、実現したい想いも近いものがありすぐに意気投合し、2人でキャンプに行きましたね。

菊地:焚き火を囲みながらの会話は今でも忘れられません。

笹島:菊地さんがマクアケのビジョンである「生まれるべきものが生まれ 広がるべきものが広がり 残るべきものが残る世界の実現」のなかで「広がる・残る」にまだアプローチしきれていないことがもどかしいと語ってくださったとき、マクアケプロシェアリングを今すぐに始めるべきだと思いました。マクアケプロシェアリングはマクアケ様としてもサーキュレーションとしてもお互いのビジョンの実現に向けて、今よりも一歩先へ行ける武器となると思っています。

そのままキャンプ場で語り合ったのですが、これから私たちが共に出会っていくお客様の未来を想像するとワクワクが止まらなかったことをよく覚えています。あの日の感情は1年経った今でも変わっていないですね。

菊地:私もワクワクが止まらず、そのままの勢いで翌週には代表に相談を持ちかけていましたよ。そして翌年2024年3月からまずは、ビジネスマッチング(案件の紹介)としてサーキュレーションとの提携がスタートして、2024年6月から満を持してプロシェアリングパートナー提携が始まり、今回本格的な提供を開始したというわけです。

新商品・新サービスのデビューの一歩先へ

──マクアケ様との協業がはじまり、改めて感じたマクアケ様の魅力についてをお聞かせください。

笹島:なによりマクアケファンがとても多いことです。お客様からこんなにもファンになっていただける会社はそう多くはないんじゃないかと悔しさを覚えるほどです。
「マクアケさんのおかげで新しいステージに進むことができたから、マクアケさんからの提案なら聞いてみたいです」と言ってくださるお客様が多く、本業である「Makuake」で如何にお客様の想いを主語にしてとことん寄り添っているのかを垣間見ることができた瞬間でした。

そして、マクアケ様のお客様で「現状維持で満足している経営者」が非常に少ないというのもかなり特徴的だと思います。自分たちが創りたい新商品・新サービスに対して「Makuake」を活用した際の成功確率は100%ではありません。もしかしたら応援者が集まらないかもしれない不安と期待があるなかでも、現状維持ではなく何か新しいことに挑戦していくという強い想いを持った創業者や代表者と出会えるのがマクアケ様です。プロシェアリングを活用いただく経営者もそういった方が多いので親和性を感じています。

菊地:私も「Makuake」にはおもしろい挑戦者たちが多く集まっていると思います。

──どうしてその様な方が集まるのでしょうか?

菊地:私たちマクアケはインターネット企業として創業して、当時から商談などに関してはリモートでもできる風潮はあったものの、お客様と同じ空気を感じながら対面でご相談ができる機会をなによりも大事にしてきました。お客様と同じ空気を感じながら、時には工場にも足を運び、どういうものづくりをしているのか、どんな社員様がどんな想いで働いているのかを生で見てお客様とともに新しいものを産んでいくことを大切にしてきました。

新しいものを産むというのは前例のない挑戦なので、お客様は「これって本当に売れるのだろうか、どんな評価をされるのだろうか」という不安な気持ちや、様々な反対意見もありながらデビューしていきます。

簡単な挑戦ではないので、その過程でお客様の気持ちが途中で途切れてしまうことのない様に、伴走することで同じ方向を向いて、空気を感じながら支援をしてきているのは大きいのではないかと考えています。

伴走するという気持ちは、フロントに立つキュレーターだけではなく、審査、広報、CSや開発なども含めて全社・全部署をあげてご支援をできていることがファンになっていただける要因かと思います。

新たな挑戦への扉を開く──「マクアケプロシェアリング」がもたらす支援

──プロシェアリングの発足にあたって、困難や壁を感じた部分はありますか?

菊地:私自身、2015年1月に関西支社の立ち上げに携わって以来、関西エリアのお客様と深く関わってきました。まずはこれまで接点を持ってきたお客様の中で、プロシェアリングに関心を持ってくれそうな方に2024年の4月頃から連絡を取り始めました。

しかし、なかなか契約に至らず、6月頃に「もっと集中して取り組まないと前に進まない」と決意しました。他の部署に任せるのではなく、自分が率先して実績をつくることが大切だと考え、様子見のビジネスマッチングではなく「マクアケプロシェアリング」として本格的に動くべく、パートナー契約を結びました。

その結果、8月には念願のご契約をいただけるようになりました。

──これまでにはなかったサービスをお客様にお話ししてどんなリアクションだったのでしょうか?

菊地:多くの方から「素晴らしいサービスですね」と評価をしていただいております。
また、近年では正社員を雇用するのはリスクが高いと感じる経営者も増えてきています。スポットでプロの知見を借りながら事業成長を目指す考え方には、「Makuake」の多くのお客様からも共感を得ています。しかし、月額の固定フィーが必要なため、全てのお客様が利用できるわけではありません。

私たちマクアケが支援する企業の中には社員数が10人以下の規模の会社もあり 「プロ人材に入ってもらう前にできる限り社内体制を整えたい」 などお客様のチャレンジャー精神に火をつけてしまって「プロの力を借りるのはもう少し待ってください」と契約が先延ばしになることもありました。ただ、お客様の意識に火をつけることができたことは成果だと感じていますので、実際に必要だと感じていただけたタイミングで適切なアプローチを続けていきたいと思っています。

──特に印象に残っている企業様はありますか?

菊地:過去「Makuake」をご活用いただいた企業様で、これまでのブランドとは全く異なるプロジェクトを実施され、その結果プロジェクトは1000万円以上の成功を収めたというお客様がいらっしゃいました。

その方にマクアケプロシェアリングのご提案をした際には、その新ブランドを成長させるために、ECやWebマーケティング、販路拡大についてのニーズがあると思っていました。しかし、お話を進めるなか会社全体では既存ブランドの方が依然として9割の売上を占めていること、そしてその既存事業の売上が全盛期の2/3程度まで落ち込んでいるため、まずはそちらを立て直さないことには新しい挑戦への投資が難しい、とのお話がありました。

これまでは「Makuake」によって支援した事業以外の領域へのフォローについては、対応が難しい部分でしたが、プロシェアリングを通じて新規事業だけでなく、経営者が感じている課題や事業ポートフォリオ全体を深く理解し、既存事業の拡大が先決だと判断しました。こうした既存事業への支援が可能になったのは新たな経験です。

今後、1年で既存の売上を回復できれば、新しいブランドを成長させ、さらなるポートフォリオ拡充のサポートに進むというステップが見えてきました。

日本や地域を変える「事業会社×プロシェアリング」への期待

──最後にマクアケプロシェアリングにかける想いをお聞かせください。

笹島:マクアケの中にプロシェアリングというものが溶け込み、マクアケプロシェアリングによって、マクアケがもっとよくなっていく一つの武器になって欲しいです。あくまで主人公はマクアケで、右手にマクアケプロシェアリングがあるだけだと考えています。

これまでは、新しいものを企画して生み出しても、それを持続的なサイクルや社内外の循環にまで発展させることが難しい面があったと思います。しかし、マクアケプロシェアリングが「ポンプ」としてその循環を生み出す役割を果たせるなら本望です。マクアケプロシェアリングをぜひ思う存分活用いただき、その結果として両社のビジョンに近づくことができたら良いですね。

菊地:お客様と数ヶ月多くお話ししている中で、「Makuake」ではうまくいったけどその後どうしていいかわからない、うまくいかないとお話しいただく場面もあり、新商品や新サービスのデビュー後のお客様の課題が根深いと感じています。

新しいものが産まれ続けるグッドサイクルは本来、新商品を産み、商品が継続的に売れ、投資余力ができ、会社の中でモメンタムが産まれ、また新しい商品を産むという流れです。
「Makuake」でデビューした後も事業を伸ばすことができるサイクルを回し続けることで、生活者目線でもイノベーティブな商品が生まれ、豊かな生活になると考えています。

その中のサイクルを回すものの一つとしてマクアケプロシェアリングがあり、これからの取り組みが楽しみです。

※記事内の所属・役職は全て2024年11月20日当時のものです。