今回は、借入金の返済が間に合わない時の対応方法について解説いたします。

受けた融資は期限までにきちんと返済するのが当たり前ですが、利益が予想を遥かに下回ってしまった、想像もしなかった外的要因で売上が上がらないなど、不測の事態が起こってしまう可能性もあります。

万が一とはいえ、リスクヘッジをしておいて損はありません。
リスケについて理解すると同時に、金融機関との信頼関係を構築するなど、日頃から備えをしておきましょう。

返済のリスケは非常事態、と認識しておく

Q:借入金の返済を延ばしたいと考えておりますが可能でしょうか

A:金融機関や会社の状況にもよりますが、返済延期の交渉は可能です。
事業を開始し無事に金融機関から融資を受けたとしても、残念ながら返済が難しい状況となることがあるでしょう。そこで実務では返済の猶予や減額を金融機関に依頼することがあります。これを「リ・スケジュール」略して「リスケ」と呼びます。

本来であれば、融資を受ける際に決めたスケジュールをこちら側の都合で延期依頼することですので、リスケは非常事態ということをまず念頭においてください。
とはいっても、企業だって好き好んでリスケをするという企業はさすがにないでしょう。無い袖は振れない状況であれば、金融機関にリスケを依頼することとなります。

リスケの依頼も、金融機関への対応も、誠実さと信頼が鍵

Q:やむなくリスケをする場合には、どのような手続きが必要でしょうか。

A:リスケを依頼する際には、金融機関にもよりますが「事業計画書」「資金繰り表」の二つは必須資料となります。
また、融資を受けた際に提出した事業計画書と資金繰り表があれば、なぜリスケをする状況になったのか、きちんと分析して報告できる状態にしておくことが必要です。現状分析をしっかりとできない会社に対してリスケをしてくれるほど金融機関は甘くはありません。

さらに、これまでの事業実績や今後の事業環境を見据えた事業計画書とそれに対応した資金繰り表を作成する必要があります。特に資金繰り表については、これからどうやって事業資金を稼いで、いつから、どれくらいの返済が可能なのかを示す必要があります。将来のことをどれだけ具体性を持って示せるか、経営者の手腕が問われるところです。

その場しのぎの事業計画や資金繰り表の提出には要注意

ここでひとつ、具体例を上げてみます。新しいWebサイトを作るための融資であれば、Webサイトを作るための人件費、サーバ費用といった支出項目に加えて、広告収入や課金収入がいつ頃から、どれくらい発生するのか事業計画書と合わせて資金繰り表を作成する必要があります。

くれぐれもその場しのぎのために、気軽に事業計画書や資金繰り表を作成することないよう気をつけてください。そのような資料を持参してしまうと金融機関側としては経営者を信用できずリスケに応じないばかりか、融資の返済を強硬に求めてくる可能性もあります。

例えば、右肩成長の事業計画を持参して意気揚々と融資を受けた後に、言い訳ばかりして計画がまったくの未達で、会社の財政状態が悪化する一方であれば、融資の返済を求められてしまうでしょう。

リスケが必要とならないよう、業績をしっかり伸ばして内部留保をしておき、会社の財務を強化しておくことが最優先ではありますが、不測の事態が起こってしまった時のために金融機関と普段からコミュニケーションを密にとっておくことも大事です。
担当者と日ごろから情報交換に励み、誠実に経営を行うことで、リスケを依頼できるような信頼関係を構築しておきましょう。

専門家:江黒崇史
大学卒業後、公認会計士として大手監査法人において製造業、小売業、IT企業を中心に多くの会計監査に従事。
2005年にハードウェアベンチャー企業の最高財務責任者(CFO)として、資本政策、株式公開業務、決算業務、人事業務に従事するとともに、株式上場業務を担当。
2005年より中堅監査法人に参画し、情報・通信企業、不動産業、製造業、サービス業の会計監査に従事。またM&Aにおける買収調査や企業価値評価業務、TOBやMBOの助言業務も多く担当。
2014年7月より独立し江黒公認会計士事務所を設立。
会計コンサル、経営コンサル、IPOコンサル、M&Aアドバイザリー業務の遂行に努める。
ノマドジャーナル編集部
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