首都圏への人口・商業施設の集中からの脱却を図る「地方創生」が叫ばれる中、地方の企業はどのような事業展開を進めるべきなのか、北海道札幌市に住む筆者が北海道で「地方創生」に関わる施設を紹介していきます。

今回は、7月にリニューアルオープンした北海道大学総合博物館(札幌市北区)を訪問してきました。1999(平成11)年にオープンした同館は、展示物の老朽化や耐震工事に対応するため1年強全面休館し、先日再開館したばかり。

そのリニューアルに尽力した山本順司・総合博物館准教授(理学博士)に、地方における大学博物館のあり方について伺いました。

リニューアルには北海道の民間企業が協力

Q:こちらの博物館には、300万点もの標本が貯蔵されているそうですね。

「1999年のオープン時に、北海道大学の各学部で貯蔵していた標本を集めて博物館が管理することになりました。その数が300万点ほどなのですが、実は公開しているのは1万点ほどです。理由は、スペースの問題です(笑)。それと展示してしまうと劣化が進むという理由もあります」

Q:民間会社との関係性はどのようになっていますか?

「今回のリニューアルにあたり、北海道の企業さまに協賛金という点も含めて多数ご協力いただきました。私は小中学校に出張授業を行うこともあるのですが、その時に使用するスーツケースを寄贈いただいたり、飛行機分野で活躍した教授のパネル製作にはAirDoさんにご協力いただいたりしています。
ただ、私たちはそういう営業活動が不慣れでして(笑)。これまでやってこなかったことをやったものですから、協賛金のお願いをするにあたり企業のリストを作って一社一社博物館のリニューアルオープンについてお話をしました

北海道大学の中心付近にある博物館

Q:これまでの大学博物館とはどのような違いがありますか?

「来館いただく方へのサービス部分では、大きく変わったと思います。まず、コインロッカールームを順路に合わせて設置し、セキュリティ上安全なように中を見える形にしました。そして、オストメイト対応トイレと授乳室も設置するなどバリアフリーにも配慮しています」

博物館は大学の広報の窓口という役割を持っている

Q:大学以外の来館者にも開かれている場所なんですね。

「この博物館の大きな目的のひとつに、広報戦略があります。情報の受発信拠点ということで、大学からの情報を発信し、地域の方々の交流をし、学生の福利厚生の場である……博物館が大学の窓口としての役割を持っているわけです

Q:広報という部分では、民間企業に通ずるものがあると思いますが。

「大学からの情報発信という意味では、私たちの商品は『研究者』であって、それらの商品を学生に『買ってもらう』=『入学してもらう』ということなんです。あとは優秀な研究者を集めるためにも、大学自体のブランディングが必要になるんです。優秀な研究者が集まると、特許の取得や論文の発表などで外貨を獲得でき、それがまた研究や博物館の運営などに使用されるわけです。

ですので、今回のリニューアルでは、各学部や施設がどのような取り組みをしていて、どのような研究者がいるのかをわかりやすく押し出した形の展示を進めることに注力しました」

Q:大学の運営にはそのような側面もあるんですね。

大学の研究者の活動というのは、なかなか表に出てくるものではないので、それらを表に出すのが私たち博物館の仕事・役割です。これをアウトリーチ活動と呼んでいますが、北海道大学にはノーベル賞を取り損ねてしまったものの素晴らしい活動をしてきた研究者がたくさんいるので、彼らの業績をピックアップした展示コーナーも作りました」

(後編へ続く)

取材・撮影/橋場了吾(株式会社アールアンドアール)

【専門家】橋場 了吾
同志社大学法学部政治学科卒業後、札幌テレビ放送株式会社へ入社。
STVラジオのディレクターを経て株式会社アールアンドアールを創立、SAPPORO MUSIC NAKED(現 REAL MUSIC NAKED)を開設。
現在までに500組以上のミュージシャンにインタビューを実施。
北海道観光マスター資格保持者、ニュース・観光サイトやコンテンツマーケティングのライティングも行う。

ノマドジャーナル編集部
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