子どもたちが体験できる展示も

首都圏への人口・商業施設の集中からの脱却を図る「地方創生」が叫ばれる中、地方の企業はどのような事業展開を進めるべきなのか、北海道札幌市に住む筆者が北海道で「地方創生」に関わる施設を紹介していきます。

今回訪問した北海道大学総合博物館(札幌市北区)は、1999(平成11)年にオープンし展示物の老朽化や耐震工事に対応するため1年強全面休館し、今年7月にリニューアルオープンしたばかり。

後編は、そのリニューアルに尽力した山本順司・総合博物館准教授(理学博士)に、リニューアル後の展示に込められた思いについて伺いました。

大学と地域を結ぶことが博物館の役割

Q:このような大学の歴史や研究がわかる博物館があると、進学を希望している学生の理解も深まるように感じました。

「今回のリニューアルの目的のひとつはまさにそれで、入学してくる学生のミスマッチングを事前に防ぎたいというのがありました。そのため、各学部の先生方にも『高校生が見て、研究が理解できるような目線で展示を考えてほしい』というお願いをして、北海道大学という文系・理系・医学部系すべてが揃っている大学ならではの展示ができたと思います

ミスマッチングは、大学にとっても学生にとっても不幸なものです。せっかく入学しても、自分の研究したいこととズレがあると学生もやる気をなくしてしまいますから、今後入学してくるであろう学生の満足度を上げるためにも必要な展示だと考えています」

Q:展示の中には大学と企業が協力しているプロジェクトの展示もあり、ビジネスのヒントもたくさんあると思いました。

大学でどのような研究が行われているかを表に出すことで、学生はもちろん民間企業にとってもヒントになるような種まきをしたつもりです。実際、『下町ロケット』のモデルといわれている植松電機(北海道赤平市)とのロケットの共同開発についての展示もあります。大学と地域を結ぶことこそ、この博物館に課せられた役割だと思っています」

山本准教授の研究室も公開

「産」「学」「官」「民」の4つが揃う場所を目指す

Q:こちらの博物館ではさまざまなイベントが開催されたり、カフェスペースがあったり、新しい取り組みもありますね。

「どうしても大学の博物館というと敷居が高いようで、何重ものバリアが張られているようなんです(笑)。そこで、博物館に子どもたちが内視鏡手術や歯科治療のシミュレーションが体験できるような展示をしたり、2004年の強風により倒れてしまったポプラ並木(北海道大学の中にあり観光地にもなっている)の材木を使ったチェンバロによる演奏会を開いたり、お客さんを増やす施策も行っています。

また今回NPO法人のお力も借りて、カフェも設置しました。北海道産の原材料を使用したメニューを提供していますし、学生がアルバイトとして働いています」

Q:今後の博物館のあり方についてはどのように考えられていますか?

「大学の研究者は、突然大学以外の企業などと関係を構築したいと思っても、外部のパイプを持っていないのですぐにはなかなか進行しないものです。そこで私たち博物館がそのパイプ役となって、大学と地域を結んでいきたいと考えています。その逆もありますね。大学以外の方々に博物館に来ていただくことによって、大学が得られる情報もたくさんあります。「産」「学」「官」「民」の4つが揃う場所を目指して、今後も展示・イベントを充実させていきたいと思います

取材・撮影/橋場了吾(株式会社アールアンドアール)

【専門家】橋場 了吾
同志社大学法学部政治学科卒業後、札幌テレビ放送株式会社へ入社。
STVラジオのディレクターを経て株式会社アールアンドアールを創立、SAPPORO MUSIC NAKED(現 REAL MUSIC NAKED)を開設。
現在までに500組以上のミュージシャンにインタビューを実施。
北海道観光マスター資格保持者、ニュース・観光サイトやコンテンツマーケティングのライティングも行う。

ノマドジャーナル編集部
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