首都圏への人口・商業施設の集中からの脱却を図る「地方創生」が叫ばれる中、地方の企業はどのような事業展開を進めるべきなのか、北海道札幌市に住む筆者が北海道で開催された「地方創生」に関するイベントのレポートを行っていきます。

今回は、元観光庁長官で現大阪観光局理事長の溝畑宏さん(自治省時代、昭和60年から2年間北海道庁地方課に勤務)が8月5日・金曜日、札幌市内のホテルで行った講演会をレポート。

この講演会は「観光立国と地方創生で北海道を元気に」というテーマで、札幌商工会議所が主催したもの。後編は、観光による地域活性、地方創生について北海道への提言をレポートします。

オリンピック招致で日本の復活した姿を見せたかった

2011(平成23)年3月。東日本大震災が起こり、大ダメージを受けた日本列島。当時観光庁長官だった溝畑さんは、「このままでは本当に日本はだめになる」と感じ、将来的な「夢」を持つことを提案しました。それが東京オリンピック・パラリンピックの開催です。そして2020年に開催が決定、日本が復活した姿を世界に見せる舞台が整いました。

しかし、一つの懸念が溝畑さんを襲います。「東京の一極集中がさらに進んでしまう」……その一極集中を解消するために、現在は西の雄・大阪の観光を盛り上げるために尽力しています。

そしてもうひとつ、日本を盛り立てる要素が、北海道の観光・食・スポーツによる発展です。2020年は東京、2025年は大阪・名古屋、2030年は北海道……日本全国万遍なく観光事業を発展させること、これが溝畑さんの考える日本の観光立国化です。

講演会にはたくさんの関係者が詰めかけました

北海道の観光で今後重要なのはMICE対策

日本の観光は右肩上がりで推移してきたため、ほかの世界の国々と違い「戦略産業の1丁目1番地」にならなかったという歴史があります。しかも、現在も観光産業は全体でみると成長中です。しかし、アジアの経済成長によるインバウンド(訪日外国人観光客)の増加により、外貨を獲得するためには「地域の総合的戦略産業」にする必要があると溝畑さんは説きます。

そこで大切になるのは、観光に携わる人は「地域が大好きなプロデューサー」でなければならないということ。そして、頑張れば頑張るほど給料が上がる仕組みを整えるということです。「そうしなければ、優秀な人物は絶対に来ない」と溝畑さん。関わった人の給料が上がる組織があり、多くの業界を取り込んでいくこと……それが観光を発展させる要素になるということです。

そしてもうひとつ、大量の広告出稿は不要でSNSを通じた省コストの広告効果が観光発展のポイントになります。北海道の持っている資源はほかの都府県と比較しても素晴らしいものがあると語る溝畑さんは、「どのようにその良質な素材を料理するか、プロデュースするか」がポイントになると力説しました。

また今後はMICE(Meeting・Incentive・Conference or Convention・Exhibition)対策も重要になり、「北海道はシンガポールの観光政策(MICEを含む総合リゾート化)が参考になるのでは」との提言もなされました。いわゆる長期滞在型観光客をどう楽しませるか、リピーター化するかが鍵というわけです。

最後に「観光に携わる人も、そうではない人も『夢』を持つことが大事」と語った溝畑さん。この北海道を、将来どのような姿にしていきたいのか。それは、我々北海道民にとっての「夢」と「未来」につながるものなのです。

取材・撮影/橋場了吾(株式会社アールアンドアール)

溝畑宏
1960年、京都府生まれ。
1985年に自治省に入省以降、北海道庁や大分県企画総室など25年に渡り地方行政・財政に携わる傍ら、
大分トリニータの設立にも携わり、2008年にはJリーク・ナビスコカップ優勝にまで導く。
2010年に国土交通省観光長官、2015年より大阪観光局理事長。現在に至る。
【専門家】橋場 了吾
同志社大学法学部政治学科卒業後、札幌テレビ放送株式会社へ入社。
STVラジオのディレクターを経て株式会社アールアンドアールを創立、SAPPORO MUSIC NAKED(現 REAL MUSIC NAKED)を開設。
現在までに500組以上のミュージシャンにインタビューを実施。
北海道観光マスター資格保持者、ニュース・観光サイトやコンテンツマーケティングのライティングも行う。

ノマドジャーナル編集部
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