【連載第4回】
「働きがいのある会社」ランキング(2015年)で16位となったセールスフォース・ドットコム。本連載では、CRMソフトウェア世界市場におけるシェア1位を誇る同社の「顧客をファンにする働き方」をテーマに、Employee Success(人事部)ヴァイス・プレジデントの石井早苗氏にお話を聞きました。 本連載のインタビュアーは、自身もワーキングマザーとして働きながら、クラウドを活用したワークスタイル変革に取り組む、古川いずみ氏に担当いただきました。
*本連載は書籍『エバンジェリストに学ぶ 成長企業のためのワークスタイル変革教本』の内容をもとにお届けします。本書籍では先進IT企業で働くエバンジェリストの皆さんにその「働き方の可能性」についてお聞きしています。ご自分の会社でも使えるかも??と思っていただけたらぜひ書籍版もご覧ください。
変われる会社の条件 変われない会社の弱点(編:森戸裕一 /JASISA)¥1,296
成長する会社は何が違うのか?第一線のエバンジェリストに学ぶ働き方マネジメント。本書では、先進IT企業の”エバンジェリスト”が「企業を成長させるワークスタイル変革」について語ります。
●収録
ワーク・ライフバランス 小室淑恵氏、サイボウズ 野水克也氏、日本マイクロソフト 西脇資哲氏、セールスフォース・ドットコム 石井早苗氏、ソフトバンク 中山五輪男氏、グーグル 佐藤芳樹氏、シスコシステムズ 八子知礼氏(※八子氏はインタビュー後退職)
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ITと旧来文化の融合で〝日本的〟なワークスタイルを
古川:
セールスフォース・ドットコムさんには、社員向けのユニークな制度がいろいろありますね。その中で、何か社員の方のニーズを元にしてできた制度などがありましたらぜひ教えてください。
石井:
まずグローバルで面白い取り組みといいますと、米国本社には「パピーフォース」という制度があります。
オフィスに愛犬を連れてきて一緒に仕事ができるのです。もちろん特定のエリアですが、そこにはケージもドッグランもあって、そこにPCを持ってきて愛犬の脇で仕事ができるのです。これは大変ユニークですし、日本でも導入してほしいという社員もいますが、今のオフィスでは少々難しいですね(笑)。
逆に、日本法人が始めた制度に「マッサージルーム」があります。目の障がいを持つ方でマッサージや鍼などの資格のある方を採用し、社員の福利厚生として予約制のマッサージを無料で受けられるようにしたのです。
政府が進めているダイバーシティ推進構想では女性活用が大きく謳われていますが、性別だけではなく、外国人や障がいを持った方など多種多様な人々がいることで刺激を受けて、改革的なアイデアが生まれることを期待されています。障がい者雇用というと、あまり本人の負担にならないように簡単な事務やアルバイトのような仕事を割り振るケースが多いかと思いますが、弊社では新しい発想で障がい者雇用に取り組みたいと考えました。
セールスフォース・ドットコムの本社はサンフランシスコにあり、ロンドンやシドニーなどにもオフィスがありますが、マッサージルームというのは日本独自の試みだったので、米国オフィスでも社員から導入してほしいという希望が出ているようです。
古川:
他にもセールスフォース・ドットコムさんならではのユニークな取り組みがあるようですが、「アロハハッピーアワー」という社内パーティーのようなものも定期的に開催されているのですよね。
石井:
はい。社員数が増えますと、少しずつ社内のコミュニケーションが疎遠になり、部署間のコラボがしにくくなりがちになってしまう場合があります。
ですから、スーパーフレックスの導入と同時に何かベタなこともしたほうがいいと思いまして、「アロハハッピーアワー」を始めました。月2回、金曜日の午後5時から社内で1時間だけ皆で集まってお酒などを飲みながら楽しく情報交換しましょうというものです。
運営担当は部門ごとにローテーションで変わっていきますので、毎回の企画内容は様々です。
ある部門が主催の際には「利き酒大会」をやりましたし、夏には「スイカ割り」を企画した部門もありました。また「メキシカンナイト」と銘打って、シェイカーを持ってきてマルガリータを作って振る舞うという回もありました(笑)。
そういうことを行うと、企画がどんどんエスカレートしていって、部門同士が競争していくというカルチャーが弊社にはありまして、今ではかなりの盛り上がりを見せています。
普段はあまりに忙しくてメールのみのやりとりしかできないような社員同士も、ここならば顔を合わせて気軽に話をすることができます。これに参加することによってお互いの顔が見えて、その後の社内コミュニケーションが変わってきた、という社員も多いようです。
IT企業らしいモバイルとテクノロジー、一方でこうした昔ながらのベタな取り組みを融合していくのが、これからの日本らしいワークスタイルなのではないかと思っています。
(次回に続く)
◎本稿は、書籍編集者が目利きした連載で楽しむ読み物サイトBiblionの提供記事です。
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