ビジネスを始めるにあたって悩みの種となるのが資金調達です。どんなに優れたアイディアやプランを持っていても先立つものがなければ何も始めることができません。
これまでは、地道に自己資金を貯める、あるいは金融機関からの借入れによって資金を調達することが一般的でしたが、最近ではこれらに加えてクラウドファンディングという選択肢も現実的なものとなってきています。

クラウドファンディングは昔からのもの

クラウドファンディングは、その名前のとおり、crowd(群衆)からfunding(資金調達)する手法であり、小口資金を大勢から募っていくことが特徴です。よくある冗談として、日本人全員から1円玉を集めれば1億円以上になるというものがありますが、まさにこれを地で行こうとする手法とも言えます。

実はこのような資金調達手法は、決して新しいものでも珍しいものでもなく、伝統的に日本社会の中で行われてきました。
たとえば、大きなお祭りに行くと寄付者の名前が入った提灯がずらりと並んでいるのが目に入りますが、これも大勢の地域住民からお祭りの開催資金を調達していることからクラウドファンディングと言えます。

また、昨年に25年ぶりの優勝を果たした広島カープには樽募金という逸話が残っていますが、これこそ典型的なクラウドファンディングです。
樽募金とは、球団創設2年目にして早くも球団存続の危機に陥った広島カープを救うために始まった運動であり、寄付金を募るために市民球場の前に樽を置いたのが始まりだと伝えられています。球団存続を願う市民が樽の中に入れた寄付金は最終的には400万円にまでとなり、これが資金難のカープを救ったのです。
現代型のクラウドファンディングは、広島カープの樽募金を情報通信技術によって進化させたものと考えるとわかりやすいでしょう。樽を置く場所が球場前からネット空間上に、資金を募る対象が広島市内から全世界へと変わったのに過ぎないのです。

クラウドファンディングの三類型

伝統的なクラウドファンディング、そして現代型のクラウドファンディングについても、大きく寄付型、購入型、金融型の三類型に分類することができます。

寄付型は、資金の提供者が事業の成功・継続という事実をもって満足し、それ以上のリターンを求めないものです。樽募金も広島カープの継続そのものが目的でしたので、クラウドファンディングとしては寄付型に分類されます。

購入型は、資金の提供者が何らかのリターンを得るものです。このリターンの内容は有形の商品、無形のサービスと様々なパターンがあります。先ほど例に挙げたお祭りの寄付についても、本来は有料の観覧席も寄付者に限っては無料といった特典などがあれば、観覧席に座る権利を購入しているということで広義の購入型クラウドファンディングと言えます。いわゆる先行販売、商品やサービスの事前購入といった取引形態に近いです。

金融型は、資金の提供者が金銭的なリターンを得るものであり、寄付型、購入型と違って投資の色合いが強いです。資金の提供方法は出資といった形で行われることが多く、ある面で株式会社の原型とも言える資金調達手法です。
たとえば、千葉県の流山市を走る流山線というローカル私鉄があります。運営会社は大正2年創業ですが、当時の流山町が900戸程度の小さな町だった中で出資者116人を集めての会社設立、しかもその大半は町民というユニークな形でスタートしています。この創業劇を現代で再現したら、株式投資による金融型クラウドファンディングと位置付けられるかもしれません。

古くて新しい資金調達手法として

このようにクラウドファンディングは昔から行われており、ここから発展した事業も数多くありますが、ひとつだけ大きな課題がありました。それは、事業実施者から資金調達者への情報伝達です。
たとえば、広島カープの樽募金はクラウドファンディングの典型例ですが、これを実施するためには多くのコストがかかります。球場前に樽を置くという物理的なコストはもちろんのこと、この樽は球団運営の資金を募るために置いたものだということを周知していくことも必要です。
樽募金の場合は、発案者の中に新聞社の社員がいたため、資金調達の必要性を紙面上で訴えて市民運動にまでつなげることができましたが、これを不特定多数への情報伝達手段を持たない一個人のみで行うことは難しいでしょう。

このようなクラウドファンディングの課題を解決して、古くて新しい資金調達手法として再注目を浴びせるきっかけとなったのがインターネットの普及です。インターネットをクラウドファンディングの呼びかけの場に活用することができるようになったことは、情報伝達のためのコストとハードルの大幅低下につながりました。

これまでは不特定多数に呼びかけるためには新聞広告を出したりと、第一歩を踏み出すためにもコストがかかりました。しかし、今では広告を出すための資金自体をインターネット上で募ることも可能となっています。昨年に解散したSMAPへの応援メッセージを新聞紙面に載せるためのプロジェクトが2日間で1千万円を超える資金を集めたことは記憶に新しいものと思います。
インターネットの普及によって、誰もが気軽に第一歩を踏み出し、クラウドファンディングで資金調達をチャレンジできるようになったのです。

現代型クラウドファンディングの可能性

インターネットを利用した現代型クラウドファンディングは大きな可能性を秘めており、政府の成長戦略の中にもクラウドファンディングの活用が盛り込まれています。2015年には株式投資型のクラウドファンディングへの参入要件を緩和した金融商品取引法の改正法も施行される等、資金を募るためのプラットフォームも整備されてきました。
いまやクラウドファンディングは現実的な選択肢となりつつあり、3000万円以上の資金調達に成功して飲食店を開業という事例も出てきています。

新しいビジネスモデル、画期的なサービスのアイディアを持ちつつも資金面から創業への第一歩を踏み出せないという場合は、クラウドファンディングに目を向けてみてはいかがでしょうか。

記事制作/ミハルリサーチ 水野春市

ノマドジャーナル編集部
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