クラウドファンディングは、資金調達手法であると同時にマーケティングツールとしての一面もあります。資金調達というよりも需要観測に重きを置いた案件もあるところです。

新商品開発のハードルが低く

そもそも、小さな規模の企業にとって、新商品の販売・新サービスの提供というものは一種の博打であり、リスクの高いものです。これまでの事業を支えてきた定番商品・サービスと異なり、売上の見込みも立てにくく、下手をすると大量の不良在庫を抱えてしまうこともあります。

特に日持ちのしない食品等は、売れ残ってしまうと、廃棄するしかなく、それだけでも産業廃棄物としての処理でコストがかかってしまうところです。このため、売上の増加、企業として成長を図っていくためには新商品・サービスの開発が必要だとしても、資本力がないと一歩踏み出すことすらままならないのです。

しかし、このような課題はクラウドファンディングを活用することで解決していくことが可能です。特に購入型クラウドファンディングの場合は、支援者=購入者ですので、支援者が100人集まれば100人分の原材料を仕入れれば良いですし、仮に見込みより低い人数しか集まらなかったようであれば新商品・サービスが成功する可能性が低いということで無駄な仕入れをすることなく撤退の選択肢をとることもできます。

ステークホルダーへの説明も容易に

また、商品やサービスの性質によっては、自社の判断だけでは新商品・サービスの開発に踏み出すことができないものもあります。例えば、機械製品の場合は、自社で全て完結して生産していることは少ないはずです。デザインは自社企画、部分品であるモーターやランプの製造といった工程は協力工場に製造委託しているといったことも多いはずです。

製品の一部工程を協力工場に委託している場合は、今後どの程度の規模で発注していくか、完成品の販売値から逆算してどの程度の金額で発注できるかといった見込みをもとに単価交渉していくことになります。この見込みが甘いと、自社・協力工場ともに大きな損失を被ってしまうこともあります。見込みより少ない受注しかないと、協力工場からすると受注単価が見合わなくなりますし、製造委託する自社からしても協力工場の利益を確保しようとすると多大な在庫を抱えることになってしまいます。

加えて、新商品・サービスの開発にあたって新規設備が必要となる場合は、設備の購入費用も考慮していかなければいけません。購入費用を金融機関から借り入れるにしても、その設備を導入することで利益がどれだけ上がるか、借入金の返済原資を生み出すことができるかを説明できないと、金融機関を納得させることはできないでしょう。

ステークホルダーを納得させるためには、明確かつ客観的な需要予測・数字が効果的です。これまでは需要予測を算出するために、アンケート調査を行ったり、市場調査会社にレポート作成を依頼したりと、個別のリサーチ費用まで見込んでおかなければいけませんでした。

このようなリサーチ費用についても、クラウドファンディングを活用することで軽減を図っていくことが可能です。第6回で紹介した常陽銀行Makuakeの協調融資は典型的な事例と言えます。常陽銀行(ステークホルダー)は、購入型クラウドファンディングであるMakuakeでの資金調達結果をもとに新商品・サービスの事業性を評価し、融資の判断材料としています。これは、クラウドファンディングを従来のアンケート調査結果・市場調査レポートに代わるものとして捉えているとも言えるのです。

広告効果にも期待

クラウドファンディングのプラットフォームを広告媒体として利用することも考えられます。Web上のプラットフォームを閲覧する人々は、消費意欲が高い・新商品・サービスに対する関心が高い層とも言えるからです。このような層に資金提供を依頼すると同時に自社の特色を上手く伝えられれば、情報を広範囲に拡散していくこともできるのです。

また、多額の資金調達に成功すれば、それだけで大手メディアの取材対象となることもあります。昨年に公開された「この世界の片隅に」は、作品そのもののストーリー性はもちろんのこと、制作費用をクラウドファンディングで調達したという点も大きな注目を集めました。

クラウドファンディングは、目標額までの達成状況がリアルタイムで更新されていることが多いため、消費者に「自分が投じた資金が制作費用の一部になっている」「自分達がいなければこのプロジェクトはスタートしなかった」と強い共感と仲間意識を抱いてもらうことができます。これは新商品・サービスが展開すると同時にコアユーザー・愛好者の獲得にも成功しているということでもあります。

記事制作/ミハルリサーチ 水野春市

ノマドジャーナル編集部
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