「金融」の原点とも言えるクラウドファンディングですが、「金融」を本業とする銀行や信用金庫といった金融機関側でもクラウドファンディングの活用が進んできています。その目的は、融資審査の補助ツールとして、金融機関としての存在意義を取り戻していくためと様々です。

融資審査の補助ツールとして

茨城県水戸市に本店を置く常陽銀行では今年1月からプラットフォーム大手のMakuakeとの業務提携を開始し、Makuakeでの資金調達に成功した際には常陽銀行でも調達成功額と同額の融資を実行する「購入型クラウドファンディング協調融資制度」を創設しました。これは金融機関・利用者の双方にメリットがある、良く出来た仕組みです。

利用者側からすると、Makuakeで創業資金を調達し、創業後の運転資金は常陽銀行からの融資で賄うといった使い方が考えられます。企業を維持していくために必要な資金全てをクラウドファンディングで工面していくのは現実的ではありません。一方で創業したばかりの企業は、対外的な信用力が低いので金融機関から融資を受けるのは難しいところです。このような創業したばかりの企業の資金需要と信用力の隙間を協調融資制度が埋めていきそうです。

金融機関側から見ても、クラウドファンディングとの協調融資は利点があります。金融機関で融資を実行していくにあたっては、企業の信用力を審査していきます。信用力は、資金を確実に返済していく力と言い換えることもできます。
クラウドファンディングで資金調達に成功しているということは、その企業の事業を応援しようとする存在・見込み顧客が一定以上いるということでもあり、事業の安定性・成長性の証明にもなります。事業で確実に収益を出して、そこから返済原資を捻出できる期待値が高い、信用力があるという評価をして融資を実行することができるのです。

常陽銀行のような制度化までには至っていませんが、他の金融機関でもクラウドファンディングを融資審査の補助ツールとして活用する動きは出ています。金融機関を監督する金融庁では「事業性評価融資」を提唱・推進していますが、クラウドファンディング協調融資も手法のひとつとして定着していくかもしれません。

金融機関の原点に立ち戻る信用組合

金融機関を業態ごとに大別すると、銀行、信用金庫、信用組合となりますが、この中でも信用組合はクラウドファンディングの活用に積極的です。
信用組合とは、地域の住民や企業が組合員になる形で構成されたメンバーシップ型の金融機関です。組合員から出資を募り、それを元手に組合員に対して融資を行っていくのです。金融機関としての組織の仕組み自体がクラウドファンディング近しいところがあるので、クラウドファンディングの活用に積極的なこともうなずけます。

たとえば、岐阜県高山市に本店を置く飛騨信用組合では、金融機関の中でも早くからクラウドファンディングの活用を進めており、2013年にはミュージックセキュリティーズと業務提携をしてファンド型クラウドファンディング、2014年にはFAVVO奈良のエリアオーナーとなって購入クラウドファンディングと、自らプラットフォームの役割を果たしています。今年の2月には、クラウドファンディングの活用を通じて地方創生の推進に貢献しているとして、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局から表彰を受けています。

また、各地に153ある信用組合を束ねる全国信用協同組合連合会でも、昨年12月に毎日新聞伊藤忠商事と連携して「MOTTAINAIもっと」というプラットフォームを開設しています。全国各地の信用組合が資金調達を希望する企業を発掘していくとのことであり、信用組合全体でクラウドファンディングの活用をしていこうという想いを強く感じられます。

「金融」とは何かを改めて考える時代に

今はそうでもないですが、かつては中小企業、特に創業したばかりの企業は信用力が乏しく、また借り入れようとする金額が少額ということもあって銀行の相手にしてもらえませんでした。この解決策として中小企業をメインターゲットとした信用組合が作られたわけです。
既存の金融機関からは融資を受けることが難しい、ならば他の手段を考えよう、多くの人の力を借りよう、この発想は現代型クラウドファンディングと相通じるものがあります。元祖プラットフォームと言える信用組合が現代型クラウドファンディングを取り入れていくのは、地域の中小企業に資金を供給していくための団体なのだという原点に立ち戻っただけのことなのかもしれません。

「MOTTAINAIもっと」の成功事例のひとつに喜多方ラーメンの新商品開発資金の調達があります。地域の有志が集まったグループで新商品開発を進めているが、有志の手弁当で経費を賄うのは限界があるというのがクラウドファンディング活用のきっかけです。
このような有志の活動に金融機関として融資を行うのは難しいでしょう。誰に対して貸し付けるのか、誰が責任をもって返済するのか、融資を受けるためだけにグループを法人化するのか、融資をする上での課題を列挙するだけで疲れてしまいます。
資金調達を手伝いたいけども、融資は難しい。それであれば融資以外の手段を考えてみようという前向きな姿勢が信用組合側にもあったからこそ、クラウドファンディングでの資金調達に結びついたのではないかと推察します。

「金融」とは資金を融通していくということであり、金融機関とは資金を融通していくために作られた組織です。現代型クラウドファンディングが普及していく中、金融機関には何が求められているのか、何をしていくべきなのかを改めて考えさせられる時代になっています。

記事制作/ミハルリサーチ 水野春市

ノマドジャーナル編集部
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