日本に寄付文化を根付かせるべく活動している日本ファンドレイジング協会では、日本の寄付市場の動向をまとめた「寄付白書」を発行しています。同書の中には、寄付をしたことがある人向けに行ったアンケート調査結果が収録されていますが、そこでは「寄付金の使い道が明確で、有効に使ってもらえること」が寄付先を選ぶ際の大きなポイントになっていることが明らかになっています。

この調査結果は、クラウドファンディングで資金調達を図っていく際にも参考になります。資金提供者の多くは事業の理念に共感して、その手助けにという想いから応援してくれています。集まった資金は事業に使われるものと信じて資金提供しているのです。これが経営者の遊興費に流用されていたら、詐欺と受け止める人も出てくるでしょう。

募金詐欺と思われないために

最初に厳しいことを言うと、クラウドファンディングで開業資金を調達しようとする人の対外信用力は極めて低いです。資金提供者からすると、実際に顔を合わせて話したこともないですし、実績を積み重ねてきたわけでもなく、事業の実行力も未知数の存在です。怪しげな団体が街角で募金活動を行っているのを見るのと同じ感覚です。

自らが資金提供者の立場として、今まで名前も聞いたことのない団体から資金の協力依頼が届くとどのような印象を受けるでしょうか。そして、資金提供に至るまでにどのような行動をとるでしょうか。
きっと団体のウェブサイトを探すなりして実態を確認していくと思います。そして、信じるに足る団体かを判断していくために、どのような事業を行っているか、実績があるかを見ていくのではないでしょうか。

たとえ理念に共感したとしても、事業実態もあやふやで、資金の使い道も不明瞭な団体だと資金提供には二の足を踏んでしまうと思います。これはクラウドファンディングの世界でも同じことが言えます。
クラウドファンディングでは1人あたりの支援額は少額です。しかし、資金提供を受ける先には公益法人並の経営の透明性・ガバナンスが求められるのです。

甘い資金計画は信用を落とす

クラウドファンディングの成功事例を見ると、目標金額と資金の使い道の間で整合性がとれているものが多いです。目標金額と資金の使い道で整合性がとれているということは納得感につながります。自分が提供した資金がどのように使われるかがイメージしやすく、応援していこうという気持ちを抱けるのです。

反対に、納得感に欠けるものだと事業の実施体制そのものを疑ってかかってしまいます。事業計画に比して目標金額が過大であれば余った資金は何に使われるのか、過小であれば事業が無事に実施できるのかと不安を抱かせることになるでしょう。

クラウドファンディングでは、事業実施者よりも資金提供者の方が対象分野への造詣が深いこともあります。飲食分野への関心が高い人ほど飲食店の開業を応援することが多いでしょうし、経営の一線を退いた人が若手起業家を応援することもあるでしょう。このような造詣が深い層からすると、相場を理解していない甘い資金計画を出してくるような人は勉強不足に映ります。

相場が分かりやすい印刷経費を例にしてみましょう。「開業を告知するフライヤーの印刷費用:50万円」という案件があったとします。フライヤーなんてものは両面印刷の1枚ペラがせいぜいですが、それを50万円かけて印刷すると何部になるか。両面カラーだとしても10万部以上はゆうに印刷できます。
これだけで、印刷相場も調べずに資金計画を作るような人、開業告知のようなピンポイントでしか使わない広報物を大量に作る人という評価が下ってしまいます。

また、「駅前好立地で賃料10万円/月の空き店舗があった。雑貨屋を開業したいので工事費含めて20万円の支援」という案件があったとします。店舗経営の経験がある人からすると、賃料10万円であれば保証金・仲介金がそれぞれ1ヶ月分で済んだとしても先払い賃料との合計で30万円はかかると簡単に予想できます。
このような場合、目標金額を集めたとしても開業すら出来ない、資金を提供するだけ無駄だという評価となるでしょう。

企業としてのガバナンスを強化する

クラウドファンディングは多くの人からの支援で成り立っています。そして、支援と関与は表裏一体の関係でもあります。ファンドが支援を行う条件として社外取締役や社外監査役を派遣するのと似たようなものです。

小さな企業ほど経営者個人と企業の区別が曖昧な面があります。しかし、クラウドファンディングで多くの人から資金提供を受けていくのであれば、丼勘定からの脱却と経営の透明化を進めていく必要が出てきます。

自分の事業・自分の利益のための会社ではなく、資金提供者や顧客も含めたステークホルダー全体の利益を実現していくための事業・会社へと意識を変えていきましょう。クラウドファンディングにはコーポレート・ガバナンスを高める効果もあるのかもしれません。

記事制作/ミハルリサーチ 水野春市

ノマドジャーナル編集部
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