前回までは、人事企画とHR Techについてご紹介してきました。今回は「採用活動」業務にフォーカスし、現状どのような課題があるのか、その課題をHR Techを導入することでどう解決できるのかについてお伝えします。

採用活動の業務とは

採用活動は、企業の礎となる人材を探し、採用する大切な業務です。一般に、次のようなプロセスで業務が進行されています。

1.採用計画の企画・作成
2.採用広報活動(媒体の選定)
3.説明会・セミナーの開催
4.選考活動(面接)
5.内定者フォロー
6.選考の振り返り

採用活動では、こうした各プロセスを効率よく実行し、効果測定を行う必要があります。

現状の採用活動の問題点

◎戦略的な採用活動の必要性

人材確保のためにはできる限りのことをしたいものですが、採用活動は予算の範囲内で行わなければなりません。一方、よりよい人材を採用するために、かつてなかった採用ルートが増え、注目を集めています。

ダイレクトソーシング」は、求人媒体などを介さずに、企業自らが求める人材にアプローチする方法です。「リファーラル」は、社員紹介制度のことです。GoogleFacebookなどアメリカの企業が採用し始め、日本でも導入する企業が増えています。この方法は、会社や業務に相応わしい能力やスキルを持っている人材を、社員にリファーラル(推薦)してもらう仕組みです。

これらは新しい採用ルートで、これらを使用した採用活動全般をまとめて「ダイレクトリクルーティング」といいます。これまで、応募を待つのが一般的だった採用活動が、現在では積極的に探して人材に直接アプローチする活動へ変化しているのです。そして、さまざまな採用ルート・採用媒体があふれる中、限られた予算内で、どこにどんな採用広報を行えば望む人材にリーチできるのかをリサーチ、分析、判断する必要性が高まっています。

◎ミスマッチによる離職率の増加

現在では、新卒入社後3年以内に退職する率は、約3割ともいわれています。コストをかけて採用し、教育した人材が成果を生む前に退職してしまっては、企業にとっては大きな損失になります。では、離職率の高さには、どのような原因があるのでしょうか。主に以下の3点が考えられます。

・採用時に企業と学生とのミスマッチが起きている
・学生とのコミュニケーションが取れていない
・学生のポテンシャルを正しく把握できていない

◎中途採用ニーズの高まり

最近では働き手の流動化に伴い、中途採用の必要性が高まっています。中途採用には、新卒採用とは違った配慮や戦略が必要ですが、終身雇用がメインの日本には、企業内に中途採用に向けたノウハウやシステムが構築されていないのが現状です。中途採用は、即戦力を期待して採用するものですから、それまでのキャリアやスキルを可視化し、採用後のポテンシャルを正しく測らなくてはなりません。

◎内定者フォローの必要性

少子化で労働力不足が進む中、内定辞退者の増加、いわゆる歩留まり率(期待された数に対して実際に得られた数の割合(製造仮定で使用される言葉))の低下が問題になっています。これまでも、内定後の集合研修や内定者懇親会、オフィス見学などは行われていましたが、さらに積極的な働きかけをすることが必要になってきました。内定後入社するまでの間に、実際の仕事に近い研修を行ったり、会社への理解度を高めて、入社前の不安を軽減し仕事へのモチベーションをあげることが必要です。

HR Techで導入でできること

それでは最後に、採用活動においてHR Techが活用できる場面を考えてみましょう。

◎効率的な採用計画が立てられる

HR Techで採用広報の各方法をデータ化し、分析することで、より効果の高い手法や媒体を選択することができます。また、リファーラル・リクルーティングは採用プロセスを大幅にカットし、かつ優れたマッチングを生み出すといわれていますが、プロセスを統一化・自動化したHR Techサービスを導入すれば、未経験の会社でもすぐに取り入れることができます。

◎採用ルートを増やせる

特定の業種の求人に特化した「プロフェッショナルSNS」や「人材データベース」などのサービスを使うことで、今のリクルーティングに合った採用ルートを増やすことができます。

◎採用ミスマッチの防止

採用のミスマッチを防ぐには、応募者一人一人について正確に知り、密なコミュニケーションを取らなければなりません。しかし、数多くの応募者がいる中で、個々の応募者にマンパワーで対応するのは不可能です。HR Techを使うことで、企業はどんな人材を求めているのか、学生はどんな職場でどんな仕事をしたいと思っているのか、データに基づくマッチングの最適解を探すことができます。

◎きめ細かな内定者フォローができる

社内SNSを導入することで定期的なコンタクトが可能になり、交流を深めることができます。また、eラーニングで自宅研修を行い、ビジネスマナーを学ばせたり、会社や配属部署に対する理解を深めてもらうことができます。入社後研修を前倒しすることで入社がスムーズになり、会社も社員も入社後の負担が軽減されます。

まとめ

「採用活動」業務は、企業にとって大変重要な意味を持つ仕事です。しかし、その内容は多岐に渡り、人材不足と採用手法の多様化もあって、より戦略的な採用活動をすることが求められています。次回は、この採用活動の業務を支えるHR Techにはどのようなものがあるのかについてお伝えします。

記事制作/神尾 マキ

ノマドジャーナル編集部
専門家と1時間相談できるサービスOpen Researchを介して、企業の課題を手軽に解決します。業界リサーチから経営相談、新規事業のブレストまで幅広い形の事例を情報発信していきます。