これまで23回にわたり、HR Tech(企業人事におけるテクノロジーの活用)について見てきました。最終回となる今回は、これまでの内容を統括し、今後のHR Techの展望を考えたいと思います。

戦略人事の時代

◎人材=人財の時代

人口減少・少子高齢化社会を迎え、人事にも戦略が必要な時代に突入しています。限りある人材をいかに活用するかが、企業人事の大きなポイント。従来のようにマンパワーに頼るのではなく、テクノロジーを最大限に活用した「戦略人事」「人事戦略」を実現することが求められています。

採用活動業務では、よい人財をいかに集めるかだけでなく、内定辞退率を下げたり、中途採用を効率よく行うかといったことが課題になります。これらを解決するには、豊富な採用ルートの確保と採用データの蓄積・解析が欠かせません。この点は、HR Techの得意分野。データを活用することで、効率が良く、また自社に合った採用を実現することができます。

◎会社へのロイヤルティを高め、離職率を下げる

転職市場が活況を呈し、また個人も転職に躊躇しなくなっている今、よい人財にはできるだけ長く働いてもらう環境づくりも必要です。採用のミスマッチを防ぎ、離職率を下げるには、入社社員のデータなどを参考にしながら先手を打った施策が必要になります。採用に関するHR Techを活用することで、早めの一手を打つことができるようになるでしょう。

また、仕事のやりがいを感じてもらうには、ストレスなく健康な心で仕事ができ、モチベーション高く仕事ができることも重要です。そのためには、社員のストレス度をいち早くチェックし、必要があればリカバリーできるシステムが役に立ちます。HR Techのサービスには、こうした点に特化したものがあり、大変便利です。

◎モチベーション管理で働きやすい環境づくり

戦略人事の一つとして大切なのが、社員のモチベーション管理です。社員のやる気を引き出す環境を整えることで一人ひとりの社員の生産性を高め、企業の成長につなげることは、どの業種業態でも非常に重要な課題になってきています。
これに対応するには、e-ラーニングシステムが有効です。好きな時間に必要な業務や好きな仕事について学べる環境は、社員の自己実現だけでなく福利厚生にも貢献することができます。

また、仕事や業績が正しく評価されることも、社員のモチベーション管理にとって非常に大きなポイントです。上司による恣意的な評価ではなく、客観性が担保された評価ができるようなITシステムを導入することで、社員のやる気をアップさせることができます。

グローバル化に対応できるシステムの必要性

現代では、世界各国にブランチ(支社・支店)を持ち、世界中に多数の社員を抱えるグローバル企業が増えてきています。また日本国内では、終身雇用制が崩壊し、転職が当たり前の時代となり、さまざまなバックグラウンドの社員が集まるようになってきました。

こうした中で、各社員のスキルや能力、ポテンシャルを把握するのは骨が折れる仕事です。そこで活躍するのが、社員の能力などを一元化して見える化できるITシステム。いつでも誰でも必要なときに各社員のプロフィールを見ることができるシステムがあれば、新たなプロジェクトを立ち上げるときもすぐにチームを組むことができます。また、人事異動を行う際も、社員の要望や能力にふさわしいプランを考えることができ、社員の満足度が高い人事異動を行うことができるようになります。

リアルタイム&スピーディーな人事の必要性

現代のビジネスにはスピードが求められています。常に、その時々のニーズに合せていかなければ、どんな大企業であっても生き残ることは難しいでしょう。このような時代には、人事業務にもスピードが求められます。市場のニーズに合せて、人財の適材適所を常に行うことができる会社は、非常な強みを持つことができます。

そのためにまず必要なのは、人事業務そのもののシステム化です。マンパワーではどうしても時間がかかってしまいますし、社員が多くなればなるほど、入力ミスや漏れも増えてしまいます。ITを活用し、入力作業をシステム化できれば、このような入力作業を正確に、しかも格段にスピードアップさせることができます。

また、人事に関しては法改正も多いため、手続きを常にアップデートしておく必要がありますが、人手ではすぐに対応することができません。この点でも、HR Techのサービスであれば、自動アップデートが可能。人事部の社員が何もしなくても、自動的に最新データに更新されるので、何の苦労もなくスムーズに手続きができるようになります。各種申請手続きのオンライン化も進んでおり、今後ますます便利になっていくものと思われます。

まとめ

テクノロジーの進歩は、人間の暮らしを楽にするだけでなく、さまざまなビジネスの可能性を広げてきました。これまでできなかったことや難しかったことなども、テクノロジーによってどんどんできるようになっています。人事においても、人事企画・採用・労務・評価・人財育成の各業務において、優れたITサービスが提供され、スピーディーで戦略的な人事業務が可能になっています。どの時代でも、大切なのは「人」であり、その要が人事業務です。HR Techを活用して戦略人事を行い、よい人財に活躍してもらえる会社が、今後は大きく成長していくことになるのではないでしょうか。

記事制作/神尾 マキ

ノマドジャーナル編集部
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