前回の記事はこちら

●キャリアの可能性を拡げ、しかるべき時にチャンスを掴めるようになるための方法

技術の発展や社会の変化に伴って、世の中の仕事は、あるものは消えていき、あるものは形や中身を変え、またあるものは新しく生まれてきます。
そのスピード、頻度、種類は過去の比ではありません。
インターネットの普及も重なり、そうした姿かたちの変わった仕事、新しい仕事すなわちキャリアを歩む人々の情報に触れることも増えました。

あんな仕事がしたい。こういう働き方もできるんじゃないか。
社会の変化、モデルケースの情報の取得しやすさと相まって、こうした願いは、実現しやすくなっていると言えます。

しかし、そうしたチャンスは常に出現している訳でも、出現していたとしても求人広告などの形で公開されている訳でもありません。
現れては消え、公開されないまま他者がそのチャンスを持ち去っているのです。また、芽が出かけたのに、誰もそのチャンスを得ることができなかった仕事もあるでしょう。

自分が望む仕事や働き方は常に「ある」とは限らず、「ない」可能性の方が高いです。
そうした環境のなか、チャンスを掴む最もポピュラーな手段は転職をすることであり、求人広告ポータルサイトや転職エージェントでは、自分の得意なコト、やりたいコト、実績などを整理する「キャリアの棚卸」を推奨・支援しています。

このキャリアの棚卸は、ほとんどの場合、転職を考えたときに行われていると思いますが、上述した通り、転職を考えたときに求人広告を見ても、望む仕事が得られる可能性は低いです。ましてや転職活動として定めた期間内に見つけられることは、不可能に近いといえます。

過去の仕事の振り返りや、考えている転職先(具体的な企業、特定の業種業界)に適合するようにキャリアの棚卸を行うのは、自ら自分のキャリアの可能性を狭めていることに他なりません。
そこで本稿では、キャリアの可能性を拡げ、しかるべき時にチャンスを掴めるようになるための方法をご紹介します。

●「これまでマップ」と「これからマップ」のつくり方

その方法とは、「棚卸=過去を振り返ったら、同時に未来の仮説を立てる」ことです。手段として、「これまでマップ」と「これからマップ」を作成します。

これまでマップは、転職サイトなどが提供しているテンプレートを使用してもいいですが、個人的におすすめなのは、アニータ・ブラウン氏やデイビッド・アイザックス氏らが提唱する「ワールドカフェ」をベースとした振り返り会で使用されている振り返りシートです。

この振り返りシートは本来四人一組で行う振り返り会で使用するもので、以下のように使用します。

1.自分の一年を本シートに記述する。
2.四人一組で、一人30分ずつ、シートを用いて物語る。
 (一人の持ち時間は30〜60分)
3.他の三人はその内容に対して質問や投げかけを、付箋を使用してシートにペタペタ貼っていく。
4.残り時間が5分程になったら、発表者はもらった質問などを元に感想を述べる。

この振り返りを他者と一緒に行うことで、
・自分とは異なる視点、価値観で一年の動きを見てもらうことができる。
・自分では気づかなかったモノゴトについての質問、指摘を受けることができる。
・結果、自分の強みや弱みに意識的になることができる。
といった効能があります。

注意点としては、アサインするメンバーは自分も含め、直接に利害関係が無いメンバー同士であることや、お互いに異なるバックグラウンド・観点を持っていることなどが必要となります。(家族や友達、同僚だと利害関係が発生してしまったり、「これを言うのは恥ずかしい」といった気持ちが生まれてしまい、すべてをさらけ出すことが難しくなってしまいます)
また、一人30〜60分×四人分の時間を確保することはなかなか難しいと思いますので、まずはこのシートを使用して、この一年分の振り返りを行うと良いでしょう。

このシートのメリットは、自分の行ってきた仕事や活動をリストのように並べて振り返るよりも俯瞰的に眺められることはもちろん、個々の仕事や活動の動きの関連性がより良く見えることです。

関連性が見えることで、どの動きや打ち手が効果的だっかがわかり、「迎えにいった偶然」と「やってきた偶然」(セレンディピティとも言いますが「あの時まいていた種が・・・」というヤツです)が見えてきて、「こういう動きをやっておかなければいけないのだ」と再認識することができます。
また、このシートの特徴でもある「キーパーソン」も記述することで、重要と認識していなかったけど、実は重要だった人がいた、ということもわかります。

このような効果を得るためのシートの記述ポイントを下記の3点にまとめましたので、ぜひ参考にしてつくってみてください。

・仕事だけに限らず、プライベート、趣味の活動なども含めて書く。
・起こった出来事(仕事の成果や身に起こったイベントなど)だけでなく、その過程で起きたことを書く。
・過程において自分が考えたことや、出てきた感情なども書く。

●これからマップ

「これまでマップ」ができあがって一年の仕事を振り返ったら、そこで手を止めるのはわずかな時間にして、今度は「これからマップ」に取り掛かりましょう。

これからマップには、白紙の用紙とペン、ポストイットの3つを用意していただきます。しかし「これまでマップ」のような参考になったり推奨できるテンプレートはありません。そこで、お勧めの制作ポイントがありますので、以下のように進めてみて下さい。

1.A3横を半分に折って、左半分を直近3ヶ月分の記述スペースに。
右半分に9か月分の記述スペースを取る。
 (この時、該当する月数を記入しておきます)
2.ポストイットに、既に決まっている情報、これから予定して(予定されて)いる情報を、仕事も趣味も社外イベントもプライベートも含めて記述。
 (情報の種類は「やらなければいけない仕事」、「こうあっていたいという願望」など)
 (確度の低いもの、実現可能性の低いものも記述してかまいません)
3.次に、その情報に関わっている人物名を記述する。
4.記述したら、関連するポストイットをKJ法的にグルーピングする。
5.グルーピングしたら、マップ上の予想される時期に、3でつくったグループを貼っていく。
 (No3と4は前後しても、行ったり来たりしながらの方が良いかもしれません)

そうしてできあがったマップ例がこちらになります。

これが”今現在”のあなたの「これからマップ」になります。
個々の情報の関連度合いや想定スケジュールが可視化されることで、「(自分が)これをやりたい」、「あれをやらなければいけない」という目標に対して、顧客管理ツールのセールスフォースよろしく、コンタクトを取らないといけない相手がいることや、
「これを実現するためには、もう少し早く動いた方が良さそうだ」
「あの勉強をしておいた方がいいかも知れない」
といったことが見えてくるので、きちんと個々の活動のツジツマが合うように自分の動きを見直していくことができるのです。

そして、ここから大事なのが、このマップを定期的に更新することです。
新しい情報があれば追加。記述した情報に更新、改善、修正があればアップデートしていきます。

具体的には、想定していた時期よりも活動が遅れれば、そのまま付箋を後退(先のスケジュールに移動)させ、想定していた活動に変更、修正があれば、付箋を書き直します。
何か新しい出来事が起こったら色の違う付箋を貼っていきます。(このへんはご自身のやり易い方法で良いです)

私のマップは活動が多すぎて、情報が紙いっぱいになってしまっていますが、転職エージェントに渡すわけではないので、自分で理解できていればいいでしょう。
付箋を動かしたり付け足したりするのが難しくなってきたら、写真に撮って、新しく追加していくという方法もあります。

これをできれば新しい情報が起きた時や、既存の情報に変更があった度にアップデートすることが望ましいです。

ただ、マップの見直しをすれば良い訳ではなく、最も大事なのは(当たり前ですが)その時その時の仕事や活動でベストを尽くすことです。
私はそうすることで、宣伝会議や公益社団法人の講演仕事、大手キャリアでの勉強会ディレクションの仕事など、今年前半だけで新しい仕事を3つ得ることができました。中には日の目を見ることのなかった活動もありますが、他の活動も太く細くつながっていっています。

こうして定期的な「これからマップ」のアップデートをしていくと、一年の振り返りマップとして活用することができます。

自分が当初想定していた動きがどのような過程を経て、どんな結果になったか。
この振り返りは、たくさんの気づきや考察の機会を与えてくれるはずです。

※余談ですが・・・
この「これからマップ」のつくり方の元となっている、プロジェクトマネジメントのエディティングツール、「プロジェクト譜」の制作方法の勉強会を、6月6日に虎ノ門のドコモイノベ–ションビレッジで開催します。
ご興味を持って頂けましたら、下記のFacebookページをフォロー頂き、イベント情報が公開されましたら、ぜひご応募下さい。

●ドコモ・イノベーションビレッジ Facebookページ
https://www.facebook.com/DOCOMOInnovationVillage/

記事制作/前田 考歩

プロジェクトエディター(PE):前田 考歩
BtoB、BtoCを問わず、新規事業、サービスの企画立案から開始後の事務局運営が主要領域。
主な業務:PMの他、チームマネジメント、ナレッジマネジメント、アライアンス提案、営業、代理店開拓、イベント・ワークショップ、企画運営、リサーチ、ブログやホワイトペーパーの執筆、マニュアル作成など。
近年は「わかるの素、できるの型」をテーマに、様々な企業の自社商品の見込客発掘と育成を目的としたワークショップの企画設計を行う。
web動画、展示会、マーケティングオートメーション、メールマーケティングなどの分野で、宣伝会議、ドコモイノベーションビレッジ、中小企業基盤整備機構など数々の場で講座を開催中。

ノマドジャーナル編集部
専門家と1時間相談できるサービスOpen Researchを介して、企業の課題を手軽に解決します。業界リサーチから経営相談、新規事業のブレストまで幅広い形の事例を情報発信していきます。