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●マイコンテンツとは何か?今の仕事を極めることから、マイコンテンツをつくってみる

前回の記事で、複業時代、パラレルキャリア時代の履歴書フォーマットとして、「Re歴書」というアイデアをお伝えしました。
Re歴書は、従来の履歴書の「学歴、職歴欄」に、もう一本タイムラインを加えることで、会社に就職して働いているのと同等、或いは近しいプロボノ、NPO、ボランティア、個人で受けている仕事などを書けるようにする、というものです。
記事の中で、追加したタイムラインに書くものとして、「マイコンテンツ」をもつことを提案しました。
今回はその「マイコンテンツ」のつくり方をご紹介致します。

まず、マイコンテンツの定義から始めましょう。これは私の個人的な定義なのでググッても出て参りませんのでご了承下さい。
本稿で提案するマイコンテンツは、以下のような内容です。

・自分の体験を元につくった、
・他者が喜んだり、他者の役に立ったりすることで、
・収入、人脈、機会を獲得することのできる、
・ブログ、プレゼン、ワークショップなど様々な形態のコンテンツ

こう書くと、「趣味を仕事にする、ということ?」と思われるかも知れません。
それが可能であればそうして頂いて構いませんが、一般的な趣味というものは、あなた以上に時間の余裕があり、その趣味のモノゴトが大好きな専門家や専門誌によって開拓されているのでお勧めしません。
ここで推奨したいのは、あなたが「普段会社で行っている仕事・業務体験をマイコンテンツにする」ことです。

推奨する理由は、会社で行っている仕事は個人で行う趣味と違い、「会社のお金で体験できる」ということ。
会社の仕事はたいていみんなイヤイヤやっているので、突き詰めて仕事をしていないため、あなたがその仕事を突き詰めれば、好きでやっている趣味よりも競争がゆるい(その道の第一人者になれる可能性が高い)ということ等があります。

ビジネスの世界にも数多くの業界やテーマに特化したコンサルタントがおり、専門企業がありますが、ソフトやハード等を提供して、ビジネスをサポートするベンダーなどの立場ではなく、事業会社の現場の人間が発する、切れば血の出るナレッジというのは驚くほど情報が少ないのが現状です。

本稿では私の実体験を例にマイコンテンツのつくり方、届け方を紹介していきますが、マイコンンツをつくり、適切に届けることができれば、上述したように副収入や人脈の獲得はもちろん、キャリアの可能性を拡張してくれます。

ここからは、あなたが今行っている仕事を頭の片隅に置いて、「自分の場合はどうだろう?」と考えながら読み進めて頂ければ幸いです。

●マイコンテンツのつくり方・レベル1 自分の成功体験を伝える

具体的な手順を説明する前に、私の体験をお話したいと思います。
私は現在、テレビCM制作プロダクションが新規事業として始めた、BtoBに特化した動画制作ソリューションのプロジェクトマネージャーを務めています。

この製品の見込客獲得のために、東京ビッグサイトで開催される展示会に出展したときのことです。
展示会の出展費用は場所代、ブースの装飾・施工費、チラシなど販促物の制作費などを合わせると、小さなブースでも100〜200万円はかかります。当時リリースしたばかりの製品にそれだけのコストをかけるには賛否がありました。

そこで、出展計画をつくっていた私は、何が何でもこの展示会で多くの見込客を獲得し、案件化につなげるため、ブースに足を踏み入れてもらうためのブース企画、目標数値の計算と設定、ブース内でよどみなく動くためのワークフロー、来場者の確度を測るためのアンケート設計、自然と名刺交換したくなる仕掛け、名刺交換した見込客にアポイントを高確率で取るための方法、見込客を育成するためのメールマーケティングやセミナー企画など、限られた予算の中で、様々な施策を考えに考え、多くの準備をしてきました。

その結果、出展後一年間で出展費用の約4倍の売上を出すことが出来ました。
マイコンテンツづくりにおいて結果以上に大事なのが、このために準備した様々なファイル、成果物などを記録・アーカイブしておくことです。

自分が体験した業務で成果を出せる人は、たくさんいるでしょう。
しかし、自分がどのようにしてその成果を導いたのか、また、どのような考えや取捨選択を経て、その手段をどのように使ってきたのかというプロセスを明文化している人はたいへん少ないです。このアーカイブがマイコンテンツづくりの素材になるので、大事に保管しておいて下さい。

こうして保管しておいた素材を元にマイコンテンツをつくる訳ですが、コンテンツを構成する要素が大きく3つあります。
1つ目はコンテンツの中身、
2つ目はコンテンツの表現、
3つ目はコンテンツを伝えるための形式、
です。

まず1つ目のコンテンツの中身ですが、私の展示会の体験を例に取れば、「少ないリソースで、展示会で多くの見込客を獲得する方法」となります。

2つ目のコンテンツの表現ですが、事実を淡々と並べていく方法や、NHKの名番組『プロジェクトX』のように数々の証言を使っていくという風に、色々な表現手法がありますが、私はよくパロディ・オマージュを使います。

展示会に出展していた頃、『坂の上の雲』を読んでいたのですが、その当時の戦争の布陣図が、ブース内のレイアウトや人員の配置図に重なって見えたことと、会社内のリソースを総動員して出展するという行為が、決戦の目的を有する戦闘を呼称する「会戦」のように感じ、「展示会」+「会戦」=「展示会戦!」と結びつきました。

そして、少ない人数・予算で出展した会社を、当時弱者の立場にあった日本軍に見立て、「『坂の上の雲』から学ぶ弱者のための展示会用兵論」というサブタイトルをつけたのです。
ちなみに、パロディ・オマージュの良いところは、真剣にやればやるほど、おかしみが増す点にあります。

次に、紹介するコンテンツの形式に関わる話ですが、至極まじめなコンテンツは内容や聞き手にもよりますが、あまり面白く受け取ってもらえません。
セミナー会場などでプレゼン形式でマイコンテンツを披露する場合、そこで、面白いスライドが間に入ってくると、場が和みますのでたいへんお勧めです。

3つ目のコンテンツを伝える形式は、誰に、どこで、どう伝えたいかによって異なりますが、ブログ、スライド、プレゼン、漫画、漫談、詩、歌、ダンス、寸劇など様々な形式があります。
「展示会戦」の場合は、アーカイブしていたブースの図面、ワークフローなどが沢山あったので、それらを元にパワーポイントでスライドを作りました。

素材となるファイルが残っていれば、手軽にスライドやブログに使える画像が手に入りますし、その業務を行った時の振り返りや感想などをあなたが自分のノート等にメモしていれば、それもテキストの素材として使用することができます。

もちろん、マイコンテンツのためにスライドを自作してもかまいません。
例えば私は、ある写真に関するイベントにいった際に感じた「なぜ、我々は写真プリントをしなくなったのか?」という疑問について考察した内容をブログにアップしました。

『パパ、ママ。どうしてプリントしないの?』
http://kodomonogatari.blogspot.com/2012/12/blog-post.html

このブログを書いた後、イベントのハッシュタグをつけてツイートしたところ、某カメラメーカーからコンタクトがあり、その後カメラアプリの開発の仕事につながったことがありました。

話を戻して、マイコンテンツをつくるポイントをまとめましょう。

・自分が体験した仕事の内容、過程(で作成したファイルなど)を記録・アーカイブをしておくこと。
・コンテンツ化する時の表現手法を選ぶこと。
・コンテンツ化する時の形式を選ぶこと。

このようして自分の体験を外部に発信できるようにすることを、私はマイコンテンツのレベル1と呼んでいます。
レベル1ということは、その次のレベルがあります。

レベル2のマイコンテンツは、自分が体験し、成功した「事実」をただ伝えるのではなく、他者にも自分と同じように成功する「方法」を伝えることです。

●マイコンテンツのつくり方・レベル2 成功体験をノウハウにして教える

成功した「事実」をただ伝えることと、他者も自分と同じように成功させる「方法」を伝えることは何が違うのでしょうか?

再び「展示会戦」を例にとってご説明します。
「展示会戦」は当初、ただ成功した事実を伝えるプレゼンコンテンツでしたが、その後聴講者の方から「ブースの企画方法を教えてほしい」とリクエストされ、自分がどのように「その後の案件につながるような、確度の高い見込客を獲得するためのブースを企画したか?」という、自分の思考のプロセスを追いかけたのです。
その結果、つくったのがこちらのブースを企画するためのフレームワークです。

このフレームワークは別の機会、もしくは私が宣伝会議で定期的に講師を務めている「展示会出展講座」で体験頂ければと思いますが、ここでお伝えしたいことは、こうしたフレームワークづくりには、自分が体験したことを「抽象化」する必要があるということです。

抽象化することで、自分以外の、異なる環境や条件の人でも、自分と同じように成功する方法を伝えることができます。
フレームワークづくりは、方程式をつくる作業、(    )カッコとじの問題をつくるようなものですが、
難しい場合は、その業務を行う時のチェックポイント、チェックリストだけでも、他者が自分の業務に置き換えて作業をする場合の助けになります。

レベル1のマイコンテンツがただ情報を他者に見てもらう、聞いてもらうだけだったものが、フレームワークやチェックリストができあがると、他者がそれを使って自ら考え、手を動かせることができるようになります。
つまり、レベル1のマイコンテンツがセミナーでは座学形式だったものが、レベル2ではワークショップなど体験形式のプログラムにすることができるようになるということです。

自分がつくったフレームワークやチェックリストを使って、参加者が出す様々なアプトプットを見ることは、自分自身のフレームワークを反省・再考・アップデートする機会でもあるため、マイコンンツをつくるのであれば、ぜひレベル2に到達してほしいと考えています。

●マイコンテンツの届け方

せっかくつくったマイコンテンツも、他者に届けることができなければ自分だけのための資料にしかなりません。
マイコンテンツができあがったら、少なくとも以下のことは実践してみましょう。

A.ブログやスライドシェアなどにアップする。
B.アップしたら、Twitterなどで関連するハッシュタグをつけてツイートする。
C.関連するテーマの勉強会やイベントに参加し、主催者(社)に対し、自分が持っているマイコンテンツを紹介する。
D.関連するテーマで事業を行っている企業やメディアの知り合いがいれば、寄稿やイベント開催を提案する。
E.関連するテーマで事業を行っている企業やメディアにコンタクトを取り、寄稿やイベント開催を提案する。

「展示会戦」の場合は、Dのパターンで展示会などイベント業界のメディア運営者が商談先の知人におり、そこに展示会戦を紹介したところ、そのメディアのイベントのメインプログラムとして披露する機会を頂きました。
その後も、大手名刺管理システムの導入促進セミナーや、展示会向けの機材レンタルを行う企業の認知促進セミナーのコンテンツとして講師依頼を受け、全国各地の自治体、商工会議所はもちろん、宣伝会議など様々な企業で「展示会戦」セミナーを行っています。

CとEは営業っぽくてイヤだ、抵抗感があるという方は、まずはAとBからでも始められてはいかがでしょうか。
Dも「あなたの勉強会に対してコンテンツを提供できますよ」という姿勢でのぞめば、激しく拒否されることは少なく、コンテンツ不足に悩むところであれば、喜んで受け入れてくれます。

結局は、今目の前にある自分の仕事を、どれだけ真剣に考え、実施するかということが大前提にあって、それを記録し、アウトプットし、届けるということに尽きるのですが、それをやっていないサラリーマンが大多数であるとすれば、あなたがマイコンテンツを持つことは、その後の副業やキャリアの可能性を大きく拓いてくれることは間違いありません。
ぜひ、お試しください。

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今回ご紹介したマイコンテンツを、一緒につくってみませんか?
絶品のスイーツを味わいながら、楽しく学べます。

詳細はこちら→http://ptix.co/2fYs1tG

記事制作/前田 考歩

プロジェクトエディター(PE):前田 考歩
BtoB、BtoCを問わず、新規事業、サービスの企画立案から開始後の事務局運営が主要領域。
主な業務:PMの他、チームマネジメント、ナレッジマネジメント、アライアンス提案、営業、代理店開拓、イベント・ワークショップ、企画運営、リサーチ、ブログやホワイトペーパーの執筆、マニュアル作成など。
近年は「わかるの素、できるの型」をテーマに、様々な企業の自社商品の見込客発掘と育成を目的としたワークショップの企画設計を行う。
web動画、展示会、マーケティングオートメーション、メールマーケティングなどの分野で、宣伝会議、ドコモイノベーションビレッジ、中小企業基盤整備機構など数々の場で講座を開催中。

ノマドジャーナル編集部
専門家と1時間相談できるサービスOpen Researchを介して、企業の課題を手軽に解決します。業界リサーチから経営相談、新規事業のブレストまで幅広い形の事例を情報発信していきます。