数多くの講師・コンサルタントをみてきた、研修・セミナープロデューサーの原 佳弘氏による「選ばれるコンサルタント」連載。

今回のリアルトークに登場していただくのは「アパレル業界のコンサルタント、ファッション販売の専門家」の大ナギ 勝さん。アパレル業界一筋で、営業として150店舗以上を担当し、その後は業界でもトップクラスの600億円を扱うバイヤー兼MDとして活躍。

30年以上に渡り現場でご活躍なさった後、3年前に独立されました。そんな「ファッション販売の専門家」の大ナギさん、どんなヒストリー、想いでコンサルタントになっていったのでしょうか。

アパレルメーカーでの店舗アドバイザー時代。「女性をうまく使う」から「女性にうまく使われる」へ

Q:独立される前、お勤めの頃はどんなお仕事をされていらっしゃったのでしょうか?

大ナギ 勝氏(以下、大ナギ):

大学を卒業して、高級婦人服のアパレルメーカーに入社しました。配属された営業部で、1年目から店舗アドバイザーとしての任務を頂戴しました。百貨店など、自社の商品を扱ってくださっているお店を廻り、売れ行きや販促などについて現状をお聞きし、可能な範囲での改善策などをお伝えする役目でした。

Q:その頃から、コンサルタント的なミッションを負っていられたのですね

大ナギ:

いえいえ、その頃はお店で販売してくれているスタッフやお店の現状をお聞きすることで精一杯でした。

その後も、営業として日本全国を飛び回りました。多い時には、1週間に3回は新幹線で日帰り出張を西へ東へと駆けずり回っていました。

その頃感じたことが、「ファッション、アパレルの世界は、女性が多い世界だ」ということです。見回せば女性が多いことが当たり前ではありますが、その数的な意味ではなく、洋服を買っていただく女性を喜ばせる仕事である限り、男性であっても女性の心を理解していないと出来ない仕事だ、という意味です。

その考えが発展していって、言い方は悪いのですが、「女性をうまく使う」から「女性に、うまく使われる」ことが大事だ!という考えに至りました。

Q:なるほど、「使う」より「使われる」ことが、男性社員としても重要だ、ということですね。

大ナギ:

営業部の後、商品企画部に転属となりました。そこで、更にその想いを強くしました。商品企画部なので、女性が着る商品を考えていくのですが、自分は男性。女性の気持ちなんてわかりやしない。そこで、今までより以上に、使われることを徹底した気がします。

特に女性がスゴイと感じた事例が、メジャーを使わずにサイズを想定できたり、一瞬見ただけで、昨シーズンの商品との違いを指摘したり、と女性の感性や商品に対する愛情などを、目の当たりにしました。

Q:なるほど、それは女性のすごいプロ意識ですね

大ナギ:

その時、今後は女性がもっともっと社会で活躍できるはずだ、そんなことを20年以上も前に感じていました。この隠れた良いリソースを活かさないのはモッタイナイ!と。

独立のキッカケ~洋服は人を喜ばせる商品のはずなのに・・・

Q:独立に至ったターニングポイントは?

大ナギ:

そうですね、まだ勤め人だった頃に大きなショックを受けたある経験がそもそもの原因でした。自分の姪っ子が、同じ業界のアパレルメーカーに就職して、とても優秀な販売員として活躍していました。その活躍が評価されて、業界でもトップの販売員が派遣される、伊勢丹新宿店に派遣されるようになったのです。そこで、私も最初は応援して喜んでいたのですが、しばらくすると、どうも様子が変だ。話を聞くと、どうも身も心も疲れ果ててしまったようなのです。しまいには、この仕事をやめて、販売員の世界から足を洗ってしまったのです。

「洋服は人を喜ばせる、元気づけさせる」そういうものだと信じて、この仕事をしてきました。しかし、そんな人を喜ばせるはずの「ファッション販売」、売っている人が不幸になってしまうのはおかしい!そう強く感じたのです。

その裏側には、勤めた会社によっては予算という目標に潰されてしまう、お店の中の人間関係など、色々あります。「売らなくてはいけない」から段々と、「お客様に似合わないのに、売りつける」になってしまっていたようなのです。

Q:なるほど、大ナギ先生のご著書『商品よりも「あと味」を先に売りなさい(日本実業出版)』にも書かれていたことですね。

大ナギ:

はい、そうです。せっかく、ファッションの世界の面白さ、販売の楽しさ、を感じてきた頃に、姪っ子が・・・これは、とても堪えました。私も同じ業界で、少しだけ先輩としてやってきたのに、無力感を感じました。

そして、この経験、この虚しさを基にブログを綴り始めました。販売の世界の奥深さ、ファッション販売の醍醐味、そこで見聞きしてきたことを、お恥ずかしいながらも書き綴っていたのです。

ブログからの出版をきっかけに独立

Q:なるほど、姪っ子さんの件と、今までの大ナギ先生の経験から、ブログを書かれるキッカケになったと。

大ナギ:

はい、そうです。するとですね、ある出版社から「出版しませんか?」という声がかかったのです。これは「この業界を少し明るくすることにお役に立てるのでは!」と感じて、すぐに会社の上層部に、出版の許可を取りに行ったのです。

すると、残念ながら「社内で配布する小冊子でさえダメ」というご判断でした。

ここで、悩みました。このまま会社にいて何も残さずサラリーマンで終えるのか、あるいは、、、。随分悩みました。

しかし、その頃流行語だった、あの言葉が頭にすーっと浮かんできたのです。

「いつやるの?・・・今でしょ!」

それが段々と「死ぬ時後悔するより、今やってやろう」という気持ちに日に日になっていったのです。

Q:なるほど、姪っ子さんの経験から、より大事なことはコッチだ!との気持ちになられたのですね。

大ナギ:

はい、そうです。ただ、独立して何をするか、お客様は誰なのか、といった事はあまり考えず、無計画での独立でした。しかし、誰にも相談しなかった。相談すると「絶対に止められる」と感じたからです。「もう俺は決めたから」とずっと思っていました。

同時に、何をするかよりも、こんなことだけは、しっかり心に決めていました。

「洋服を売る仕事は、お客様に喜んでいただける仕事のはずだ!」

その背景には「ファッションが嫌いで辞めるスタッフはいない」しかし「社内のノルマで辞める人は大勢いる」という姪っ子の経験からの気付きが全てでした。

お客様からの依頼に1つ1つ応えていくことが今に繋がっている

Q:独立されてからは、今のご活躍まではどうされていたのですか

大ナギ:

先ほどもお話したように、無計画で独立してしまったのですね。それでも、辞めて即、取引先の知人からある企業の顧問のお仕事を頂くことができました。

その後も、「ねえ、大ナギさんこれやってくれない?」と色々な打診を頂くようになりました。自分で決めた商品ではなく、相手から依頼されたことをやらせて頂いていた形です。

Q:なるほど、商品を決めず、ご依頼されたことをやっていったと

はい。もちろん、相手も自分の事を知っているから、無茶なお願いはありません。ただし、独立してご依頼頂いたお話は、どれも自分を成長させるようなお仕事ばかりでした。独立前に、「分かっているつもり」だった事が、分かっていなかった事を痛感したりしました。

こうして、ご依頼頂くお仕事を1つずつ、依頼されている以上にご提供しよう!と決めて、取り組んでいました。これをミッションとして掲げました。その結果、今、有り難いことに服飾大学の講師や、各種の顧問業務、東洋経済オンラインでの連載など、様々なお仕事をご依頼いただけるようになりました。

「ファッションは人を幸せにする」この思いで、困っている人やこの業界の発展に少しでも尽くしていきたいと強く思っています。

【専門家】大ナギ 勝
株式会社ムービングオフィス 代表取締役
青山学院大学法学部卒業後、高級婦人服ブランドを日本一売る(株)レリアンに入社。
営業部へ配属の1年目から店舗アドバイザーとして東京を中心に各地区を担当する。商品に対する思い入れが強く、その信念が買われ、企画部へ異動する。業界でもトップクラスの600億円を扱うバイヤー兼MDとして活躍。バブル崩壊後、店舗強化のため、営業部へ呼び戻される。
トータル15年以上にわたる営業部時代には150店舗以上を担当し、店長をはじめ1000人以上のスタッフたちのよき理解者・支援者として売上アップに貢献する。
宣伝部へ異動後、女優・天海祐希さんを起用した、同社では30年ぶりのTVCMでは制作担当責任者として、企業ブランドを新たに確立する。
その後、2013年、接客、販売業に携わる人に、その仕事の楽しさ、喜びを伝えるべく独立。
【専門家】原 佳弘
Brew(株) 代表取締役  セミナー/研修プロデューサー
1973年生まれ。中小企業診断士。
横浜市立大学卒業後、建設市場のシンクタンクにて経営企画を担当。その後、法人向けセミナー・企業研修を行う会社へ転職。
階層別研修から営業、マーケティングなど専門領域の研修設計、セミナー企画実施を10年以上行う。
 
2014年、Brew(株)設立。300人以上の講師・コンサルタントネットワークから「最適講師の提案」、顧客の課題解決につながる研修やコンサルティングを「ゼロから設計」して提供している。
東洋経済オンライン、ハーバービジネスオンラインなどでも執筆。

著書には、「研修・セミナー講師が企業・研修会社から”選ばれる力”」(同文館出版)がある。
ノマドジャーナル編集部
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