数多くの講師・コンサルタントをみてきた、研修・セミナープロデューサーの原佳弘氏による「選ばれるコンサルタント」連載。

前回のコラムは、「コンサルタントの専門性をどう示すか!?」という内容でした。コンサルティングをご依頼いただく方に、コンサルタントが持つ問題解決能力、期待成果をどう示していくか、というお話を致しました。

では、その専門性以外に、独立コンサルタントとして、筆者も経験した「絶対に外せないこと」とは!?

クライアントが突然音信不通に。独立で痛感した「大事なこと」とは?

私は、独立した際に、非常に痛い思いをしました。
前職は、ある分野では名前の知れた会社でしたので、会社員時代は大企業の方々や有識者、著名人でも問題なく会うことができました。
しかし、独立して最初の洗礼を受けました。前職では簡単に会うことのできたクライアントが、急に連絡が取れなくなったり、そっけなくなったのです。
それまで信頼関係を築けていたものと考えていたクライアントが急に態度を変えたように感じました。
そのように独立当初は非常に苦しい経験をし、落ち込みました。
しかし、その後、原因を特定してスッキリさせました。

改めて整理したことは、それぞれのクライアントは「原」という私個人に仕事を依頼していたというより、「●●会社の原」に依頼していたのですね。
「私」という個人への信頼はではなく、「会社」という存在や機能、ブランドに信頼を寄せていた、ということです。

サラリーマン時代も必死に、自分が価値提供に貢献していると信じていましたが、この出来事は自身の価値や信頼について、痛切に考える機会となりました

独立して事業を始めると、個人の信頼性の低さを痛感することが多々あります。
人間関係面や営業面だけではなく、銀行口座開設やオフィスを借りる際など、色々な面で信用力がないのだな、と感じる事はあります。
同時に、サラリーマン時代は会社の「のれん」「ブランド」「実績」という信頼にお世話になっていたのだな、と感じました。
同時に、必死に今後の取組みで信頼を積み上げていこう!と考えた出来事でした。

このように、コンサルタントとして、というよりはそもそも独立してやっていくには「信頼」が絶えず必要なのだと感じたのです。

「あなたに頼みたい!」と言われるコンサルタントには何が必要か?

では、「コンサルタントにとっての信頼性」について考えてみたいと思います。

私は、多くのコンサルタントを見てきました。
その中で、コンサルタントにとって、営業面で「信頼」に勝る武器はない、と痛感しています。
出版やweb等も大事かもしれません。
それこそ前回のコラムで書いた「専門性」ももちろん大事ですが、「信頼性」が低いと全てが始まらない、と感じています。

それは2つの点で重要です。

1つは、コンサルタントに依頼する際の「最後の決め手」としての”信頼性”です。
いくら専門分野に詳しく、そしてコンサルティング能力が高くても、「あなたには言われたくない」「あなたに頼むのは自信がない」と感じられてしまったら、コンサルティングの依頼は当然、来ないでしょう。
「何を言うか」よりも「誰が言うか」が大事なサービスなのです。
顧客があなたを信頼してコンサルティングの成果を期待している、信頼して一緒に問題解決に取り組んでいく、と決断できるかが重要なのです。
つまり、あなたに顧客が頼むに値する「ドメイン」「専門性」があっても、信頼性が欠如していては始まらないのです。

もう1つは、コンサルタントにとって重要な仕事のルートとなる”紹介”が生まれなくなるからです。

弊社で、「コンサルタントにはどんなルートで仕事の依頼が来るのか?」を調査するため、独立後5年以内の10人程のコンサルタントへのインタビューを行いました。

その結果は、「紹介」が5割、「リピート」が3割、「自身の営業」はやはり難しいのか1割以下、そして「ホームページからの問い合わせ」も1割以下とのことでした。

本を数冊出しているようなコンサルタントであっても「本やホームページを見ての問い合わせ」は1~2割程度だそうです。
「本を出せば仕事が来る」という妄想が危険なこともわかると思います。
こう考えると「紹介して頂く」ことはとても重要です。特にまだ実績の少ない独立直後のコンサルタントにとっては、死活問題でしょう。

では、紹介はどうやって生まれるのか?
それは、紹介する側が被紹介者(コンサルタント)に対して「この人なら大丈夫」という「信頼」を感じていることが必要でしょう。
紹介とは非常に難しいもので、紹介する側にとっては自分の顔を潰されてしてしまうことさえもある、リスクが有るものです。
万が一、被紹介者(コンサルタント)が、見合う価値提供が出来なかった、関係を壊してしまうような言動があった。
そうなれば、紹介した側の問題や責任にもなってしまう。紹介とは、そんなリスクを冒してまで、「信頼」を元にして行われているものです。

このように、コンサルタントにとって、仕事の依頼を頂く際、紹介を頂く際に、「信頼」こそが一番重要なのです。

コンサルタントの信頼の獲得方法

では、そんな信頼はどうやって得ることができるのか?

一瞬で創ることはできないでしょう。また、人と1回会っただけでは創れないでしょう。
色々な場面、何度も接点を持って、積み上げていくものです。
また、一方で、信頼は下がってしまうことも、よくあります。
「一瞬で信頼を無くす」というように、積み上げることが難しく、無くすのはあっという間です。
では、その信頼を積み上げるにはどうしたら良いのでしょうか。
私が、自身が紹介する側となった場合、どんな人だったら紹介したくなるか、整理してみました。

・ 仕事は手を抜かず一生懸命に取組み、成果を出す

・ 約束はしっかり守る。守れそうにないと分かった場合は、早めに報連相する

・ 専門分野に対しては、「プロ」である意識と行動を貫く

・ 他人からの依頼に誠実に応え、無理難題以外は断らない

・ 1つ1つの仕事を、謙虚に有り難く取組み、期待を超えることをめざす

・ 愚痴を言わず、他責にしない、成長の機会とする

なんだ、これは新入社員研修の内容とあまり変わらないではないか、と感じるかもしれません。
はい、その通りです。独立コンサルタントに必要な信頼は、みなさんが新入社員の時に学んだ、「基本的なことを忠実に、徹底する」ことの延長なのです。
新入社員と少し異なるのは、プロ意識を更に高めて、専門分野に対する知識やスキルを磨き上げていくこと、そのぐらいの違いなのかもしれません。
信頼を得るという点では全く一緒なのではないでしょうか

独立する前に、どう信頼度を高くしていくのか?

独立コンサルタントを目指す場合、独立前に築く信頼が非常に大切だと思います。
独立してから信頼を築いていったら、独立直後は「信頼ゼロ」の状態からスタートすることになり、仕事が獲得しにくくなるからです。
さすがに「信頼ゼロ」の状態で独立する方は少ないと思いますが、独立前から積み上げてきた「信頼」が重要なことはお分かり頂けると思います。
では、独立する前に、何をしておくべきなのか?

・サラリーマン時代に、全力で目の前の仕事に取り組む

・自分のプロ意識を高めて、言動一致させる

・頼まれたことは、喜んで取り組む

・安易に会社や上司の批判ばかりしない

・社外の活動にも参加して、貢献する場を増やす

・専門性を磨くことだけでなく、信頼を増やすことにも意識を向ける

そんなことが、独立前に全力で取り組んでおくべき事ではないでしょうか。
それがひいては、コンサルタントとして選ばれる際の「信頼」となり、誰かに仕事を紹介してもらう際の「信頼」となっていくはずです。

独立コンサルタントとして、活躍を夢見るあなた。
目の前の仕事に一挙手一投足プロ意識を持って、全力で取り組んでみてはいかがでしょうか。

【専門家】原 佳弘
Brew(株) 代表取締役  セミナー/研修プロデューサー
1973年生まれ。中小企業診断士。横浜市立大学卒業後、建設市場のシンクタンクにて経営企画を担当。その後、法人向けセミナー・企業研修を行う会社へ転職。階層別研修から営業、マーケティングなど専門領域の研修設計、セミナー企画実施を10年以上行う。
 2014年、Brew(株)設立。300人以上の講師・コンサルタントネットワークから「最適講師の提案」、顧客の課題解決につながる研修やコンサルティングを「ゼロから設計」して提供している。東洋経済オンライン、ハーバービジネスオンラインなどでも執筆。
著書には、「研修・セミナー講師が企業・研修会社から”選ばれる力”」(同文館出版)がある。
ノマドジャーナル編集部
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