数多くの講師・コンサルタントをみてきた、研修・セミナープロデューサーの原佳弘氏による「選ばれるコンサルタント」連載。

前回のコラムは、「自分の正しい棚卸しをしよう!」という内容でした。昔出来なかったことが、できるようになった、その差をしっかり数値や外部の評価でしっかり計測していくこと、それが自分自身が獲得したスキル、提供価値となっていく、というお話を致しました。

では、その自身の棚卸しをしたものを、どんな形でブラッシュアップしていけば良いでしょうか?今回は、そんなお話です。

「あなたに頼みたい!」と言われるコンサルタントには何が必要か?

もし、あなたが、外部のコンサルタントを雇うとしたら、どんな視点で選ぶでしょうか?
この購買側からの視点、これを考えてみることが、自分をどうブラッシュアップしていけば良いか見えてくる1つの指針です。

まず、「専門性」が必要でしょう。このコンサルタントは何の専門家であり、どんな問題を解決してくれるのか?価値を提供してくれるのか?
そして「信用」も欠かせません。本当にこの方に頼んで良いのか?頼んだらトラブルにならないか、貴重な会社の相談をするに値する人なのか?
この他、価格や実施方法等の条件、コンサルティングプランなども判断材料となるでしょう。

今回のコラムでは、この2つのうち「専門性」の部分にフォーカスいたします。

自分が現場にいる時に、苦労して得た経験、スキル、ノウハウ。これらをまとめて、「どんな専門分野」で、「どんな価値を提供できるのか」を簡潔明快に伝えられるようにする。相手から見れば、「自分に頼む理由」を明確化しようというお話です。

自分が提供できることを「ドメイン」として落としこむ

一般的に、専門家と呼ばれる方を、もう一度思い浮かべてみましょう。◯◯の専門家、△△のコンサルタント、というように「一言」で語れる状態になっているかと思います。

コンサルタントの例でも、「食品業界のコンサルタント」、「FMCG(日用消費財の)マーケティング専門家」、「オフィスのコスト削減コンサルタント」などのように「業界」や「領域」「テーマ」などの括りが付いていることが多いでしょう。または、元P&G出身の~、元SONY出身の~のように、何かの分野で著名な企業名を冠した形でも語られることも少なくありません。

このように、専門家として”選ばれる”ためには「何の専門家か」を簡潔明快に伝える必要があるでしょう。もっと言えば「一言で語れる」くらいの状態を目指すべきだと考えます。”私”というコンサルタントは、誰がお客様であり、どんな価値提供をできるのか、を明示するのです。

「ドメイン」という言葉があります。

インターネットのアドレスという意味で有名ですが、経営用語の世界では、「自社の存在する領域・フィールド」のことを言います。
「誰に」「何を」「どのように」という3つの言葉で示すことが一般的です。「誰に=顧客像」「何を=商品・サービス」「どのように=提供価値」です。事業ドメインとも言われます。

コンサルタントも、この「ドメイン」をしっかり明示することが重要です。「何の専門家であるか」を理解して頂く分かりやすい手段なのです。

考えてみてください。誰向けのサービスを提供しているのか分からないコンサルタント、どんな商品・サービスを提供しているのか分からないコンサルタント、お願いしたらどんな価値を提供してくれるのか分からない、、、とても専門性があるようには、相手には映らないでしょう。

第2回まででお伝えしてきた、自分の目の前の仕事で何かを極めていく、そして自分の棚卸しをしていく。その上で、自身の提供できる価値を、この「誰に」「何を」「どのように」という切り口で、整理していくのです。

その際に、重要なことが2つあります。

1つは、「顧客視点を欠かさずに」という点です。

ドメインを作る際に、自身が今まで行ってきたこと、提供しようとしていることを考えながら行うと思います。その時、落とし穴があります。自分中心になってしまって、お客様のニーズから外れていってしまうことです。顧客(相手)起点で考えることです。

2つ目は「分かりやすさ」という点です。


いかに自分がやってきたことがオリジナリティ高く、とても専門性が高い時でも、相手に理解されなければ、伝わりません。文章が長過ぎる、回りくどい表現が多い、など留意すべき表現の問題があります。さらに、コンサルタントならではの落とし穴は、「専門用語」を振りかざしてしまう、という落とし穴です。クライアントの社長や意思決定者にも分かる言葉にしてあげる必要があります。

この「ドメイン」。顧客視点を持って、簡潔明快に、分かりやすく伝えられる、これがひとつのポイントです。

「ドメイン」と「プロフィール」で”選ばれる材料”を用意する

このドメインを固めていく際、もう1つやっておきたいことがあります。「コンサルタント・プロフィール」を作ってみることです。

ドメインを作る前に、棚卸しをしましたね。
その棚卸しの中で、「過去、こんな状態だった」「それが、これができるようになった」「こんなことを解決できるようになった」というギャップを明確化していく、ということでした。その棚卸しした材料を元に、「プロフィール」を作ってみるのです。

今回の冒頭で、「もし、あなたが選ぶ側だったら、どんな視点でコンサルタントを選びますか?」という質問をいたしました。そこでは、専門家としての「専門性」を表現する必要があります。今まで述べてきた「ドメイン」はいわば、専門家としての領域を示すものです。その領域を示すだけでなく、「プロフィール」でも専門家としての”足あと””自身のオリジナリティ”を証明するのです

どんな状態だったのか、どんな苦心を現場で取り組んできたのか、何かターニングポイントは、そこから抽出した自分オリジナルのノウハウ、スキル、思考、ポイントは何か、どんな想いでコンサルタントになったのか、そういった情報を盛り込むのです。

この「ドメイン」と「プロフィール」を固めていくことが、独立コンサルタントとして、”選ばれる材料”を用意している、ということになると考えています。

独立コンサルタントをめざすにあたり、”ドメイン”それを支える”プロフィール”を
まずは、取り組んでみてはいかがでしょうか。

【専門家】原 佳弘
Brew(株) 代表取締役  セミナー/研修プロデューサー
1973年生まれ。中小企業診断士。横浜市立大学卒業後、建設市場のシンクタンクにて経営企画を担当。その後、法人向けセミナー・企業研修を行う会社へ転職。階層別研修から営業、マーケティングなど専門領域の研修設計、セミナー企画実施を10年以上行う。
 2014年、Brew(株)設立。300人以上の講師・コンサルタントネットワークから「最適講師の提案」、顧客の課題解決につながる研修やコンサルティングを「ゼロから設計」して提供している。東洋経済オンライン、ハーバービジネスオンラインなどでも執筆。
著書には、「研修・セミナー講師が企業・研修会社から”選ばれる力”」(同文館出版)がある。
ノマドジャーナル編集部
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