B to CからC to Cへ。拡大を続ける家事代行サービスへのニーズ
仕事に育児に、なにかと忙しい女性に代わって掃除や料理などを行う家事代行業。ベアーズをはじめとする代行サービス会社がスタッフを雇って依頼主へ派遣する、B to Cのサービスとして成長してきました。
2013年には、ついにC to C(一般の人)の家事代行サービスも誕生。ANYTIMES、タスカジなどのプラットフォームが生まれたことで、誰でも簡単にサービス提供や、サービスを受けることができるようになりました。
ここで、家事代行サービスの市場規模について見てみましょう。2012年度に980億円だった市場は、経済産業省の予測(野村総合研究所が行ったアンケートによる推計)では、将来的に6.1倍の約6000億円を見込んでいるそうです。
シェアリングエコノミーの市場予測が600億円といわれているのに、家事代行サービスだけで6000億円と言われると勘定が合いませんが、ここには国家戦略会議における経済産業省の予測の中に、シェアリングエコノミー以外の部分も含まれているからだと思われます。
知ってはいるけど、使うのはちょっと・・・家事代行サービスの現状
それではなぜ、家事代行サービスの市場規模がこれほど拡大されると予測されているのでしょうか。まず背景に、女性の活躍の機会や高齢者の人口が増えることがあり、それに加えて、経済産業省が2014年7月に「家事支援サービス推進協議会」を設置したことも大きな理由として考えられます。
この協議会が設置された目的は、安価で安心な家事支援サービスを利活用できる環境整備を行うこと。認知度が70%と高いわりに、高価格やセキュリティ面での不安といった要因が妨げとなり利用度が3%にとどまっている状況の改善を目指しています。
カーシェアリングや民泊などと比べ、家事は日常的なニーズがあるため、利用頻度が上がることで、大きな市場規模となっていくことは容易に理解できます。
そこで注目を集めはじめたのが、高価格や抵抗感、不安感を下げるサービスとして誕生したCtoCプラットフォームの存在です。そのうち、いくつかをご紹介します。
ご近所さんで助け合い。地域コミュニティが復活する可能性も
昔はちょっと困ったことがあればご近所に相談して助けてもらったことが、今は難しい時代になってしまいました。それを、スマホで再現しようとしているのが、ANYTIMES(エニタイムズ)。家庭のさまざまな「お困りごと」をご近所サポーターがすぐに解決してくれるという、新しいご近所お手伝いコミュニティです。
家事はもちろんのこと、家具や家の修理・組み立てから、子どもやペットのお世話、引っ越し、美容・ファッションに関するアドバイス、レンタルといった、さまざまなカテゴリーが並んでいます。依頼をする際には、依頼フォームに希望する内容、日時を入力し送信。サポーターからの応募を待ち、その人たちのプロフィールや実績を見ながら選べる仕組みになっています。
こうしたサービスを使う時に、どうしても気になってしまうのが、お金のやりとりですよね。その点、報酬については一度、事務局に支払い、評価・完了後に振り込まれる仕組みとなっているため、トラブルも起こりにくく、安心して利用することができます。
評価システムやコミュニティなど独自の取り組みで、低価格と安心・安全を実現
タスカジが目指しているのは、「誰もが自分に寄り添ってくれる家事のパートナーと出会い、サポートしてもらえる世界」。家事(ハウスキーピング)をしたい人と、家事をお願いしたい人とをweb上でつなぐマッチングサービスです。
ハウスキーパーは「タスカジさん」と呼ばれ、コミュニティを大事にしたいという観点から、タスカジさんによるブログ投稿も行われています。サービス内容は、掃除洗濯、料理・作り置き、整理収納、チャイルドケア、ペットケアなどで、タスカジさんと直接話をしながら試していけるシステムです。
1回1500円からという低価格もさることながら、タスカジさんの評価をレビューで見ることができるのも、安心材料のひとつ。スタッフの面接や説明には1人1時間をかけるほか、依頼者にも身分証明の提出をお願いするなど、信用・信頼関係の構築に力を入れることで、着実にリピーターが増えているようです。
家事代行業のベアーズがANYTIMESと提携
2017年5月22日付のプレスリリースで、家事代行業界大手のベアーズが、シェアリングエコノミー型家事代行サービス大手のANYTIMESとの提携を発表しました。
この背景には、家事というスキルシェアをもっと便利で使いやすいものにしたいという狙いがあります。あえてプラットフォーム型にしているのは、スタッフの顔が見えるサービスにすることで、依頼しやすくするためだと考えられます。
出産後、子育てをしながら女性が活躍できる社会のために、家事代行サービスはもっと身近で使いやすいものになっていくでしょう。利用率の向上が、シェアエコノミー市場をさらに拡大させていくエンジンとなっていくのは間違いなさそうです。
取材・記事制作/ナカツカサ ミチユキ
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